脱ハンコが加速!建設業界への影響は?

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最近よく耳にするようになった“脱ハンコ”。

これまでは、印鑑にインクをつけて紙ベースの書類に押印するのが主流でしたが、行政での脱ハンコの取り組みが進むことで、建設業界もまた脱ハンコに向けて動き出しているようです。そこで今回は、脱ハンコのメリット・デメリット、建設業界での取り組みなどを紹介します。


“脱ハンコ”のメリット


 1.コストを削減できる

印刷した紙に押印すると、紙・インク・コピー機などの費用がかかってきてしまいます。一方、画像データとして保存した印鑑を使用すると、デジタル化した書類への押印ができるため、コスト削減に繋がります。

また近年では、「SDGs」に取り組む企業も増えてきているので、取り組みの一つとして、ペーパーレス化を推進している企業もあるのではないでしょうか。

脱ハンコによって、コスト削減+環境保護が期待できるので、メリットになりますね。


 2.承認プロセスをスピーディーに踏むことができる

課長・部長・本部長・社長といった数々の承認プロセスを踏む必要があるため、ハンコだと時間がかかってしまいます。

社内書類であればまだしも、社外との契約書類であれば、対応が遅れることで顧客の信用を失ってしまう可能性もあります。電子化した書類に押印することで、出張先や自宅からも対応が可能になるので、紙ベースの書類に比べてよりスピーディーに対応できるのではないでしょうか。


 3.「テレワーク」といった柔軟な働き方に対応ができる

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための対策として多くの企業で「テレワーク」が導入されています。「テレワークをしているのに、押印のために出社しないといけない」脱ハンコが実現すれば、そんな悩みも解決できるのではないでしょうか。


“脱ハンコ”のデメリット


 1.電子印鑑の不正利用の可能性がある

デジタル化した電子印鑑は、無料で作成できることから便利な反面、印鑑データの複製や改ざんなど、不正利用の可能性もあります。そのため、電子印鑑を導入する際はセキュリティ対策も同時に行う必要があります。


 2.電子契約システムの導入コストが発生する

電子契約システムを導入する場合、システム導入のイニシャルコストがかかってしまいますシステム導入費用・その他維持費が設備維持費・人件費を上回ってしまう場合は、導入すべきとは言えなくなってしまいます。


建設業界では大手ゼネコンを中心に“脱ハンコ”が進む


「大林組」は、昨年9月中旬までに、すべての社内書類へのハンコによる押印をなくしています。また、「清水建設」や「竹中工務店」でも、来年度までにすべての社内書類への脱ハンコを完了させる予定です。

国土交通省では、2021年1月1日以降に入札手続きを開始するすべての直轄工事・業務において、見積書や請求書への押印を廃止。さらに電子契約システムを利用することで、契約書などの押印が不要になるものもあるため、社内書類だけではなく社外書類への押印廃止も進んでいるようです。


実際、「脱ハンコ」は建設業界で進んでいるのか?


私自身は、2021年1月1日以降に契約を行った工事が今のところないため、脱ハンコがどのように進んでいるのか感じられずにいます。そこで、当社の工事担当者に聞いてみたところ、安全衛生書類などに関しては押印した紙そのものを提出するのではなく「押印した紙をスキャナーで読み取って、PDFデータとして提出している」といった回答が多かったです。

そのため、押印自体はなくなっておらず、社外の脱ハンコが進んでいるとは言い切れないことがわかりました。

これまで私が担当した工事に関して言うと、安全衛生書類を含む工事関係書類のすべてと言っていいほど押印した紙の原本を提出しています。というのも、「原本ですべてください!」「データでいただいたものは後で原本と差し替えしたいのですが・・・」「いやぁ〜普通は原本で提出するでしょ」などと言われることが大変多いのです。

そのため、書類への押印と原本の取り揃えのためだけに、テレワークをしている事務職員に出社してもらっていましたし、同じように安全衛生書類を作成する下請業者、試験成績表を依頼する資機材メーカーにも同じことを伝えなくてはいけなかったので、書類一式揃うまでに想像以上の時間がかかってしまいました。

脱ハンコが進まない一つの要因として、発注者・元請会社を含む「工事に関わる会社のデジタル化への対応の違い」や、「デジタル化に対する担当者ごとの考え方の違い」があるのではないかと感じています。

すべての会社がデジタル化に対応しているわけではないため、電子契約システムやその他システムが導入されていない場合は、どうしてもこれまでのように紙の原本での提出になってしまいます。

また、担当者ごとに考え方や仕事の進め方が違うのと同じで、書類の取りまとめ方も異なっています。そのため、発注者・元請業者の担当者によっては、書類をデータではなく、すべて原本で管理する人もいます。


まとめ


“脱ハンコ”を耳にしてから間もないですが、すでに国土交通省や大手ゼネコンでも押印の廃止を進め、素早く脱ハンコへ対応しています。

しかし、私の周りではあまり脱ハンコが浸透しているように感じていないのが現状です。工事開始前から作成しなければならない工事関係書類は非常に多く、取りまとめるだけでも大変労力がかかるものです。それも数社ではなく、数十社の会社の書類となると、書類整備だけでも多くの時間を要してしまいます。

以前に比べて労働環境は改善されつつありますが、年度末のように特に多忙な時期などは就業時間外に書類整理を始めることが多いのが現状です。

まずは、いち早く脱ハンコを進めている大手ゼネコンに倣って社内の承認書類から脱ハンコを進め、社外書類についても脱ハンコに順次対応していくべきだと感じています。私は、脱ハンコ、データでの書類管理によって、業務に費やす時間が削減でき、建設業界にある長時間労働を解決する方法の一つとなると信じています。

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この記事のライター
大学では土木工学科で都市計画を専攻。
建設会社に就職し、これまで設計・施工の2つの業務に従事しながら経験を積む。
現在は現場代理人として日本各地の現場へ赴き、施工管理業務に従事している。
趣味は美容、旅行、プロレス観戦。
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