高度経済成長期にさまざまなインフラが整備され、今はそれらを改修する時期になっています。当時は、周りに建物などが少なく施工もしやすかったと思いますが、現在は、建物や地下埋設物といった支障となるものが多く、十分な施工場所を確保することが難しい、狭い現場がほとんどです。そこで、今回は狭い現場での注意事項や施工方法についてご紹介します。
“狭い現場”と言っても、その障害によって対策が異なります。狭い現場となる主な理由は、下記の条件の時です。
【狭い現場となる条件の例】
これらは施工会社だけの問題ではなく、自治会や市町村、電力会社など多くの方々の協力が必要となるため、様々な調整が必要です。例えば、道路の改修工事であれば以下のことを考え協議します。
現場の条件をはっきりさせた上で、施工計画を立てていくことが重要です。では続いて、それぞれの現場の注意事項と施工方法をご紹介します。
住宅や建物が近接している場合は施工前に挨拶を行い、工事内容への理解を得るために要望があれば伺います。また、発注者と協議して防音壁や安全柵の設置を行います。通学路であれば、学校に注意喚起をしてもらうようにしましょう。
公共工事では、地下埋設物の調査を行うことが義務付けられているため、受注後、電力会社やガス会社、市町村の上下水道課への確認を必ず行います。しかし、水道配置図面は正確ではないことが多いため、試掘まで行うことや掘りながらセンサーを使って探すこともあります。
線路や空港、高速道路に近接している場合には、施工時間の制限が考えられるため、管理会社への確認が必要になります。
最後に、近接工事がある場合ですが、工事用道路を共有することや接続部の調整をすることがあると思います。私は出来るだけ調整できるところは調整して、譲り合い、仕事のしやすい環境を作っていくことが大切だと思っています。
狭い現場では細心の注意を払う必要があります。そのためには、どのような障害や制限があるのかを把握し、それに適した工法・重機を選定し、安全対策することが大切です。
狭い現場では事故も起きやすくなるので注意しなくはなりません。実際に下水道の改修工事で起こった事故を紹介します。
【私が体験したトラブルと対策】
両側に住宅がある現場で超小旋回BHを使用して施工していました。旋回時は周囲の確認を行い、ポールを立てるなどのハード面の対策と、朝礼での注意喚起などのソフト面での対策を実施していました。しかしオペレーターを交代したところ、バケットを倉庫にぶつけて穴をあけるという事故が発生してしまいました。すぐに役所と倉庫の持ち主に連絡をして補修を行うこととなりました。その後は、オレンジネットで囲いを作り、視覚的に注意できるように環境を整えることでその後の事故を防ぎました。
この事例では、倉庫の破損だけで済みましたが、これが第三者災害で大きな事故につながっていれば行政処分なども考えられます。狭い場所では事故を防ぐ対策をしっかりと行う必要があります。
土木工事で、制限がない状態で仕事を行うことはありません。山奥の仕事でも、希少生物が生息することや水・気温が障害になることもありますし、街中では騒音や振動が問題になることがあります。障害をどう対処して、安全に作業を行うかを考えることも、技術者の仕事の一つなので、一つ一つをクリアして施工していくことが重要です。
今回紹介したことは、全ての現場に当てはまることではありませんが、参考にしていただけたら幸いです。