土木工事は本施工を始める前に、準備工や仮設工を行い作業場の確保をして作業性・安全性の確保を必ず行います。仮設工がしっかりと計画され適切に施工されれば、本工事をスムーズに行うことができ、工期の短縮にもつながります。
一級河川などの大きな河川で行う護岸工事には、主に瀬替え・仮締切・仮排水の仮設工があります。瀬替えで川の流れを変えて、仮排水路で現場の排水を行い、工事現場を仮締切で守るのが一般的な形です。
低水護岸工事は、水との戦いになるため他の工事と比べて仮設が重要です。台風や大雨などによって仮設が被害を受けると、現場は水没して工事が止まりますし、雨の規模にもよりますが水が引くまで2~3日程度はかかります。そこから仮設の復旧となると大きなロスにつながるため、仮設は重要な工種の一つとなっています。
仮設工が被害を受ける原因はいくつかありますが、主なものは、ダムの放流や台風、大雨による増水です。ダムの放流だけでは大きな被害にはなりませんが、大雨の時にはダムの放流も同時に行われるため水量の増加の程度は大きくなります。
よくある事例としては、瀬替えが流されることや仮排水路が埋まることが挙げられます。瀬替えがしっかりしていれば仮締切がやられることはありませんが、もし仮締切が破損すると被害は甚大となりますし、仮排水路が埋まると水位が下がらなくなります。仮設工は作業性や安全性の向上に大きな役割を持っているため、より強固に作る必要があります。
現地踏査の際に本流の位置や流れが強い場所を確認しましょう。最近ではドローンを使い、簡単かつ正確に本流の位置と施工現場の位置を確認できるようになりました。
補強方法として一般的なのは、大型土嚢です。時間や資材、人を投入できるのであれば全面に大型土嚢を設置し、脆弱部を強化するのが良いです。そこまでできない場合はしっかりと検討し、より効果的に配置しましょう。これは瀬替えだけでなく仮排水路を守る場合も同じになります。必要箇所に大型土嚢を設置する場合は、増額の可能性があるため発注者と協議することをおすすめします。
瀬替え工は土木施工管理基準で勾配が管理されていますが、その勾配よりも緩く施工したほうがいいです。法面がなだらかな場合、水の流れによる浸食をさらに緩やかにすることができるためです。また管理道としても使えるように天端は締固め、車が通れるようにしておくと現場を把握しやすく便利です。
瀬替え後の流れを考えて仮排水路の位置を決定することも重要です。仮排水路を設置する際は、施工性を考えてできるだけ掘る土砂を少なくしたいです。近接工事がある場合は限られた場所にしか設置できないため、現場条件を考慮して、適切な位置の検討が必要になります。
また、設置位置に制限がある場合は、上で書いたように大型土嚢を設置することや掘り出した土砂を利用して堰を作る方法も有効です。
全ての工事に言えることですが、特に河川工事で仮設工は重要な工種のため、よく検討する必要があります。河川工事は環境面や施工時期、漁協との契約といった制限があるケースが多いため、難しい選択を迫られる場面も多いと思いますが、より強固な仮設を設置することによって、スムーズに本工事を行い、良い品質の構造物を施工することができます。各現場で条件が違うため、この方法が良いとは一概には言えませんが、今回紹介した方法を参考にしていただけたら嬉しい限りです。
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