下水道事業を行う自治体は事業運営にあたって、当初計画と現状において、社会情勢の変化に直面しており、経営状況がいいとは言い切れない状況と考えます。
その理由はいくつかあり、下水道事業を効率的に継続していくには、必要な事項とそのためにしなければならない事があります。官庁だけでできない場合は民間事業者の経営ノウハウを活用して、事業全体のリスク管理を効率的に行う事が必要です。
今回は下水道事業を運営する上での問題点と必要な対策について大きな方針を記載します。
下水道職員の顕著な減少により、下水道事業執行体制の脆弱化が進行しています。全国の下水道部署職員数は、ピーク時(H9年度)に47,000人でしたが、H9年度には6割に減少しました。20年前、2人で担当していた業務を、現在は1人で担当している状況です。
下水道職員の業務では、技術系に限っても、土木、機械、電気、水質検査などさまざまなスキルが求められ、少人数でこれに当たることは困難です。特に維持管理に係る技術系職員については、比較的人員の豊富な政令指定都市においても、H22年度時点で51歳以上の職員が50%を占める等、高齢化が進んでいます。
出典元:下水道事業の現状と課題(国土交通省 水管理・国土保全局 下水道部)
下水道の普及が進み、全国で管路延長は約47万km敷設されています。一方で、施設の老朽化も進行しており、布設後50年を経過する古い管路が今後加速度的に増加する見通しです。下水道施設には、下水道管やマンホールなどの管路施設、下水を処理するための処理場施設、送水を補助するポンプ場施設の三つがあります。
今後、機械・電気設備の更新が始まる下水道処理場やポンプ場も増加していく見通しです。
前述のとおり下水道職員が減少する中、この一斉更新の波に下水道業界が耐えられる保証はありません。業務負荷を平準化するためにも、計画的な施設の改築・更新が望まれます。
下水道整備の進展に伴い、現時点では、有収水量・水洗化人口ともに微増傾向ですが、節水意識の高まりや節水機器の普及を背景に、水洗化人口1人当たりの有収水量は減少傾向となっています。
地方公共団体に多い小規模団体では、今後人口減少率が高くなることも見込まれます。また、使用料への依存度が高い自治体では、人口減少に伴う水量減少が発生し、使用料収入の減収が懸念されます。
下水道職員の大量退職の時代を迎えて、職員の減少は必然であり、技術継承、人員の育成が重要な課題となっています。
これらの問題に対し、ICTやAI技術の活用による維持管理の効率化を図り、OBやベテラン職員と若手職員との交流促進・技術伝承を促し、近隣府県や他部局との交流による人材育成を図る必要があります。
交流の場を積極的に設けるなど、多様性の強みを活かしつつ、積極的に人材育成の「機会」を作り出し、世代間のコミュニケーションを促進します。下水道担当職員の技術力を「育つ」「育てる」取り組みを促進し、経験や知見を集約・資料化し次の世代へ確実に継承することが必要となります。
下水道施設の老朽化が進むことは明確であり、維持管理を起点としたマネジメントサイクルの確立を図り、老朽化が進む下水道施設の老朽化対策、維持更新の計画的な実施に繋がるような施策を講じていくことが重要です。
そのためには、地方公共団体独自の維持管理・改築に係る方針(SM実施方針)を策定し、それに準じて、定期的な点検、調査、清掃を行う必要があります。
調査等の際に改築・更新箇所を発見し、優先順位をつけながら施設の改築を進めることで、事業費(年価)の更なる削減を図ることが重要です。
出典元:下水道事業についての現状と課題(平成30年2月 総務省自治財政局準公営企業室)
下水道事業を戦略的に事業経営する場合、黒字化する必要があります。そのためには既設下水道施設の現状を把握する必要があり、適切な維持管理及び改築更新、計画に準じて定期的な点検、調査、清掃を行うことで、それらに必要なコストを平準化できます。
また、下水道使用料の動向を人口規模別で見ると、政令指定都市では微減傾向にあり、それ以外の都市では規模が小さい都市ほど増加傾向が大きくなっています。
将来的には下水道使用料単価(円/㎥)を上昇させることも改善の一手となり、住民に理解を求めていかなければなりません。
下水道事業を戦略的に経営する場合、黒字化が必須であり、既設下水道施設の現状を把握し、適切な維持管理及び改築更新が不可欠です。それらを実践するためにストックマネジメント計画の策定が必要です。また、SM計画に準じて定期的な点検、調査、清掃を行うことでそれらに必要なコストを平準化することができます。
しかし、支出を平準化しても、収入を増やす方策を練る必要があります。方策としては下水道普及率、下水道使用料単価の上昇の2点が考えられます。前者は効率よく普及させることで解決できますが、後者は住民の理解が必要です。上下水道はガス、電気と同様に当然のものであるという意識が住民にはあります。
日本では当たり前のように下水道を住民へ提供されていますが、世界的に見ると下水道が普及している国は少ないという事を理解し、下水道使用料単価を上昇させるのも、改善の一手ではないでしょうか。そのような改善対策を講じないと、下水道事業費が下水道使用料で賄えなくなり、一般会計繰入金を補填する必要が出ますが、下水道料金を多く払うべきではない人の税金より補填されている可能性があります。
下水道事業を戦略的に行うためには、ヒト・モノ・カネの問題があります。これらについての解決策は細かく論じる必要がありますが、今回の記事ではそれぞれの概略を示しました。
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