生コン(モルタル)数量の拾い方~工事現場で使える実践的な計算方法や考え方、工夫について

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私が実際施工した工事現場に基づき、生コンクリート(以下:生コン)の計算方法の工夫について紹介したいと思います。


生コンの計算方法



まず、生コンの計算は工事現場においては体積で算出し、その数量を生コン会社に連絡、注文すると思います。

体積は、「たて×よこ×高さ」で計算しますね。ですので、例えば、「たて10.0m よこ10.0m 高さ0.1m」の生コン数量は、「たて10.0m×よこ10.0m×高さ0.1m=10.0㎥」となります。

生コンの計算方法
打設する体積(V)=たて×よこ×高さ

では、V=10.0㎥を注文すればそれでOKか。答えは「NO!」ですね。

なぜなら、実際の型枠寸法の精度、誤差によって多少なり寸法の差異が生じるからです。同様に、基礎砕石工上の生コン打設の場合、砕石の出来形によって生コンの厚みに誤差が生じることや、砕石への食込みによって、生コン数量が大幅に変わる可能性もあります。そのあたりを注文する前段に確認し、差異や食込みを考慮した数量算出をするのが良いと思います。


生コンの注文から打設完了までの流れと注意点


 

それでは、注文から打設完了までの流れと注意点について、実際施工した工事現場の例で紹介してみようと思います。


 工事概要

雨水対策用に貯留施設の一環として施工した鉄筋コンクリート人孔で、人孔N=2.0基、高さH=約11.0mの構造物でした。

工事名
(仮称)特殊人孔設置工事
主工種
生コンV=100.0㎥(鉄筋コンクリート)、側溝工、管布設工各々1式



構造物内部(鉄筋組立加工前)

  

 1.注文

■図面を使用し、打設箇所の着色、それに伴う打設計画

H=約11.0mだったので、打設は3回~5回に分けて計画しました。打設箇所を着色して打設割を行い、打設箇所に間違いが無いようにしました。


■使用図面の1枚化

構造物図面は平面図、断面図、配筋図、詳細図1、詳細図2、詳細図3など、多くの図面があります。生コンの打設箇所を確認する際に、重複して数量を出してしまうことが懸念されたため、使用する図面を1枚に絞り、重複が無いようにしました。


■生コン数量の算出

上記2点を踏まえ、図面上で打設数量を算出しました。


実際の図面

図面に基づき、1回目打設V=20.0㎥、2回目V=15.0㎥、3回目V=10.0㎥、4回目V=5.0㎥と計画しました。


 2.型枠組立完了後の、生コン計算

■図面と現地との整合

本工事は壁厚t=400㎜だったので、型枠幅がそのように組立完了かを確認しました。その結果、規格値の範囲内だったため、打設箇所の数量を算出する事としました。


■打設箇所の数量算出

規格値の範囲内でしたが、5㎜程度の寸法誤差は確認されていました。この程度の誤差でも生コン数量が1.0㎥程度食込むことがあります。よって、型枠幅等の寸法確認はある程度の幅を実測し、その平均値を算出した方が良いと思います。


■割増率について

当打設箇所は、下部は基礎コンクリート、壁面部は型枠材及びケーシングで囲われていたため、割増率はさほど計上しなくても良いと判断しました。本来、鉄筋構造物での割増率は×1.03程度が適当と思われますが、型枠寸法確認の結果、平均値1㎜~2㎜程度の誤差があり、多少の食込みが予測されたため、割増率は×1.06としました。

ちなみに、下部基礎工が砕石の場合、更に食込みが予測されます。そのような場合、私の経験上ですが、以下のように算出する事としています。


下部基礎工が砕石の場合の計算方法
打設する体積(V)=実数量×1.06(割増率)+0.1~0.2㎥(※打設箇所の規模による)

割増率を1.06とし、更に0.1㎥加える事により、生コン数量不足対策を行っています。時には0.1㎥余らせてしまう可能性もあるのですが、生コン数量不足による品質、出来形及び施工能率の低下の事を考えた場合、やむを得ない判断です。

また、ここで付け加えたい事が一つあります。今回の打設箇所、鉄筋構造物には当然、鉄筋が打設箇所に存在します。よってみなさんの中にも生コン数量算出の際、「鉄筋体積分を控除するべきではないのか」という意見をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から言いますと、「控除しなくて良い」です。これは、はっきりした理由はないのですが、無筋構造物と同じように生コン数量算出したとして、鉄筋構造物の生コン数量と双方の差はほとんどありません。打設時のコンクリート空気量が関係しているらしいのですが、なぜなのかは、未だに不明です(笑)

よって、今回の生コン数量について、1回目の打設は「V=20.0㎥×1.06+0.2=21.4㎥」としました。


 3.生コン打設を施工しながらの、残数量の算出

■ミキサー車について
ミキサー車の台数の計算方法
ミキサー車の台数=打設する体積(V)÷生コンミキサー車の1台あたりの容量

生コンミキサー車は10tクラスだと、生コンV=約4.0㎥の容量です。打設数量V=21.4㎥でしたので、生コン会社へはミキサー車5台目まで出切り、6台目で残数量調整の連絡をしていました。

所定の打設完了の高さをマーキングし、作業メンバーにも周知徹底していました。しかし5台目の打設途中、大体ですが2.0㎥程度において、そのマーキングの高さに達する勢いになってきたのです。

急きょ、6台目はキャンセル。生コンを大量に余らせてしまうことはなかったのですが、なぜ5台目で完了となってしまったのか、今後の打設を踏まえ、検証しなければなりませんでした。


■検証結果

 

確認した結果、ミキサー車が5台目で完了となってしまった原因は、生コンミキサー容量の認識不足でした。

先ほどお伝えしたように、10tクラスは、V=約4.0㎥の容量です。しかし、今回注文した生コン会社は、10tクラス4.4㎥/台とのこと。今回初めて注文した生コン会社だったため、私の従来の認識であったV=約4.0㎥と差異が生じてしまったのです。よって、5台目打設完了時でV=4.4㎥×5台目=22.0㎥となり予定数量に達していた訳です。

<計画時>
21.4㎥(打設する体積)÷4.0㎥(想定していた生コンミキサー車の1台あたりの容量)=5.35(ミキサー車の台数)
→ミキサー車5台目+6台目で残数量の調整予定


<検証結果後①>
21.4㎥(打設する体積)÷4.4㎥(実際の生コンミキサー車の1台あたりの容量)=4.86(ミキサー車の台数)
→ミキサー車5台目打設完了時には予定数量に達する


また、生コン数量算出に間違いがないのか、再度計算確認を行いました。その結果、ミキサー車の容量の認識不足だけでなく、計算間違いがあったことも分かりました。下記図面、写真でお分かりかと思いますが、今回打設箇所にはφ2000の貯留管が設置されていました。


φ2000詳細図及び写真(赤〇箇所)

  

今回の貯留管部は当然控除するのですが、管外径で控除するところを間違って管内径で控除していたのです。管外径φ2350ですので、約0.5㎥の差異が生じてしまいました。

<検証結果後②>
20.9㎥(実際の打設する体積)÷4.4㎥(実際の生コンミキサー車の1台あたりの容量)=4.97(ミキサー車の台数)


 4.今回の生コン打設に伴う、今後の打設計画

■生コン会社へ、ミキサー車容量の再確認

今回の件で、生コン会社によってミキサー車容量の違いを確認しました。今後の打設計画を踏まえ、10tクラスだけでなく、8t及び4tクラスのミキサー車容量を確認したところです。


■生コン数量を算出する際の、数量の再確認

打設箇所は、流入管、側溝、既設構造物など、大小様々な開口部が存在しました。開口部の寸法を再度確認して数量を算出する事に努めました。


 5.失敗を踏まえた、打設時における解決策

■他打設箇所の事前準備

当工事は付帯工事として、側溝工、管きょ工が計上されており、コンクリート基礎、均しコンクリート打設箇所が存在しました。そういった箇所を事前に打設前準備を施工し、生コンが余った場合に対応できる準備をしました。

また、同様に当工事設計として計上されない箇所(既設構造物との取合せ、段差解消の間詰コンクリートなど)を事前に用意し対応しました。


今回は私が工事現場における、生コンクリートの計算方法の工夫を実際の施工を基に紹介してみました。最後にポイントをまとめます。


生コン打設時のポイント


  1. 図面は打設箇所ごとに色分けする
  2. 図面は1枚化し、生コン数量の重複の無いようにする
  3. 生コン打設前の寸法、食込みを確認し割増率を決定する
  4. 生コンミキサー車の容量を事前確認する
  5. 生コンが余った際の他打設箇所を事前準備する。

これらを確認しながら、生コン数量算出、打設及び打設時の対応等を進めることをおすすめします。

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この記事のライター
愛媛生まれ、大阪育ち。
瀬戸大橋の無かった1980年代小学生時、「おばあちゃん家まで車で帰れたらいいのにナァ」の気持ちから、橋とか道路を作りたい気持ちが芽生え、土木の学校を卒業し、現在は新潟の小さな会社で現場監督をやっています。
ちょっとした側溝工事や下水工事、新潟では重要な農業土木など、地元の皆さんに喜んでもらえるような工事を日々進めております。
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