土木工事は大規模なものが多く、地形を変えるため周囲にさまざまな影響を与えます。施工範囲も広く、重機による騒音や振動だけでなく、資材の搬入搬出時には交通量が増加します。工事中は近隣住民の方に迷惑を掛けるため、配慮は大切になります。
作業ヤードについては設計書に記載されていますが、資材置き場などを考えると実際に施工するときに足りなくなることが多々あります。その際は新たな借地が必要となるため、近隣住民の方から隣接している土地の交渉をすることになります。
借地は発注者が借りる場合と施行者が借りる場合があります。発注者が借りる場合には、発注者と地主との話し合いになるので、特に問題はありません。施行者が直接借りる場合には、値段などの交渉が必要となります。交渉をスムーズに進めるためにも、予め関係を良好にしておく必要があります。
事前調査では、工事現場周辺の地主さんを把握して挨拶をしておきましょう。私の場合は、会社に地元の人がいれば紹介してもらうなど、事前にどのような人なのか情報を集めたりしていました。準備工の段階で会う機会があれば、世間話でもして打ち解けられたらなお良いですね。時々問題となるのが、登記簿に記載されている方が亡くなられている場合や、遠くに住んでいる場合です。そのような場合は、 可能であれば借地の場所を変えたり、どうしても借地の交渉が 必要な場合は、発注者と相談して進めていくことをおすすめします。
土地を借りる際には地主さんの要望もあります。私が橋脚工事を行った時には、「借地の耕作土をストックしてほしい」とか、「草刈りした草が欲しい」、「余った生コンを分けてくれないか」といった要望がありました。可能な限りでいいので対応すると喜ばれます。
護岸工の低水護岸工事を行う時は、仮排水路を作り水位を下げる必要があります。以前私が工事に携わった際は、井戸枯れが発生し、近隣の住宅の生活水や工場の業務用水が使用できなくなる可能性がありました。そのため発注者はあらかじめ井戸水を使っている箇所を調査し、上水道の仮配水管を設置しました。各井戸は取水する深さが異なるため、いつどこで枯れるかはわかりません。そのため、上水道の接続は施行者に任せられていました。
当時、近隣住民対策を担当していた私は、まず排水管の位置と前回の工事で井戸枯れが発生した場所を確認しました。そして、工事個所付近と下流の地域に井戸枯れが発生すると想定されたので、各家庭を回り、上水道への切替方法と水道料の説明、連絡先等について説明しました。平日の昼間は出かけている家庭も多いので、全ての場所を回るのに時間がかかった記憶があります。また、水道局と水道屋とも連絡を取り、対処手順についても確認しました。
その時は、合計で5件の井戸枯れが発生しましたが、事前に説明を行ったこともあり、速やかに対処することができました。井戸の復旧の際は、井戸水を吸い上げるポンプを長期間動かしていなかったこともあり交換することとなりました。しかし、機器が壊れた時の保証は発注者と施行者で事前に取り決めていましたので、トラブルにならずに交換することができました。
ここまでの近隣住民との付き合い方のポイントをまとめると
その他にも
地元になじみのある建設会社であれば、近隣の方々も受け入れてくれる場合もありますが、知らない人たちが来て、工事を始めるのはどうしても不安になります。そのような不安を取り除くためにも、真摯に対応することが必要になります。
繰り返しになりますが、工事をするうえで近隣住民との付き合いは切っても切り離せないものです。トラブルがあれば工事を中断せざる得ない状態にもなります。施工現場や条件によって注意しなければいけないことはたくさんありますが、まずは関係を良好にしてスムーズな工事を目指したいところです。関係が良好であれば、協力を得ることも可能になるので、今回挙げたポイントを参考にして各現場にあった対策を検討してください。