【失敗から学ぶ】レベル読みは新人時代の最初の難関!施工延長30mですべての測量がやり直しになった事例

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「よし、これから憧れの施工管理業務に携わることができる!がんばろう!」とワクワク感と少しの不安を抱えて現場へ向かった新人時代。まだ汚れが一つもないピカピカの作業服、ヘルメット、安全靴、安全帯を身に着けただけで、なんだか一人前の施工管理技士になっているような感覚を抱いていたことを、今でも覚えています。

学生時代の部活のように汗をかく夏の暑さ、体の芯まで凍ってしまいそうな冬の寒さ。一日中、強い雨に打たれながらの作業・・・新人にとっては、どれも大変なことだと思いますが、現場に慣れながら、施工管理業務を行う上で必要となる基本的な知識やスキルを身につけることも重要です。現場に配属された新人がはじめに先輩から教えてもらうことといえば、どんな土木工事においても必要になる“測量”。特に新人時代は「レベル見て!」と先輩から言われることが大変多いのではないでしょうか?私自身、新人時代は毎回ドキドキしながら「レベル見て!」の言葉を待っていました。

そこで今回は、レベル読みを間違えてしまった新人時代の失敗談を紹介しようと思います。


新人時代、真夏の現場でのレベル読み



はじめて現場に配属になったのは、30℃を超える真夏。私は現場の雰囲気はもちろん、施工管理業務とはいったい何を行うのかまったくわからない状態で現場へ向かいました。

当日の午前中は、先輩が私につきっきりでレベルの見方をレクチャーしてくれました。レベルの設置方法や調整方法、スタッフの正しい持ち方、基準点であるベンチマークなどの用語など一通りメモに書き留めました。レクチャーが終わると、先輩からは「午後からは実践して自分のものにするように!」と言われ緊張しながら実践。

学生時代に測量実習でやったことがあったとはいえ、当時は大きな誤差を出してしまい、恥ずかしながら教授からは「実際の業務でここまで誤差を出してしまったら大変なことになるね!」と笑われたほどなので、もちろん自信はないままでした。


  1. 延長30mの道路構造物を構築するために必要となるレベルの測定
  2. 設計値と実測値との差を記録して先輩に報告

この2つがこの日の私のミッションでした。


レベル読み開始

協力業者さんにスタッフを持ってもらい、延長30m分の必要箇所にマークがしてあるため、そのマーク一つ一つのレベルを読んでいくという作業を行ないました。

はじめの3箇所は、私がレベルを読んだ後に先輩が間違っていないことを確認して次へ進んでいきました。この3箇所のレベルはすべて正しく読めていたようで、先輩は「安心して他の業務を進められる」と言って私の側を離れて行きました。私は内心、「あ、レベル読みって余裕だな。」と思いながら残りの30m分のレベルを読み進めましたが、この後ほぼすべての箇所でレベルの読み間違いをしてしまったのです。


協力業者さんからのまさかの指摘


「あれ?ここって、この高さで本当に合ってる?」高さ調整を行う協力業者さんの職長さんが私に聞いてきました。

私は先輩に教えてもらった今まで通りの方法でレベルを読んできたので、自信満々に「合っていますよ!」と答えました。しかし、どうしてもおかしいとのこと。

「こっちは設計値より低いのに、こっちは高いんだよ?でもさ、見た目は逆じゃないかな?」と協力会社の職長さんが丁寧に教えてくれましたが、レベル読み初日の私にとっては何を言っているのかさっぱりわからなかったのでフリーズしてしまいました。ひとまず、先輩が現場に戻るのを待って状況を説明。先輩がもう一度レベルを読むと、私が一人で読んだレベルはほぼすべて間違いだと判明しました。


レベルを読み間違えた原因とは?


私がレベルを読み間違えた原因は、とても初歩的なミスでした。

①スタッフの数字の読み方を理解しきれておらず、数値を間違えて読んでいた


「早く読まないと!」という焦りもあったのですが、教えてもらったとおりのスタッフの読み方ができていなかったため、5mmや10mmずれた値で読んでしまいました。私自身、まだまだ理解できていなかったようです。

②レベル器械を覗いて見つけたのは十字線ではなく、スタジア線だった


レベル器械を覗くと見える十字線。この十字線と重なるスタッフの値を読まなければならないところ、十字線の上下にあるスタジア線と重なるスタッフの値を読んでしまっていました。

先輩から間違いの原因を指摘されたときは「なんだ、そういうことか!」と思いましたが、真剣にレベルを読んでいるときは、まったく気づくことなく作業を行っていました。


同じ間違いをしないために考えた対策とは?


スタッフの読み方を間違えないためにはどうしたらいいか・・・

①数値を順番に読んでいく


綺麗にスタッフの数字を読もうとすると、桁を間違えたり読み値を間違えたりします。そのため、たとえば『1234』であれば、『いち、に、さん、よん』と順番に読んでいくことで間違いを防ぎました。

ものすごく幼稚に聞こえるかもしれませんが、素直に目に見えたとおりに数値を読んでいくというのは、早く正確にレベルを読むにはとても効果があったので、間違いを防ぐことに成功しました。

②先輩に一つずつ確認してもらう


それから、一人でいくつかレベルを読んだ後は、必ず先輩に一つずつ確認してもらって次に進むようにしました。新人の私とは違い、工事担当である先輩は多くの業務を抱えていたはずなので、チェックしてもらうことにものすごく躊躇しました。ですが、すべてやり直しの大変さは二度と味わいたくないものです。

さらに、工事を行う上でもっとも重要となる測量段階でミスをしてしまうと、その後の工程に大きな影響を及ぼしてしまいます。そのため、ミスがないように必ず先輩にチェックをしてもらいました。測量は工事においての基礎だからこそ、ミスなくスムーズに行いたいものです。


まとめ


今回は、新人時代にレベルの読み間違いをした失敗談をご紹介しました。レベルを正しく読むことは、新人にとって最初の難関かもしれません。私自身はレベルが読めるようになったと思ったら、レベルの読み値と設計値との高低差の関係がよくわからなくなってしまって混乱することも多々ありました。「レベルの読み値はこっちの方が小さいのに高いってどういうこと?!」と、理解に苦労したこともあります。レベルを正しく読めるようになるには、現場で実践を繰り返し行うことしかないと、今だからこそわかります。

新人時代の最初の難関『レベル読み』。

土木工事において基本となる知識・スキルなので、必ず体得しなくてはなりませんが、ちょっとしたミスをしたことで、気をつけることや自分なりの工夫も見つかったと思います。

今回の私の失敗談が、今まさに測量に苦戦している若手技術者の方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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この記事のライター
大学では土木工学科で都市計画を専攻。
建設会社に就職し、これまで設計・施工の2つの業務に従事しながら経験を積む。
現在は現場代理人として日本各地の現場へ赴き、施工管理業務に従事している。
趣味は美容、旅行、プロレス観戦。
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