『サガシバ』編集部 [著/編] / 伊藤 昌明(株式会社オリエンタルコンサルタンツ)/株式会社長大 青柳 竜二 [監修]
先日の記事から続き、建コン協会『若手の会』の変遷を特集!
今回はこれまで代表を務めていた、株式会社オリエンタルコンサルタンツの伊藤 昌明 氏と今期より新代表になった株式会社長大の青柳 竜二 氏との対談により、知られざる裏話をお伺いしました。
【取材協力(敬称略)】
・株式会社オリエンタルコンサルタンツ 伊藤 昌明
・株式会社長大 青柳 竜二
――青柳さんの印象についてお伺いできますでしょうか。
伊藤氏:設立当時の2015年に会って、当時、青柳さんは最年少だったよね。
青柳氏:そうですね。入社して3~4年で色々と闇を抱えていました(笑)。
伊藤氏:最初の飲み会で、青柳さんが「社員の中で残業時間が一番多いんです」って言っていたね。
青柳氏:伊藤さんに「言っちゃ駄目」って言ったのに、気付いたらみんなに伝わっていて……。
一同:(笑)
伊藤氏:青柳さんの『若手の会』の活動での印象は、会の中でも一番若い立場ということもあると思いますが、「あれやろう。これやろう」みたいないろんなアイデアを出すようなタイプではなかった印象でしたね。ただ、会議やイベントには毎回出席していて、周りのメンバーから刺激を受けたり、会の雰囲気を満喫している印象はありました。
――青柳さんから見て、伊藤さんの印象はどういったものでしょうか。
青柳氏:伊藤さんの第一印象は「グイグイ来る」感じでしたね。最初のWG活動で、伊藤さんと一緒の班になってワークに取り組んだときも、私は他のメンバーに圧倒されて一歩引いた感じでしたが、伊藤さんからズバリ「リーダーやってよ」と指名されたのは今でも覚えています(笑)。ただ、抱えている悩みやネガティブなことって、なかなか初めからは言えないと思いますが、伊藤さんはフラットな感じなので、そういった話を相手から引き出すのがすごく上手い。しかも、伊藤さんは熱い話をよくしていたので聞いていてポジティブになった覚えがあります。
伊藤さん以外にも『若手の会』には熱い人たちが集まっていました。「別の会社の人たち」って感じが全くしなかった。『若手の会』の中には、技術職以外にマーケティングとか経営側に詳しい人もいて、「学び」が多く、「行かなかったら損する」みたいな感覚で参加してましたね。
伊藤氏:当時から『若手の会』には、同じ会社ではないものの、同じ業界としての仲間意識や結束感があったと思います。会社の中で悶々としていた人たちが思いを共有できる場を作ったことで、結果的に個人個人の思いが上手くつながって大きなパワーになっていったんじゃないかな。
――伊藤さんについて、そのほかの印象はありますか。
青柳氏:何か相談するたびにアドバイスをくれたり、肯定してくれたりと、自信をくれる人だと感じますね。代表になることに関してもそうでした。伊藤さんが言うのなら、私にもやれるのかな、と少しずつ思えてきましたね。なので、伊藤さんが私にしてくれたように私自身も今後、新規メンバーをフォローしていきたい気持ちはすごく持っています。
伊藤氏:『若手の会』が出来て3、4ヶ月後の初期の段階に、「交流会」の名目で全国の支部を回ったことですね。メンバーの結束力が一気に高まったきっかけになりました。一泊二日で支部のメンバーや地域の建設コンサルタント企業の方たちと一緒に、業界の将来を考えるワークショップをしました。そしてその後、交流した面々で懇親会をして、活動への想いや普段の問題意識を、夜な夜な語り尽くしました。そうすると、想いが共通化されて、「この人も同じことを思っていたんだ」という共感みたいなものが徐々に生まれてくるんですよね。初期メンバーにはそうした経験が皆の中にあるからこそ、安心して自分の思いを語り、やりたいことを提案できるという関係ができたと思っています。
青柳氏:やっぱりあの経験が大きかったですよね。その件がきっかけで、会の活動に「仕事」じゃなく、プライベートのようなワクワク感を感じ初めた気がします。
伊藤氏:2019年11月に株式会社パソナグループとイベントを共催したのですが、それまでは業界外とのコラボイベントは基本的に折衝を含めてすべて私がマネジメントしていました。ただ、パソナとのイベントについては青柳さんがメインで対外調整から金額交渉、当日のプログラム作成、司会進行などすべてを担当してもらいました。今振り返ってみると、青柳さんにとっては、それがきっかけで若手の会への関わり方がより自分事になってきたんじゃないですか?
青柳氏:パソナとのイベント開催のきっかけになったのが、若手の会で行った建コン各社の社長との対談会で、うちの(株式会社長大)永冶社長に来ていただいた際に、「パソナの働き方が面白いぞ」という話を聞いて、それから長大繋がりで私がメインになってやることになりました。でも、ちょうどそのことから、そろそろ自分で何かやろうかなと思っていた時期だったこともあって、自然な形で進みましたね。伊藤さん以外に初めてイベントを運営する責任者になったので、プレッシャーはもちろんありましたよ(笑)。
でも、プロジェクトは上手くいったと思っています。それが自信に繋がりました。それまでイベントはただ参加するだけだったのですが、それぐらいの時期から自分事として考えられるようになった感じはしましたね。
青柳氏:伊藤さんが代表を務めて4年目の終わりに、その当時いた私を含めた3人で共同代表をしてみないかという代表交代の話が、伊藤さんからありました。
伊藤氏:でも、無下に断られた(笑)
青柳氏:当時は伊藤さんのようにアクティブに動かないといけないという、変なプレッシャーもありましたし、自分にはできないと思っていました。
――その後、どういった心境の変化があったのでしょうか。
青柳氏:社内の異動があったり、プライベートでは子供が生まれて育休を取ったり、仕事以外のことを考える機会があったりと環境が変わりました。
あと、2020年の1年間は、伊藤さんと立科ワーケーション体験をしたり、次世代人材育成ワーキングで各社社長と業界の現状や未来について意見交換したことの影響が大きかったのかもしれません。伊藤さんとやりとりする時間が結構あったことで、伊藤さんが考えている業界の問題意識とか将来像が自然と伝わってきました。とはいえ、次の代表をやってみようなどとは思ってなかったし、具体的な話も一切なかったですね。
伊藤氏:今思えば、意図的ではないにしろ、確かに青柳さんとの関わり方がより濃密になっていましたね。いろんな場面で、お互いで『若手の会』を通して業界をどうしたいとか、自分はどうありたいのかという話はよくしていましたね。
――どのような経緯で代表を交代されたのでしょうか。
伊藤氏: 委員の任期満了が2021年4月でしたから、委員刷新とあわせて代表交代だなと自分の中でも1年位前から思っていました。若手の会の現メンバーにはその意志は半年前くらいには伝えていました。いよいよ代表を決めないといけないタイミングが迫っていた頃、メンバーの一人から「伊藤さんはだれに代表してもらいたいんですか?」と聞かれたんです。それまでは、残るメンバーで決めてもらえばよいかなと思っていたのですが、その一言もあって、「自分が任せたいと思う人に代表をお願いしたい」という気持ちがふつふつと湧いてきたのを覚えています。そこからですね。青柳さんと1on1で代表をお願いしたり、周りのメンバーが反対しないよう、また青柳さんをサポートしてもらうよう、色々と動き回りましたね(笑)。
なによりも、青柳さん自身には、なんで代表になってもらいたいと思っているのかとか、自分自身がどういう思いで若手の会を運営してきたかなど、しっかり話し込みました。
私としては、青柳さんは一技術者として大成することはもちろん、組織を束ねていくような立場にもなると予想していますし、そうなってほしい。そうしたキャリアの中で、『若手の会』の代表を経験することは、社内・社外での存在感も高まるし、個人のステップアップのためにも大きなプラスになるだろうと思いました。
青柳氏:オファーをもらってからは、ポジティブになったりネガティブになったりの毎日でしたね(笑)。家族にも相談しました。代表になることで、家族との時間が取れなくなるかもしれない、といった不安もありました。
代表になっても技術者として成果を挙げたいという想いもあったので迷っていたのですが、 諦めるよりも“二兎”を追った方が意外と無駄が削ぎ落とされるというか、経験上プラスに働くことが最近多かったので、「今よりもパフォーマンスが上がるかもしれない」とポジティブな思考になっていきました。
あとは、伊藤さんと話したり、本を読んだり、家族と話をして“伊藤さんとは違ったやり方”で、あまりプレッシャーを感じずにやれるかもしれない、と頭の整理ができたことも大きいですね。
伊藤氏:私が代表をやってきた延長線上のことを続けるのであれば、わざわざ代表を代わる必要はないですよね。やはり、ガラっと一新することが代表交代の本当の意義ではないですかね。なので、私がやってきたことではなく、青柳さんがやりたいことをやればいい、といった話をしました。ただ、家族や会社の時間は、どうしても少なくなるだろうから、そこは覚悟するしかない、と。そんな青臭い話をしながら、世間ではこういう形で会社や組織の世代交代をするんだなぁと、考えていましたね(笑)。
今回の代表交代の経験をして、改めて自分の想いはちゃんとさらけ出して伝えることが大事だと再認識しました。もし、挙手制や多数決でさくっと代表を決めてしまっていたら、私自身今ほどの満足感というか、納得して次の世代にバトンタッチすることはできなかったのではないかと思います。でも、結果的に私の思いを押し付けているということにとれなくはないので、半ばエゴなのかもしれない。何が正解なのかは正直自分でも分からないです。
青柳氏:伊藤さんが考えた委員交代の方法が正しかったのかどうかはまだ分かりませんが、結果として各メンバーが『若手の会』や今後について色々考える良い機会になったように思いますね。
――これまで伊藤さんが代表という立場だからこそ成長できたと感じるのは、どんな点でしょうか。
伊藤氏:まず、意思決定する頻度が多く、決定する上での根拠付け、説明の仕方が上達したかなという点ですね。代表という立場は、業界内外の折衝、つまり協会の人たちや業界外の人たちと直接向き合うので、意思決定の機会が連続してあるので鍛えられました。会社の通常業務ではあまり経験できないので、良かったと思います。
人的なネットワークが増加したことも、自身の今後のキャリアの上で非常にプラスになると考えています。
それから、自身のやりたいこと・興味のあることが明確になっていった点ですね。「若手の会をこうしたい」とか「活動を通して自分はこうありたい」とか、かなり突き詰めて考えていかないと、若手の会のメンバーをはじめ、協会の方々、業界外の人と折衝できないですからね。折衝、調整するときには、必ず「あなたは何がしたいの?」という主旨のことを説明することになるので、自分自身のWILLですよね、それを突き詰めて考える良い機会だった。
とはいえ、どれも代表という立場に限らず、自らが主体的に行動すれば経験できることではあると思っています。
――最後に、お互いにエールやメッセージがあればお願いします。
青柳氏:本当に6年間お疲れ様でした。多くの刺激とワクワクをありがとうございました。伊藤さんご自身が若手の会を通じて作られた「つながり」やその過程で得たノウハウもあると思うので、さらにこの業界活性化のためにご活躍してもらいたいですね。
伊藤さんの若手の会との向き合い方は私にとって学びばかりだったので、『若手の会』の相談役としてこれからもサポートをお願いします。
伊藤氏:青柳さんや『若手の会』へのエールとしては、この6年間の延長線上で運営をするのではなく、一度ガラッと組織が変わることこそが代表が代わる意義だと思っていて、「こう在りたい」という未来の形を想像して、そこからバックキャストしていくと、夢があってワクワクすると思います。私自身としても、次のステージに目を向けていきたいと。今後は、私が行動した結果を『若手の会』にフィードバックできるよう、常に成長環境に身を置き、自分自身が成長していくようにアクションしていきたいですね。
――貴重なお話をありがとうございました。