河川氾濫の内訳および対策

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内水氾濫と外水氾濫



河川の氾濫には、都市に降った雨が河川に排出できず発生する「内水氾濫」と河川が溢れて発生する「外水氾濫」(洪水氾濫)の2種類があります。今回は内水氾濫のハザードマップの重要性について意見を述べたいと思います。


内水氾濫の危険度を表すハザードマップ




想定外の豪雨が各地を襲っています。近年、頻発しているのが「内水氾濫」です。

内水氾濫は、下水道施設の排水能力を超える大雨が降り、市街地において許容量を超えた水が氾濫する現象のことです。標高の低い場所で起きやすく、コンクリート舗装などが進む都市部では雨水が地面に浸透しにくいために、発生しやすい状況にあります。

ハザードマップとは、過去の災害履歴に基づいて災害の発生状況や範囲、安全な避難場所などを記載した地図のことです。しかし、内水氾濫を考慮して作成されたハザードマップは全国40%程度の市町村でしか普及されていないのが実情です。

ハザードマップには、内水氾濫のほかにも洪水や津波、土砂災害などに備えたものがあります。多くの人は津波や土砂災害を災害として認識していますが、内水氾濫を災害と認識している人は少ない傾向にあります。

参考:横浜市鶴見区内水ハザードマップ


流出解析の必要性



『流出解析』という言葉はあまり聞きなれない言葉ですが、河川や水路のある地点の流量を予測することを言います。また、その予測のためのモデルは『流出解析モデル』と呼ばれています。

システム上で降雨量を設定すると対象エリアの降雨量に基づいて、雨が降ります。その雨が降った場合の対象エリアの水路、河川に収集される水量および設定した水路、河川形状でどの程度の水が流れるかを予測します。この予測モデルを土木業界では『流出解析』と呼んでいます。

内水氾濫の浸水被害が発生した地域では、問題点の抽出と解決方法の模索をするために対象地域の流出解析をすることが一般的です。

ちなみに、地域の水路は下水道施設であることが多く、合流式下水道を採用している場合は汚水と共に処理場へ流入していて、分流式下水道の場合は河川へ排水しています。

合流式が水道を採用しているエリアは都市部に多い傾向があり、東京都23区の8割で合流式下水道施設が普及しています。


流出解析について



流出解析とは対照地域の地形等をGIS(地理情報システム)でデータ化して、その地形データに水路等の3次元ルートおよび水路断面データを入力することで解析する方法です。

その後、計画降雨および浸水被害発生時の降雨データを流出解析モデルにインプットして実情を再現します。

この際には現地調査をして、浸水発生状況および場所を確認し、その情報と解析モデルの結果を近似化させ、係数等を設定します。

参考:流出解析モデルに関する研究(2005年度 下水道新技術研究所年報[1/2巻])


対策施設について



シミュレーション時の計画降雨および浸水時の降雨量を比較して、計画降雨よりも小さな降雨で浸水している場合は標準的な管路、水路等の排水施設および河川への排水ポンプ、山地部の場合は上流域の山間部に調整池を計画し、それらの状況を流出解析モデルで効果を確認します。

反対に計画降雨よりも浸水発生時の降雨が大きかった場合、下水道事業における計画降雨の見直しが必要となります。

計画の見直しと共に水路等が既存の計画降雨で建設されている場合、見直し後の計画降雨、見直し前の計画降雨の差を地下貯留槽等で貯留することで、現況施設を有効に利用することができます。


今後の対策



近年、短期的な集中豪雨が増えており、水害の発生が増えていますが、施設の普及には費用が掛かかります。そのため、短期的に災害発生時に人への被害を抑えるために内水氾濫ハザードマップの作成が急務であると考えます。

現況の問題地域を隠すのではなく示すことで、問題が発生しそうな状況になる前に、行政が事前対策をとる体制作りが重要です。

降雨が危険な状況になると想定される際に、降雨データを事前に予測する体制を築き、事前対策を取る事を習慣化しなければなりません。そのためには、内水氾濫に限った事ではありませんが、「降雨量予測チーム」や「想定外の降雨時に浸水被害が発生する地域の住居者を避難指示するチーム」を結成する必要があるのではないでしょうか。


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この記事のライター
大学で衛生工学研究室に所属しており、卒業後に建設コンサルタント会社に就職し、20年間下水道の設計、計画をしています。
新規計画は減ってきていますが、経営戦略や官民連携、広域化共同化、PFI/PPPなど多くやるべき事があるため、面白いですね。ここではそれらの記事を掲載したいと思います。
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