生コンクリートを打設して構造物を製作する工事では、品質を保証するために品質試験をしなければなりません。
生コンを受け入れる品質試験は、
の4つです。
検査には、専用器具が必要になることから生コンを発注したコンクリート工場の実験部に依頼して品質試験を行ってもらうことになるでしょう。実験器具も高価で、取り扱いも素人には難しいので、依頼するほうが無難ですね。また、生コンの品質試験時には、4つの検査のほかに圧縮強度試験のためのテストピースも取っていきます。品質検査の4つと圧縮強度試験は、コンクリートの品質管理に欠かせないものでしょう。
品質試験の頻度は、一日の打設量が150m3を超える場合は午前1回と午後1回の2回行い、150m3以下の場合は1回のみ行います。また、基礎コンクリートや石積みなどの裏込めコンクリートなどは規模に応じて1~3回程度行えばよいでしょう。
一日の打設量 | 品質試験の頻度 |
150 m3を超える場合 | 午前・午後1回ずつ |
150 m3以下の場合 | 1回 |
打設箇所によって使用する生コンの種類が違う場合は、それぞれ品質試験をしなくてはいけません。試験項目や頻度は各自治体や発注者によって異なるので、必ず確認して品質試験を計画しましょう。
スランプ検査は、生コンのワーカビリティを評価する検査です。スランプコーンと呼ばれる実験器具を準備します。設置したスランプコーンの中に生コンクリートを上から詰めていきます。その際、スランプ突き棒と呼ばれる金属の棒で撹拌しながらいっぱいになるまで詰めます。上まで詰めたら、ゆっくりとスランプコーンを引き抜きます。初めは円筒状の形を保っていますが、しばらくたつと崩れてきます。スランプコーンの高さは30cmなので、崩れて低くなった分(スランプ値)を測定します。
土木で使用が多いC-1やC-4のスランプ量は、5cmから8cmとかなり硬めになっています。スランプ量の少ないコンクリートを使うと、型枠内に生コンが行き渡らないことになるので、建築ではスランプ量15cmなど、かなり柔らかい生コンクリートが使われることが多いです。
生コンの種類によってスランプ量の許容範囲が決められています。スランプ検査でスランプ量がその範囲内に収まっていれば、まったく問題ありません。
生コンクリートを打設するには、スランプ量が大きい生コンの方が、ワーカビリティ(作業性)が良いのです。しかし、ワーカビリティを上げるために安易に水を加えてはいけません。なぜなら、出来上がったコンクリートの強度が下がってしまうためです。
固くて作業性が悪いからと言って、荷下ろし後の生コンに加水する行為は、技術者としてあるまじき行為です。
上司や作業員さんからは過去にそのようなこともあったと聞いたことがあるので
などを徹底することで、生コンの品質を管理することも我々の仕事です。
空気量測定は、空気が適正な量だけ入っているかを測る検査です。空気量測定用の密閉できる容器に生コンをいっぱいに詰めます。その後、取り付け金具を締め込んで密閉し、容器に付いているポンプで加圧し、蓋に取り付けられているエアメーターを読み空気量を測定します。普通コンクリートと舗装コンクリートで4.5±1.5%、軽量気泡コンクリ一トで5.0±1.5%の空気量と規定されています。
生コンクリート温度は、スランプ検査でできたコーン上の生コンに棒温度計を差し込み測定します。コンクリート温度が、35℃以下なら問題ありませんが、35℃を超える場合は暑中コンクリートの対策を行わなければいけません。搬入される生コンクリートの温度が高いので、コンクリート工場で骨材を冷やす、搬送中のアジテーター車にカバーをするなどして生コンを冷やす措置が必要です。
また、生コンの混和剤に遅延型の高性能AE剤を使う必要もあるので、外気温が高くなる時期に打設する予定がある場合は、事前に工場と打ち合わせをする必要があります。
生コンクリート中の塩化物イオン濃度が、濃いと鉄筋の錆の発生が多くなります。生コンクリートに使用する骨材の砂は、塩分の多い海砂は使用されていません。JIS規格の生コンクリート工場から出荷された生コンは、規格に合うよう製造されています。塩化物イオン濃度測定試験は、念のために確認する試験だと思ってください。
カンタブと呼ばれる試験資料を差し込み、塩分濃度を測定します。JIS A 5308では、塩化物イオン量の限度を0.30kg/m3としています。ほとんどの場合、0.30kg/m3以下の数値で1/10以下の数値0.03kg/m3が出ることが多いです。
測定頻度は、生コンクリートの種類ごとに1回ずつでよいでしょう。
生コンクリートの品質管理試験は、受入れ検査とも呼ばれています。検査の許容値から出てしまうことは、ほとんどないと思います。しかし、検査に合格しない生コンクリートは受入れ拒否しなければなりません。それは、品質が保たれた構造物を製造できない可能性があるためです。いかなる場合でも、そのようなことはあってはなりません。施工責任者として、生コンクリートの品質管理試験には立ち会って目視確認するようにしなければいけません。
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