【失敗から学ぶ】バイブロハンマーで石造りの水路を破壊!閉塞感漂う工事現場でのあってはならない失敗談~その2~

  • LINE

前の記事   次の記事

前回「【失敗から学ぶ】バイブロハンマーで石造りの水路を破壊!閉塞感漂う工事現場でのあってはならない失敗談~その1~」で、道路改良工事における失敗談をご紹介しました。今回はその失敗の原因と対策についてお伝えしたいと思います。


石積み暗渠を破壊してしまった原因


 1.十分な準備ができていないまま現場をスタートしてしまった


工事金額が大きく削られたことで、私たちには焦りと若干の諦めがありました。とにかく、早く着工して終わらすということに、監督も私も固執してしまっていました。「着工前測量成果簿」は既知点を往復して、水準をクリアーしているから大丈夫…「施工計画書」は数年前の同じような工事の書類から「コピー~貼り付け」…。「既設石積み水路」があり、それを工事の最終段階まで活かして進めていくことや、既設水路が図面上の位置に本当にあるのかということなど、この工事の要となる部分には全く注意が向いていませんでした。


 2.設計照査を十分に行わなかった


これは、前項とも関連することです。私たちは現場を進めながら、変更や工期短縮について話し合っていました。私が変更にこだわり、監督が工期短縮にこだわっていたせいで、かみ合わない不毛な会話が多くありました。本当に「変更」によって増額したいのであれば、しっかりと設計照査を行い、協議していく必要があったと思います。


想定外の事故を起こさないための対策


 1.受注してからの1か月を大切に使う


「受注後、1か月以内に工事に着手する。」という文言をよく耳にしますが、この1か月の過ごし方がその後の施工にとても影響を与えます。昔からよく知っている場所が工事現場になるということは少ないでしょう。土地勘も無く、知り合いもいないという場所が多いため、たとえ車で通ったことがある場所でも、車から降りて歩くだけで、車窓からではわからない、いろいろな発見や気づきがあります。できるだけ早く現場事務所を構えて、測量を行い、現場で過ごす時間を増やし、完成形と施工途中の姿に思いを巡らすことで、「この図面にある横断暗渠の位置は本当に正しいのか。」という疑問にたどり着けたかもしれません。時間に追われて、提出するに足りる「着工前測量成果簿」で満足していては、絶対にたどり着けない疑問点だと思います。


 2.設計照査を行い、現場内の話し合いを密に行う


とにかく測量はしっかりと行うことが重要です。設計変更で増額になる根拠を示すには調査と資料が必須でありこれには当然ある程度の時間が必要です。また、工期短縮は、急いで工事を始めることでも、休憩を減らすことでもありません。設計書、図面をよく吟味し、施工の工夫、設計の問題点を洗い出すことによって、無駄を省くことができるし、変更による増額を絡めることもできます。つまりこれはお金のもらえない作業時間を減らすことになります。同じ時間で終わらせるのであれば仕事量が増えるため、工期短縮とも同義です。「分の悪い工事」という言葉には今でもトラウマがありますが、作業によっては金銭的に合う作業と合わない作業があり、トータルで合えば私はそれを「仕事」と呼べるのではないかと考えています。変更にかける時間を惜しんでサービスで作業したのでは「分が悪い」のです。そうした「分の悪い」作業が重なってしまうと、必要な手間を惜しむ流れとなり、大変な失敗の要因ともなります。


幸い、この工事で打ち抜いた暗渠は崩れることはありませんでした。善後策を監督と話し合い、暗渠入り口から800φのジャバラ管を挿入して当面の安全を確保し、工事中の水路としての役目は全うしました。その後、当初設計にあった「空洞充填」で暗渠は土中のコンクリートの塊と化しましたが、今でも時々、覗き込んだ穴から見えた「絶望の光」を思い出すことがあります。

会社が受注した工事の担当になった場合、私はできるだけ早く、できるだけ何回も現場に行きます。そして図面を片手に現場付近をうろうろ歩き回ります。気になったものは写真やメモで残します。歩き回る時間帯や天候が変われば、また違う気づきもあります。たまたまかもしれませんが、その時の写真が証拠となって、ブロック塀の亀裂が工事によるものではないと証明されたこともありました。

設計図面だけではわからないことや、設計図面の間違いに気づきましょう。工事が始まった時に重機が座る場所に立って、いろいろと想像してみましょう。私は何か思いついたとき、ちょっと得意げな気分になります。皆さんはそんな気持ちになったことはありませんか?

【この記事を読んでいるあなたへ】

「道路」に関する製品・工法をお探しの場合はこちら

※本文内にある一部のキーワードをクリックすると、該当する製品・技術情報にアクセスできます。

この記事のライター
鹿児島県生まれ。大学では地域研究を専攻。
塾講師・海運業(離島航路)を経て、地元の土木会社に勤務。公共工事、民間工事の主任技術者、職長として現場で汗を流しながら、事務所では見積り、積算もやっております。
『サガシバ』に会員登録して、匠の野帳をもっと便利に!
会員登録すると、最新記事の情報が受け取れる他、便利な使い方がたくさん!

ローリングMさんの匠の野帳をもっと見る

2022年08月03日 00:20 ローリングMさん
1 0
「真ん中で折れとるぞ。」「…えっ?どこで?」現場に着くなり、左官さんがそんなことを言い出すので、僕は慌てた。この工事は、元々積んであった2段積みのブロックをかさ上げすることで、駐車場の外回りの高さをかせ...
1 0
2022年04月06日 01:38 ローリングMさん
1 0
名前小塚敏美 白髪のほうが多い短髪の70歳性別男性身長152㎝体重50kg職業左官敏美さんは70歳の左官さんだ。使う道具には「ト」の字が彫り込んである。今回は、日本経済の流れの中で、その浮き沈みの激しさをそのま...
1 0
2021年07月07日 01:34 ローリングMさん
3 3
今回ご紹介するのは、道路改良工事での失敗談です。朝夕の交通量の多い既設道路の拡幅計画に伴い、古くなった水路の代わりにプレキャストボックスを据え付けるという工事で、道路の線形・高さを変えていく準備ともい...
3 3
2021年05月19日 02:06 ローリングMさん
10 7
転職組だった私はいくつかの工事現場で作業員を経験しながら、施工管理技士の資格を取得し初めて現場を持つことになりました。今回、ご紹介するのは初めて担当した現場で経常利益どころか、最終的に100万円以上の赤...
10 7
2021年03月10日 04:42 ローリングMさん
10 6
現場には乗り合わせで行く。特に建設現場は駐車スペースが限られていたり、まったく無かったりするからだ。「今日は、Y君とTさんは僕のダブルピックに乗ってください。」「乗れるの?」Y君が笑いながらこっちを向い...
10 6
2021年01月06日 02:28 ローリングMさん
11 8
「日の出まで2時間か…寒くないのがせめてもの救いだな」その時、携帯の着信音が上着の胸ポケットから薄暗い商店街に鳴り響いて、すぐに切れた。「そろそろ来るよ。Iさんは赤い旗を持って向こう岸に行って、対向車が...
11 8
2020年11月25日 00:44 ローリングMさん
13 7
天気が何とか持ちそうなので、今日の作業は工程表通り「プレキャスト側溝の据付」ということになった。道路改修工事は、昨日据え終わったばかりの新しい側溝の終点から、今日の予定地点までの既設の古い側溝を撤去す...
13 7
2020年10月14日 08:20 ローリングMさん
8 4
『整地』土木関係の人ならよく耳にする言葉である。広さにもよるがすべてを同じ高さにすることはあまりなく、水勾配を考慮しながら平らな面を重機のみ、人力のみ、もしくは協力し合って作りあげる。丁張杭や鉄筋棒に...
8 4
2020年09月02日 09:03 ローリングMさん
13 11
朝礼は7時15分からと決まっていた。会社の朝礼がある日はゆっくりと出社できる。これが普通の日だと7時前に必ず誰かから電話がくる。「起きましたか?」「今どこ?」昭和30年位に生まれた世代はとにかく朝が早い。と...
13 11
会員登録(無料)