前回「【失敗から学ぶ】バイブロハンマーで石造りの水路を破壊!閉塞感漂う工事現場でのあってはならない失敗談~その1~」で、道路改良工事における失敗談をご紹介しました。今回はその失敗の原因と対策についてお伝えしたいと思います。
工事金額が大きく削られたことで、私たちには焦りと若干の諦めがありました。とにかく、早く着工して終わらすということに、監督も私も固執してしまっていました。「着工前測量成果簿」は既知点を往復して、水準をクリアーしているから大丈夫…「施工計画書」は数年前の同じような工事の書類から「コピー~貼り付け」…。「既設石積み水路」があり、それを工事の最終段階まで活かして進めていくことや、既設水路が図面上の位置に本当にあるのかということなど、この工事の要となる部分には全く注意が向いていませんでした。
これは、前項とも関連することです。私たちは現場を進めながら、変更や工期短縮について話し合っていました。私が変更にこだわり、監督が工期短縮にこだわっていたせいで、かみ合わない不毛な会話が多くありました。本当に「変更」によって増額したいのであれば、しっかりと設計照査を行い、協議していく必要があったと思います。
「受注後、1か月以内に工事に着手する。」という文言をよく耳にしますが、この1か月の過ごし方がその後の施工にとても影響を与えます。昔からよく知っている場所が工事現場になるということは少ないでしょう。土地勘も無く、知り合いもいないという場所が多いため、たとえ車で通ったことがある場所でも、車から降りて歩くだけで、車窓からではわからない、いろいろな発見や気づきがあります。できるだけ早く現場事務所を構えて、測量を行い、現場で過ごす時間を増やし、完成形と施工途中の姿に思いを巡らすことで、「この図面にある横断暗渠の位置は本当に正しいのか。」という疑問にたどり着けたかもしれません。時間に追われて、提出するに足りる「着工前測量成果簿」で満足していては、絶対にたどり着けない疑問点だと思います。
とにかく測量はしっかりと行うことが重要です。設計変更で増額になる根拠を示すには調査と資料が必須でありこれには当然ある程度の時間が必要です。また、工期短縮は、急いで工事を始めることでも、休憩を減らすことでもありません。設計書、図面をよく吟味し、施工の工夫、設計の問題点を洗い出すことによって、無駄を省くことができるし、変更による増額を絡めることもできます。つまりこれはお金のもらえない作業時間を減らすことになります。同じ時間で終わらせるのであれば仕事量が増えるため、工期短縮とも同義です。「分の悪い工事」という言葉には今でもトラウマがありますが、作業によっては金銭的に合う作業と合わない作業があり、トータルで合えば私はそれを「仕事」と呼べるのではないかと考えています。変更にかける時間を惜しんでサービスで作業したのでは「分が悪い」のです。そうした「分の悪い」作業が重なってしまうと、必要な手間を惜しむ流れとなり、大変な失敗の要因ともなります。
幸い、この工事で打ち抜いた暗渠は崩れることはありませんでした。善後策を監督と話し合い、暗渠入り口から800φのジャバラ管を挿入して当面の安全を確保し、工事中の水路としての役目は全うしました。その後、当初設計にあった「空洞充填」で暗渠は土中のコンクリートの塊と化しましたが、今でも時々、覗き込んだ穴から見えた「絶望の光」を思い出すことがあります。
会社が受注した工事の担当になった場合、私はできるだけ早く、できるだけ何回も現場に行きます。そして図面を片手に現場付近をうろうろ歩き回ります。気になったものは写真やメモで残します。歩き回る時間帯や天候が変われば、また違う気づきもあります。たまたまかもしれませんが、その時の写真が証拠となって、ブロック塀の亀裂が工事によるものではないと証明されたこともありました。
設計図面だけではわからないことや、設計図面の間違いに気づきましょう。工事が始まった時に重機が座る場所に立って、いろいろと想像してみましょう。私は何か思いついたとき、ちょっと得意げな気分になります。皆さんはそんな気持ちになったことはありませんか?
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