汚泥処理施設を集約化することの有効性

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汚泥処理施設の老朽化による施設更新が増加する中で、施設の集約化は持続的な事業運営を行うために有効な手法の一つとされています。

汚泥処理を単独の処理地域ではなく、都道府県単位の広いエリアを対象として、集約処理を検討する傾向があります。汚泥処理施設を共同で使用するためには、都道府県と市町村および近接する市町村同士のコミュニケーションが重要な要素となっており、コストの問題をクリアすれば集約化できることが注目されています。

今回は、汚泥処理施設を集約化することの有効性について記載します。


下水汚泥の集約処理について



 ①下水汚泥のエネルギーポテンシャル

下水処理から発生する下水汚泥は燃料・肥料として高いポテンシャルを有しており、バイオガスや固形燃料としてエネルギー利用が可能であり、リンを含む肥料を製造し、農業等において有効活用が可能です。

  • 下水汚泥の持つエネルギーを全量発電に用いた場合、年間約600億円分の電力(約110万世帯分)に相当
  • 下水処理場に流入するリン全量を農業利用すれば、海外から輸入するリンの年間約120億円分(約10%)に相当

出典元:「バイオマス産業社会ネットワーク第176回研究会(平成30年7月4日)」資料 国土交通省 水管理・国土保全局

 ②下水汚泥の広域利活用構想

下水汚泥処理施設の共同化を計画する場合、都道府県構想を構成する「整備・運営管理手法を定めた整備計画」の一部として、都道府県が下水汚泥広域利活用構想を策定します。

整備計画の中で都道府県構想の汚泥処理に関する部分を計画して、中長期に渡る都道府県内の広域的な汚泥利活用の基本方針、汚泥処理区域、年次スケジュール等を取りまとめます。

 ③広域化・共同化計画策定の進め方

「広域化・共同化計画」の検討にあたっては、都道府県の全市町村が検討の枠組みに参加し、検討を進めていくことが必要です。

広域化・共同化の実施には、管内市町村の合意を得て、初めて集約処理することが可能になりますが、関係市町村の合意に時間を要するため、早期に検討を着手しなければなりません。合意を得るために時間を要してでも、理解を求めていくことが重要です。

汚泥の集約処理に参加することに合意した市町村は、対象処理区の下水道事業計画書に下水汚泥広域利活用計画を記載し、事業計画を策定していきます。

出典元:「下水汚泥広域利活用検討マニュアル(平成31年3月)」 国土交通省 水管理・国土保全局


 ④汚泥集約処理施設のブロック割

都道府県で汚泥を集約処理する場合、都道府県構想で数箇所の大規模処理施設を汚泥の集約処理施設として計画します。都道府県の大きさ、交通網により箇所数は異なりますが、主に5つの要因(※1)でブロック割しており、各ブロック単位で検討することが有効です。

集約するエリアは3箇所から5箇所であるケースが多く、集約処理施設は都道府県が管理する流域下水道の処理施設に集約しているケースが多く見受けられます。

(※1)地理的要因、歴史的文化圏・社会経済圏(連携中枢拠点都市圏等の広域連携の枠組み)、流域、都道府県の行政事務所管轄範囲

 ⑤集約処理のコスト比較

集約処理すると汚泥処理施設を運営する必要がなくなり、市町村はハード面において建設、改築修繕に関するコストを削減でき、ソフト面においては維持管理に関するコストを削減できます。

集約処理する場合、都道府県は汚泥処理施設を建設、改築修繕、維持管理するコストは掛かりますが、構想において汚泥処理施設の規模が増大化するコストとの比較検討が必要になります。

市町村が集約処理に合意する条件としてコストの問題が大きく、汚泥を集約処理する施設と排出する処理施設の位置が運送コストを決める要因となっています。


集約処理を受け入れる自治体の決定要因について



 ①コストメリットの概要

汚泥処理施設では、濃縮→脱水→焼却→埋立→堆肥化→メタン発酵処理の工程が実施されています。

処理施設が小規模の場合、脱水汚泥を処理するコスト(円/t)よりも集約処理する際の支払コスト(円/t)が安価であれば、自治体は集約処理に応じるはずです。

 ②コストメリットの詳細

建設、改築修繕、維持管理に必要なコスト(支出コスト①)と集約処理する場合の汚泥を処理するコスト+汚泥を各下水道処理施設から運搬するコスト(支出コスト②)の比較となります。

この比較が集約処理する際の決定要因となっており、集約する処理施設の近隣の自治体は運搬コストが安価となるため、集約処理を受け入れるケースが多く見受けられます。


まとめ



我が国の下水道事業は厳しい財政状況の下、維持管理の重要度の増大、下水道資源・エネルギーの利用促進への対応が大きな課題となっています。

既設下水道施設の現状を把握し、適切な維持管理および改築更新が不可欠であり、効率的にそれらを実施しながらコストを縮減する必要があります。

下水汚泥を集約処理する目的は、後に記載する資源化等の利活用にあります。集約化するためには、都道府県が下水汚泥広域利活用構想を策定し、市町村に構想を合意してもらい事業化していかなければなりません。下水汚泥広域利活用構想を事業化する意義について管内市町村から理解を得られることによって、現在よりもエネルギー・資源の利活用のメリットおよび必要コストが少額になることを示します。

下水汚泥は焼却し、建設資材として利用するのではなく、以下のように多様な資源・エネルギーとして利活用できます。

  • 下水汚泥をバイオガス化してバイオガス供給事業を推進 → ガス事業者等
  • バイオガス発電で電気供給事業を推進 → 電力供給会社に売電
  • リンを回収しコンポスト化してリン等資源供給事業を推進 → 肥料会社等
  • 固形燃料化で固形燃料供給事業を推進 → 発電所等

出典元:「バイオマス産業社会ネットワーク第176回研究会(平成30年7月4日)」資料 国土交通省 水管理・国土保全局


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この記事のライター
大学で衛生工学研究室に所属しており、卒業後に建設コンサルタント会社に就職し、20年間下水道の設計、計画をしています。
新規計画は減ってきていますが、経営戦略や官民連携、広域化共同化、PFI/PPPなど多くやるべき事があるため、面白いですね。ここではそれらの記事を掲載したいと思います。
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