盛土の役割は、上載荷重を支える役割と止水壁としての役割の2つに大別できます。前者の盛土は、道路盛土工・鉄道盛土工・造成工などがあり、主に道路工事や造成工事で施工されます。後者の盛土は、河川護岸やロックフィルダムなどの河川や海の現場で施工されます。
盛土は「現場の整地→土砂の運搬→敷均し→締固め→土砂の運搬→敷均し→締固め」と、指定の高さになるまで土砂の運搬から締固めまでを繰り返しながら施工していきます。
ここからは、各工程での注意事項を紹介します。
まず現場の整地ですが、資材搬入のしやすさや建設機械の導線の確保について考える必要があります。土砂の搬入は、現場条件により選択する方法が違うため、どれがいいとは一概に言えませんが、建設機械による長距離の運搬は効率が悪くなるため、可能であればダンプで敷均しがしやすい場所まで運搬して、ブルドーザによる敷均しを行うと経済的です。
重機の導線の確保は、安全性を担保するためにも確実に行います。
他現場の流用土や資材置き場から土砂を運搬するときは、ダンプトラックを使います。通行ルートに住宅街がある場合は、騒音が問題となりますし、学校があれば登下校時の危険性が高くなります。そのため、近隣住民や学校に対して、通行ルートや運搬する時間帯を周知し、必要であればルートの変更をしなければなりません。
例えば、片道30分の所にある他現場から土を運ぶ場合に、1日10台が7往復すると、合計70回ダンプトラックが道路を通行することになります。この施工を行った時は、事前に自治会長に説明を行いましたし、誘導員の配置を発注者と協議しました。さらに、ダンプの通行時は路盤にダメージを与えるので、搬入前にルートの出入り口などの調査を行い、搬入が終了した後に必要な補修も行いました。また、現場が濡れていれば道路に泥を引っ張ってしまいますので、タイヤの洗浄や道路の洗浄も行い、とにかく近隣住民へ配慮しました。
敷均し・締固めについては、施工管理要領や品質管理要領によって定められているので、盛土施工時はそれらの基準に沿って施工する必要があります。建設ICTの広まりにより、GPSを利用した締固め管理を行う現場が増えています。現場ごとに締固め回数を設定し、色によって転圧できていない場所を確認できるので、むらのない締固めができます。ICTを利用した締固めの注意点は、現場の配置です。搬入路などの配置によっては転圧しにくい場所が発生するためです。また、1層転圧するごとに転圧していない場所がないことを確認することも大切です。
その他に必要なことは、水対策です。盛土材の含水率が大きくなると締固めができず、所定の品質を確保することが難しくなります。そのため、施工中に排水経路を確保する必要があります。排水を適切にすることで、早期に盛土材を乾かすことや水による盛土路盤の動きを抑制することができます。私が行った仮設工の盛土では、水平排水材を設置して排水をしました。水平排水材は一般的な排水暗渠とは異なり、薄く盛土内の水の排水に適しているので、一定の間隔で配置することで効果的な排水ができます。これはかなりの効果があり、雨の日に見ると排水材から水が出ているのが確認できるほどでした。
盛土は土木工事の基礎となる重要な工種です。施工計画を作る際は、盛土材の品質や運搬経路の確認、使用機械の選定、作業場所の確保などさまざまな要素を考慮する必要があり大変ですが、盛土の“美しさ”で構造物や植生工の出来栄えが決まるため、手を抜くことはできません。今回紹介した、現場の整地、土砂の運搬、敷均し・締固め+水対策の注意事項を参考にしていただければと思います。
高い品質の盛土を行い、見た目を美しく作れば評価も高くなるので、しっかりと検討しましょう。
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