“現場は生き物”
この言葉は、新人時代から今まで耳にタコができるほど上司から聞いてきた言葉です。
実際、施工管理業務に従事していると、今までと同じ現場環境で、同じ仲間と、同じ方法で・・・ということは全くなく、現場ごとに状況が違うのは当たり前で、要所となる点も異なり、人間関係の構築もリセットされます。
まるで新入社員に戻ったときのような新鮮な気持ちになる瞬間は、施工管理業務に従事する方なら味わったことがあるのではないでしょうか?
現場は生き物だからこそ、毎回ちょっとしたトラブルに直面したり、時には大きなトラブルを自ら引き起こしたりすることもあります。工事経験を重ねるほど、大なり小なり失敗も経験するものです。
私がこれまでに経験した失敗は山ほどありますが、今回は私が最近経験した現場での失敗談をご紹介します。
今回私が担当した工事は、東京都の市街地の道路工事で、架空線による使用クレーンの制限があったり、資機材がほとんど置けないような作業ヤードの狭い現場でした。一般道から作業ヤードまで車両が1台ずつしか通行できないほどです。さらに、周囲には他の現場がいくつもあり、車両の通行については自身の現場だけではなく、周囲の現場との調整も必要でした。誰もが「狭い!」と声を揃えるような現場です。
道路工事は、コンクリート製品を組み立てて構造物を構築するものでした。工期短縮を実現するためのプレキャスト化です。コンクリート製品は工場で製作された部材を現場へ搬入しますが、その際に大型トラックや大型トレーラーで搬入するのが一般的です。
その日は、1日に5台の大型トラックを現場へ入れる必要がありましたが、狭い現場ゆえに仮置きスペースがなく、トラックを1台ずつ現場へ誘導しなければなりませんでした。
狭い現場へどのように車両を誘導するのか、それに加えて周囲の現場との調整を考慮した部材の搬入計画が大きな課題となりました。
当日、朝礼とKY活動を終えて現場へ向かうと、大型トラックのドライバーから電話がありました。
「今から大型トラック5台が現場へ向かいますが、順番に変更はありませんか?」
私は事前に入手していた搬入車両一覧を確認して、特に搬入順序を変更する必要がないと判断し「はい!変更なしでそのまま1号車から現場へ入ってください」と答えました。
事前に、他の現場にも大型トラックが1台、一般道から工事用道路に入ることを伝えてあったため、大型トラックはスムーズに現場に到着。
ところが、大型トラックからコンクリート製品を荷降ろしする協力業者から「悪いけど、このトラック2台目に変えてくれない?」と連絡がありました。
当初 | 1号車→2号車→3号車→4号車→5号車 |
変更後 | 2号車→1号車→3号車→4号車→5号車 |
大型トラックの順番を変更しないことには現場作業が進められないため、今入ってきた1号車を戻して別のトラックを通行させたいことを他の現場担当者に伝えました。
他現場では生コンクリート打設日。
生コン車が往来する時間は大型トラックが通行できないという状況でしたが、幸い生コン車が往来するまでの間の短時間で2号車を通行させることができました。
その後も、他現場との調整を行いながら、夕方近くまでかかり無事5台の大型トラックを現場まで誘導し、1日の作業を事故なく終えることができました。2号車が通行して現場到着時、1号車は朝礼場所で待機していましたが、通常よりも待機させてしまったため、ドライバーにはとても叱られました。
今回の失敗は、施工順序について不都合がないかどうか、事前の確認を怠ったため生じました。
部材の搬入計画はあくまでもコンクリート製品の製造会社で決定したもので、実際に施工する協力業者には伝わっていませんでした。
よりスムーズに、安全に施工するにはどうしたらいいかということを考えている協力業者への確認は必須ですが、今回協力業者への確認を怠ったことによって、車両の誘導ミスが発生しました。
コンクリート製品を運搬する場合、大型トラックや大型トレーラーが一般的ですが、現場の作業ヤードによって搬入計画は異なります。
十分な作業ヤードが確保できる現場であれば、車両から部材を荷降ろし後、仮置きして次の車両を通行させることができます。
しかし、今回の現場のように仮置きができない現場の場合、車両から荷降ろし後、そのまま部材を組み立てて構造物を構築することになるので、より入念な作業計画が必要です。
“手元にある搬入計画通りで問題ないはず”と何も疑問に思わなかった私の知識不足に加えて、大型トラックのドライバーから連絡があったときに、変更することができたにもかかわらず、私の判断だけで車両順序を決定してしまったことは反省すべき点です。同じ現場の協力業者との打ち合わせを行った上で決定すべきだったと感じています。
また、作業内容や施工手順を理解した上で、搬入計画を行うべきであったと思っています。
施工計画が理解できていれば、車両誘導順序を変更できていた可能性が高いです。経験したことのない作業内容だからこそ、施工計画や作業手順への理解が必要だったと感じています。
私の失敗談ということで、搬入車両の誘導ミスをご紹介しました。
搬入車両の誘導は毎日行うことだと思いますが、「現場の作業ヤードが狭い」「通行時間に制限がある」など調整が必要な場合は多々あります。
土木施工管理者は、現場の状況をふまえた入念な施工計画が求められます。
今回のように、これまで実務で経験したことのない工事の場合、協力業者と打ち合わせを行うことが重要だと感じました。
若手社員が大きな声で工事車両の誘導を行っている様子を目にすることが多いですが、私も新人時代は「声が小さい!合図が小さい!」と上司や先輩に叱られながら、なんとかできるようになったのが車両誘導です。車両の誘導ミスが起こると、現場作業の時間がかかってしまったり、今回のように他現場にまで影響を及ぼしたりすることもあります。
事前の計画はもちろん、同じ現場の仲間と打ち合わせを行い、変更する必要がないかを確認することが大切です。
今回の私の失敗談が同じようなミスをしないための参考になれば幸いです。
この記事を読んでいるあなたへ ※本文内にある一部のキーワードをクリックすると、該当する製品・技術情報にアクセスできます。 |