建設現場では、無事故・無災害で一つの工事を完成させるという大きな目標があります。しかし、それ以外にも自社を含めて建設業界全体に新技術を共有することも、建設業に携わる私たちの大きな役割の一つです。
さらに、以前の3Kである「きつい」「きたない」「きけん」という建設業界のイメージを払拭し、子どもたちや学生が“建設業界で仕事がしたい”と思えるような取り組みを積極的に進めていくべきです。
まずは、子どもたちや学生に建設業界はどんな仕事をしているのかを知ってもらう必要がありますが、その方法の一つに現場見学会があります。そこで今回は、子どもたち向けに実施した現場見学会の様子と私自身が学んだことを紹介していきたいと思います。
まず、私自身がこれまで実施した現場見学会には、以下のようなものがあります。
就職活動に入る前の大学生に、建設業界の仕事を見てもらうために実施した現場見学会、親子イベントの一つとして実施した現場見学会、そして地元の小学生にものづくりの楽しさを知ってもらうために実施した現場見学会など、見学会の開催目的はさまざまです。
この中でも、地元の小学生向けの現場見学会は大変思い出深く、安全をはじめ、私が子どもたちから学んだことが多い現場見学会となりました。
そこで今回は、3つ目に挙げた「地元の小学生向けの現場見学会」の様子について紹介します。
現場見学会の当日は、地元の小学生約30人と先生方に参加してもらいました。
「何のためにどのような工事をしているのか」、「どれだけ多くの職人さんたちが働いているのか」、「安全のために絶対に守ってほしいこと」などを子どもたちに説明した後、子どもたち一人一人にヘルメットを装着してもらい、現場見学会がスタートしました。
実際に見学会が始まると、子どもたちへの説明の仕方や表現の方法などで大変苦労しました。
建設現場では、これまで見たことがない建設機械や工具がたくさんあるので、好奇心旺盛な子どもたちは次から次へと質問をしてきます。
「この機械は何に使うの?」
「どうしてこんな形をしているの?」
「どれくらい重いの?」など
純粋に質問をしてきてくれるのですが、わかりやすく答えることはものすごく難しいです。特に、建設現場では重さが「◯◯トン」、長さが「◯◯メートル」とスケールが大きいものであればあるほどイメージしにくいように感じます。(私自身もピンとこないものが多いです・・・)
そのため、構造物や建設機械などの重さや大きさは、
「クジラと同じくらい長いんだよ!」
「アフリカゾウ10頭と同じ重さだよ!」
といった形で、イラストを使いながら動物と比較して説明しました。
現場見学会までの準備期間で、今回の構想物と同じ重さや大きさの動物は何か、リサーチに時間がかかりましたが、子どもたちが理解しやすい説明ができたと感じています。
建設現場において、安全管理は何よりも重要視しなくてはいけないと思っています。さらに小さな子どもたち相手だと、普段以上に安全に気をつける必要があると感じました。
例えば、子どもたちは歩幅が小さいため、大人であれば問題なく歩けるような少しの段差も躓きの原因になってしまいます。そのため子どもたちにとって問題箇所がないか現場見学会の前に再点検しました。
また、興味津々な子どもたちは、間近で動く迫力のあるクレーンや大きなトラックなどに近づきがちです。そのため、接触事故が起きないように、カラーコーンとバリケードでいつも以上に広く囲みました。
子ども達の身になって安全対策を考えたことで、今までの安全対策を最良と思わず、“もっと安全に作業するには何ができるか”を考えるきっかけになりました。
気温、高い場所、暑さや寒さなど、現場見学会中に子どもたちが感じる不安はたくさんあると思います。
例えば、高い場所が平気な子もいれば、私と同じように苦手な子もいました。不安を感じる子どもたちは、無理に周りの子どもたちと同じ行動をさせず、一緒に鉄筋を結束する様子を観察したり、測量機器を覗いてみたり、無理のない範囲で学んでもらうようにしました。「こわくない?」と頻繁に声をかけて、『現場見学会=こわい』という思い出にならないように気遣ってあげることを意識しました。
建設業界の仕事には“たくさんの人と協力して、一つの大きなものを創り上げる”という魅力があります。その魅力を伝える場として、現場見学会はこれからも続けていくべきだと思っています。現場見学会は、私が子どもたちに教える立場でありながら、新しい視点で安全について考えるようになったり、実はそんなに理解していなかったなと反省したりもできました。
子どもたちにわかりやすい説明をすることや、ものづくりの魅力を伝えることは難しいですが、私の経験が今後同じイベントを開催する方々の参考になれば幸いです。
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