製造、運搬、施工・養生時の暑中コンクリート対策

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暑中コンクリートとは


土木学会示方書[施工編]および JASS5 では、日平均気温が25℃を越えることが予想される期間を暑中コンクリートの適応期間としています。

生コンクリートが外気温の影響を受け、凝結時間が短くなり水和反応が早まることから、3つの特性が顕著になります。

  1. スランプの低下・空気量の減少を起こし、コールドジョイントを招きやすくなる
  2. 温度ひび割れ発生可能性が増す
  3. 強度が低下する(長期強度の増進が低下)

打設時のコンクリート温度は、35℃以下となっています。外気温が25℃程度なら打設後の養生に注意すればいいだけです。しかし、近年は気候変動の影響によって平均気温が上昇傾向にあるので、コンクリート温度の管理は重要かつ、事前に対策しておく必要があります。


製造時の暑中コンクリート対策



 1.骨材ができるだけ加温されないように保管する

製造時の暑中コンクリート対策は、生コンクリート製造工場で対策してもらわなくてはいけません。生コンクリートに使われる砕石や砂は、天日に晒されるのでなく屋根付きの場所で保管したものを使うべきでしょう。生コン工場では骨材保管場所にあらかじめ大きな屋根が掛かっていることと思います。


 2.添加剤を見直す

外気温が30℃を上回るような場合は、水和時間を遅らせる混和剤(減水剤)生コンクリートに混ぜてもらう必要があります。あらかじめ生コンクリートを発注する際に工場側と打ち合わせする必要があります。当然、発注者には確認が必要となり、変更した添加剤での「配合計画書」を作成して提出しなければなりません。


 3.使用材料は温度の低いものを使う

ちなみに、セメント温度が8℃、骨材の温度が2℃、練り混ぜ水温が4℃上がると練り上げた生コンクリート温度は、1℃上がります。


運搬時の暑中コンクリート対策



 1.工場を見直す

運搬時間は、仕様書に定めてある通りの時間でなくてはいけないので、あまり遠くの工場へは頼めません。コンクリート標準仕様書では、「外気温25℃以上で練上がりから打ち込み終了までを90分以内で行う」ことが明記されているので、できるだけ打設現場に近い工場を選定するようにしましょう。理想は工場から現場まで30~40分程度です。場内運搬や品質試験に15分、荷下ろしから打設に15分程度、またトラブルなども考えられるためです。事前に配合計画をいくつかの生コンプラントで行っておくことが望ましいです。


 2.運搬車の養生を行う

運搬車(アジテータ車)は、保温シートでミキサーを覆い、直射日光による生コンクリートの上昇を抑えなくてはいけません。アジテータ車が現場に到着してからも、直射日光を受けない日陰で待機して、生コンクリートの温度上昇を防ぐようにしなくてはいけません。


 3.打設を午前中に行う

生コンクリートの打設時間は、外気温があまり高くならない早朝や午前中が良いと思います。しかし、早い時間に打設したくとも工場からの出荷時間や工事箇所周辺の騒音問題などがあって現実問題として難しいところがあります。


施工・養生時の暑中コンクリート対策



 1.打設箇所の温度を下げておく

打設・締固め時の注意点として、打設前には型枠に散水しておくことを忘れずにしましょう。直射日光が掛かるような部分は、シートなどで光を遮ることが出来るなら処置しておくのが望ましいでしょう。


 2.生コンの温度を確認する

外気温の確認と搬入された生コンクリートの温度も確認します。35℃を超える場合には打設しない、ということを技術者として徹底しなければなりません。


 3.配車計画を立てる

打ち継ぎ目はコールドジョイントが起こらないように、時間を空け過ぎないように注意します。生コンクリートのダンプが複数台になる場合は1台目が着いた後、30分後に2台目など、工場に指定しておかなければいけません。作業性と品質の両面を考量した配車計画を事前に検討して、工場と情報共有しておきましょう。


 4.締固めと仕上げについて

暑中コンクリートの打設でも、バイブレーターの掛け方や仕上げ方法は特に変わりありません。小手仕上げは、均した直後に1回行い、少し経ってから2回目の仕上げをすれば完了です。


 5.養生は速やかに、水を切らさないように行う

仕上げ後は、養生シートを掛けて散水し、乾燥や温度上昇が起こらないように注意しなくてはいけません。養生前にはコンクリートが養生できる状況になっているか確認してから行いましょう。外気温が30℃以上になるような時期には養生シートに何度も散水するようにしましょう。散水は早朝、午前、午後、夕方の4~5回くらいは必要かもしれませんが、外気温によってはもっと必要になるでしょう。養生シートが乾ききってしまったらいけません。養生する面積が広く散水が大変ならば、スプリンクラーなど散水設備を検討したほうが良いかもしれませんね。水道がある現場では散水は問題ありませんが、散水用の水がない現場は大型タンクに水を用意しなくてはいけません。また、風で養生シートがめくれてしまい直射日光に当たらないように養生シートを型枠に釘で留めたり、重しを乗せておく必要があります。


養生期間について


湿潤養生期間

日平均気温普通ポルトランドセメント混合セメントB種早強ポルトランドセメント
15℃以上5日7日3日
10℃以上7日9日4日
5℃以上9日12日5日

早く型枠を外したいなら早強ポルトランドセメントにすべきです。コンクリート標準仕様書他、定められた仕様書に規定されている期間を守るようにしましょう。


暑中コンクリートについて、お話ししましたがみなさんの参考になれば幸いです。

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この記事のライター
元は測量士で、今は土木の現場監督。北海道南西沖地震をきっかけに施工の現場管理へ転向。現在は、市民生活に欠かせないインフラの下水道工事を主に行っています。
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