現場を動かすには、個々の力をただ集めるだけでは到底叶えられません。
いくつもの専門チームが最高のものをつくりあげることで、一つの現場が完成します。そのチームの中にも、ほとんど経験がないような20代から、経験豊富な60代の作業員さんまで、チームのカラーがあるのも現場のおもしろいところだと感じています。
そこで今回は、数年前に協力業者さんから教わった私の知見をお伝えできればと思います。
当時、私が工事担当で携わった現場は道路構造物の構築でした。構造物の構築は、毎日クレーンを使用した作業だったため、有資格者による玉掛作業、作業時の声のかけ合い、吊り荷直下の人払いを徹底しました。また高所での作業があったため、転落・墜落など不安全行動がないように周知徹底しました。無事故・無災害、大きなトラブルもなく構造物の構築が終わると、グラウト作業を実施しました。
当時の私は、「そもそもグラウトとはなんぞや・・・」と分からないことばかりで、自分なりに製品カタログや参考文献を読みあさり、グラウト作業を行うべく現場へ。そこで私は、グラウト材が想像とは違い、1袋25kgもの重さがあったことに驚きました。実際に協力業者の職長さんの許可を得て、グラウト材1袋を運ばせてもらいましたが、当然、私がどんなに頑張って運べたとしても1袋が限界でした。そんなとき、職長さんから言われた一言に考えさせられました。それは「管理をする立場でも、こんなに運ぶのが大変なんだって知っておくのって必要だと思うよ?」という言葉です。たしかにそうだと納得しました。
例えば、クレーンがなくて人力で何度も昇降設備を行き来しなくてはならない現場だった場合、作業工程に支障が出る可能性があるからです。今回、グラウト材の品質管理については理解を深めていたものの、肝心なグラウト材そのものについては、現場ではじめて理解できたのです。
土木は机上の世界だけで判断してはいけない、自分で体感することも必要だと改めて気づかされた経験です。
構造物の施工状況写真の撮影をする際、どうしても高所に行かなくてはならない場面があります。また、発注者の現場見学会、点検なども多かったため、数年前に高所作業車の技能講習を受けました。講習を受講すれば、最大作業床高さ10m以上の高所作業車を操作することができます。講習時に実技1日で運転の仕方をマスターしたものの、いざ現場で使用しようとすると、思うように操作できない場面が多かったのです。
取得してすぐ、現場で役立つときがやってきました。高所作業における作業状況を撮影すべく、私自身が高所作業車を所定の場所まで移動させ、10m程度の高さまで上がらなくてはならないという初のミッションでした。
「技能講習でやったからできる!」と自信満々だったのですが、思うように撮影したい場所まで近づくことができず、前進したり後退したりを何度も繰り返しました。ようやく目的の場所付近まで近づけたと思いきや、高所作業車の旋回がうまくいかず、撮影したい現場状況写真とは言えませんでした。
そんな私の行動を見ていたのは、協力業者さん達でした。現場自体が広いとは言えない場所。初心者にとって、少し難易度が高いということを協力業者さんの職長さんから教えてもらいました。そして、どんな写真をどう撮影したいのかを親身になって聞いてくれたのです。
そんなとき、協力業者さんに「車の運転と同じでさ、数をこなすしかないんだから!」こう言ってもらえたのです。
それからは、高所の施工状況写真の撮影を率先して行い、数をこなしていきました。資格取得直後は、誰かが運転する高所作業車に同乗して高所の施工状況写真を撮影することがほとんどでしたが、協力業者さんのおかげで、今は安心して発注者を乗せて高所作業車を操作することができています。
資格がないのに作業を行うことは絶対にあってはなりませんが、資格があるにも関わらず使いこなせないことは大変もったいないことです。もちろん、危険が伴う作業(私の場合は玉掛け)などは無理をしないことも大切ですが、施工管理業務を行う上で必要なことに付随するものは、積極的にチャレンジして自分のものにしなくてはと協力業者さんの言葉で考えを改めるようになりました。
施工管理業務の中には、「安全」・「工程」・「品質」・「出来形」の大きな管理項目があります。しかし、実際に作業員さんが行う作業を自分自身が理解できていなければ、管理項目のいずれかに支障が出るのだと感じました。また、管理をする立場だから、「いざとなれば誰かを頼ればいい」という甘い考えを持っていたことに気づいたのも、作業員さんのおかげです。現場という大きなチームの中にはそれぞれがやるべきことがあります。できることはやる、できないことはカバーし合う。そのようなチームだからこそ、最高のものづくりができるのだと思います。
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