前回は土木の基礎となる盛土工について紹介しましたが、今回は切土工について紹介したいと思います。
盛土が上載荷重を支えるために土砂を積み上げるものだったのに対して、切土は土砂をほぐして撤去する工事を指します。そのため切土後は、既存の岩盤を利用して上載荷重を支えることになります。
切土の施工時に気を付けることは下記の4つです。
紹介する注意事項のほかにも気を付けることはありますが、主に私が現場で感じたことについて解説します。
土砂を撤去すると、下の地盤に掛かっていた重しを取り除くことになるため、これまで押さえつけられていた下の地盤が膨張します。スポンジのようにクラックが入らない形で膨張すれば問題はないのですが、クラックが発生するとそこから雨などにより水が浸入します。すると水圧が発生しますので、水圧による崩壊の可能性が高くなります。また現場によっては、岩盤や粘性土があります。その場合、地下水がその上を通過しているため湧水が発生しやすく、崩れやすい状態となります。
これらの危険を回避するためにも、施工の際は排水方法を検討する必要があります。当初の設計に排水設備がある場合は、出来る限り早めに流末の排水設備を設置し排水を行います。当初の計画に排水設備がない場合は、集水計画から配水断面を計算して発注者と協議をしましょう。
また、排水設備がコンクリートの2次製品であれば、施工のしやすさを理由にコルゲート管への変更も考えてみてください。地下水については、透水層に排水管を設置して排水を行います。設計図面には、設計の際に行ったボーリング調査の結果表が添付されているはずなので、その結果表を参考に排水管の設置位置を決定します。
大雨の場合、法面を水が走り土砂が流出することで法面保護工に影響し、美しい構造物を作ることが難しくなります。そのため法肩に横断方向のこう配がある場合は、こぶを作り法肩に水道ができるようにします。勾配がない場合は、多孔管の設置やポンプによる排水を行い、法面の保護をします。
掘削は、深度が深くになるにつれて岩盤に当たる可能性が高くなります。岩盤は、支持力が大きい反面、掘削しにくいため重機では歯が立たないことがよくあります。その時は、発破による破砕を行います。発破は、手掘りや機械掘削が困難な岩石などの地山で、ダイナマイト等の火薬を用いて掘削を行うことです。危険性が高いため、火薬取締法施行規則により細かく規定されています。発破作業では、せん孔、装てん、結線、点火並びに不発の装薬、または残薬の処理等の業務は、発破技士の免許を持つ者が行なわなければなりません。また、発破技士の免許をもつ作業指揮者の指揮で発破作業を行う必要があります。
発破の際は、発破場所の監視を行う監視員の配置や、アラーム音など騒音がでるため、あらかじめ近隣住民への周知が必要になります。私の場合は、継続工事で毎年発破を行っていることや近くに民家等が少ない場所であったことから近隣住民への説明がスムーズに済みました。しかし、現場によっては騒音や振動の問題により発破できない条件もあるので、静的破砕工法などの適切な工法を選択する必要があります。
切土を行った際に、搬出土は再利用される場合が多いので、利用法について確認しましょう。利用法で多いのは、そのまま他工事の盛土材へ転用する場合や残土置き場にストックする場合です。残土置き場にストックする場合は、搬出後に土量を確認して設計変更してもらうことが可能です。他工事の盛土材へ転用する場合は、ダンプの台数による土量確認となるため、正確に計測することが難しくなります。あらかじめ土質の変化率を求め、発注者とダンプの台数により排出土量を確認することなどを協議しておくことでトラブルを防ぐことができます。
掘削前には、埋設物の確認を必ず行ってください。図面上の確認だけではなく試掘を行い、実際に確認する必要があります。また、予期しない埋設物が出てくる場合もあります。私が掘削を行った時は、不法投棄されたガラクタが出てきた時がありました。その時は、発注者に出てきたガラクタの種類や量を報告し協議を行い、処理料金分を増額して適正に処理しました。このような埋設部が出てきた場合に、勝手な判断で処理しないように注意してください。また、遺跡などの文化財の場合は、報告義務があります。
切土は、盛土と違い地盤の状態に影響を受けるので、施工前の事前調査が重要となります。今回挙げた注意点は、ほとんどの現場で当てはまることだと思います。
今回紹介した中で最も注意が必要なのは、雨・地下水対策です。工事を行う上で水はうまく付き合っていかなければいけないものなので、現場の天候や地下水の状況に対して適した排水方法を選択する必要があります。
切土工事は、崩壊により大きな事故につながりやすいので、今回挙げた注意点を参考に安全に工事を進めていただけたら幸いです。
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