下水道事業は汚水・汚泥処理施設の広域化・共同化を行うべき時代が来ました。
都道府県管理の流域下水道に汚水処理区を統合して、単独公共下水道施設、集落排水施設を廃止します。これにより統合する処理区の処理施設を配することで、処理施設の改築更新費用および維持管理に要する人件費を削減できます。
下水道処理区の統廃合を前提として、都道府県がICTを活用した集中管理を検討するのは妥当であると考えます。今回は下水道処理区を広域化(統廃合)させる有効性について記述します。
流域下水道は都道府県が管理し、単独公共下水道は単独の市町村が管理しています。しかし、近年、人口減少に伴う使用料減収が大きな要因となり、職員数減少による執行体制の脆弱化や既設の管路施設(管きょ、マンホールポンプ(以下MP))およびその他施設(処理場、ポンプ場)の数多の更新期の到来などが副要因となり、広域化・共同化が必要な状況が発生しています。
市町村をまたぎ、広域的な観点からの調整が重要となることから、都道府県が主体となり、市町村と連携し、広域化・共同化計画を策定することとなりました。
下水道区域の広域化だけでなく、集落排水区域、およびし尿処理区域を連携させ、統廃合を検討します。
農業集落排水は対象区域の管きょと下水道管きょを接続させて統合させます。しかし、し尿処理区域のし尿を下水道で受け入れる場合、受入槽が必要であり、し尿処理場で対応することで、下水管きょで受け入れ可能となります。
表に示す水質が下水道で受け入れることができる水質です。
し尿処理場等に受入槽(希釈槽)を設置し、し尿等を下水道排除基準に適合させるためには、20~30 倍の希釈水(地下水を用いることが多い。)が必要となります。し尿等を下水道管きょへ投入する場合の下水道側の条件としては、自治体が下水道条例に定める排除基準を順守する必要があり、表に示すような項目と数値になっています。
下水道処理場の管理はICTを活用して、遠隔地より複数の処理場を集中監視することで適切な人員配置が可能となります。これは初期の対応であり、中長期では可能なブロックにおいて複数の単独公共下水道処理区、集落排水区域などを流域下水道処理区等(単独公共下水道の大規模処理区)に統廃合(管きょを接続させて、処理区を統合する)後、終末処理場で一括して汚水を処理します。
処理場の処理区域を広域化(統廃合)して、民間企業への施設管理を委託する処理場数を減少させればコストを抑えることができます。
出典元:広域化・共同化の推進 国土交通省 水管理・国土保全局(令和元年9月)
下水道では多くの施設(管きょ、MP、ポンプ場、処理場)を管理しています。
管きょ管理には管きょとポンプ場の巡回点検、清掃や住民からの苦情対応等、幅広い対応が求められるため、多くの市町村が外部委託しています。MPの日常点検では機械電気設備の専門性が必要となるため、外部委託しており、専門職不足、緊急時対応等における迅速性、施設老朽化が問題とされています。管きょ調査も専門性が必要で、多くの市町村が外部委託しており、職員不足、事務作業の増大、予算不足に陥っています。
処理場管理については包括委託もしくは個別委託しており、専門職不足、技術継承が課題となっています。処理場の維持管理(事務作業)業務は共同化によって、民間企業へ共同発注することによりコストが減少し、民間企業の業務効率化および最新の情報管理が可能となります。
出典元:下水道事業における広域化・共同化の事例集 国土交通省 水管理・国土保全局(令和4年4月)
まず、将来の人口減少を踏まえて、以下のコストの算出が必要です。
収支計算で支出が多い場合、事業費を減少させるために、ストックマネジメント(SM)計画を策定し改築更新費用の減少、ICT活用による集中管理で維持管理費用の減少、広域化により施設管理費の減少の3点を実行することが重要です。
維持管理費とは施設の定常管理をする人件費のことで、ICTを活用し集中監理すれば減少可能であり、広域化が確定、実施後は統合により運転しない施設の維持管理費と施設管理費がゼロとなり、メリットとなります。
下水道事業を安定的に経営していくには様々な手法が必要となりますが、収支を黒字化させることが一番の目標となります。都市部であれば、下水道使用料の収入を安定させることもできますが、そうでない市町村の場合、市町村単位での対策では収入を安定させることは難しいでしょう。
今回記載した「広域化を活用した処理場管理」の目標については、初期はICTを活用して複数処理施設を共同監視すれば、維持管理コストや処理場管理人件費を低減できる他、中枢処理場に水質試験室を設け、共同化によって省スペース化も図れます。
処理場の管理にあたり、複数の処理場を一括で広域化することは困難ですので、対象区域の複数の処理場でICTを活用して、共同監視を実施します。そして、次のステップとして中枢処理場以外の処理場を順番に広域化していき、接続管路も並行して建設します。し尿処理場区域を下水道と連携することで、既定の施設を活用して広域化を図れます。また、し尿処理場では受入貯留および脱水処理によって希釈水倍率を下げ、下水道へ放流することが可能になります。
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