コンクリートのひび割れ対策と処置

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前回「コンクリートのひび割れ原因とひび割れの種類について」でひび割れの発生原因と種類についてご紹介しました。


施工にどんなに注意を払っても、起きてしまうのがコンクリートのひび割れです。一口にひび割れと言っても補修できるひび割れと補修できないひび割れがあります。今回は、コンクリートのひび割れの事前対策と補修方法を紹介します。


ひび割れの事前対策



 参考サイト:太平洋マテリアル株式会社「ひび割れ対策における提案」


 ひび割れ低減剤を塗布する

ひび割れの発生が懸念される開口部廻り、隅角部および天端等の部分に、予めひび割れ低減剤(ex.「太平洋ハイパーネット60」)を配筋部に配置、または伏せ込むことによって、ひび割れの発生を減らします。

私は趣味でラジコン(車)をやっていますが、ラジコンのボディ補強材と同じです。ラジコンのボディ裏に張り付けシューグ(ボンド)を塗り、硬化させて強度を上げます。原理はたぶん同じでしょう。


 高性能塗布型収縮低減剤を塗布する

硬化したコンクリート表面に高性能塗布型収縮低減剤(ex.「クラックセイバー」)を塗布すると、コンクリート表層の毛細管間隙に浸透していきます。水分の逸散によって発生する毛細管張力を減少させ、乾燥収縮を低減します。

気温が低い冬季に生コン打設をおこなう場合は、防凍材をあらかじめ生コンに入れてもらいましょう。養生しなくても寒さによるひび割れは起こりません。万が一、養生に失敗しても寒さによるひび割れは防げるので是非とも使うべきです。

使用の際は、事前に発注者と協議する必要があるので、計画的に実施しましょう。


ひび割れの補修方法



ひび割れは、大きく次の3つに分けられます。3つそれぞれの補修方法についてお伝えします。

 ①0.3mm未満のひび割れ(ヘアークラック)

 ②0.3mm以上~1.0mm未満のひび割れ

 ③1.0mmを超えるひび割れ


 ①0.3mm未満のひび割れ(ヘアークラック)

一般的に0.3mm未満のひび割れ(ヘアークラック)は、補修を行うことはありません。表面にフィラーやセメントペーストのすり込み工法で補修することも可能です。しかし、ヘアークラックでも進行がありそうなものや、漏水が確認される場合は、いずれ大きくなる可能性があるため経過観察が必要です。


 ②0.3mm以上~1.0mm未満のひび割れ

ひび割れの幅が0.3mm以上~1.0mm未満の補修には、注入工法です。ひび割れ部分へエポキシ樹脂やセメント系の注入剤を注入することで補修します。

    1.清掃

       下地のほこりやゴミを丁寧に掃除。

    2.台座の取り付け

       ひび割れの幅や壁の厚さなどを考え、複数個所へ設置。

    3.シール材の塗布

       台座の周囲とひび割れ部にシール材を塗布。(注入剤の漏れ止め)

    4.エポキシ樹脂の注入

       ゆっくりと圧力を加えながら所定の時間をかけて注入剤(エポキシ樹脂)などを注入。

       完了したら1日以上硬化するまで養生しましょう。


 ③1.0mmを超えるひび割れ

ひび割れの幅が1.0mmを超える場合の補修工法には、充填工法です。ひび割れ部分に沿ってディスクグラインダーを使用してU字またはV字型にカットし、カットした部分にシーリング材やエポキシ樹脂などの補修材を充填します。

   1.カッティング

      ディスクグラインダーで、ひび割れに沿ってU字型にカット。

   2.プライマー塗布

      カットした部分をきれいに掃除し、プライマーを塗布。

   3.補修材の充填

      プライマーの乾燥後、補修材(シーリング材やエポキシ樹脂)を充填。

      充填後は、ポリマーセメントモルタルやフィラーで表面を補修します。


まとめ



コンクリートのひび割れは、どれだけ対策をしても発生を完全に抑えることは難しいです。

したがって、技術者としては有害であるかどうか、許容できるひび割れかどうか見極めることが重要となります。許容できないひび割れについては、現場の環境を含めた、コンクリート構造物のひび割れ発生要因について調査して、適切な対策をとりましょう。

発見したらすぐに、ひび割れ補修をしなければさらに劣化が進行し、やがて鉄筋が錆びてしまい爆裂を起こします。ひび割れの補修は、早めに対処しましょう。


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この記事のライター
元は測量士で、今は土木の現場監督。北海道南西沖地震をきっかけに施工の現場管理へ転向。現在は、市民生活に欠かせないインフラの下水道工事を主に行っています。
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