下水道の維持管理(下水道本管修繕工事の流れ)~その2~

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前回「下水道の維持管理(下水道本管修繕工事の流れ)~その1~」で下水道本管修繕工事の流れについてご紹介しました。今回はその2として、5以降の項目についてご説明したいと思います。


下水道修繕工事の流れ


  1. 発注者と打ち合わせ
  2. 現場踏査
  3. 各種手続き(道路使用許可、地下埋設物調査)
  4. 工程作成
  5. 下請業者の手配(カッター屋、ガードマン、運搬業者)
  6. 住民PR
  7. 事前準備
  8. 本施行
  9. 後片付け
  10. 書類作成


5.下請業者の手配(カッター屋、ガードマン、運搬業者)


工事の日程を決めたら、下請け業者を手配します。

ガードマン


工事規制によって人数を出します。通行止めなら2名、片側交互通行なら3名と現場の地図に赤ペンで保安範囲を書き込み、ガードマンの人数を考えます。最近ではガードマンの需要が高く、希望する人数が手配できないこともあるので注意しましょう。

舗装の厚さによっては、切断するだけで1時間以上かかることがあります。生活道路など、舗装が8cm程度であれば切断する時間はそれほどかからないのですが、15cm以上ともなると時間がかかると思った方が正解です。事前に舗装を切断できるようなら、前日にでもカッター入れをしておきましょう。

本管を入れ替える際には、上流のマンホールを止水して水替えを行わなくてはいけません。

φ250mmの本管となると専門の維持業者に、止水と水替えを依頼することになります。水替え大型のバキュームカー(10t)が必要になります。


6.住民PR



工事予定日の5~3日前頃、工事箇所付近に住んでいる住民に周知するため、チラシを作成して配布します。チラシの内容は、工事名、工事の日時と場所、発注先、施工先、交通規制などを記載したものです。工事場所がどこか分かり易いように地図を入れたり、見やすいようにカラフルにしたり、イラストを入れたりと、施工業者の工夫している様子が分かります。

また、工事によって車の出し入れが困難になる住民には、事前に工事内容を説明して了承してもらいます。


7.事前の準備



施工前に資材の調達を行います。本管修繕になるので、コンクリート製本管を必要数用意します。昔は1mのコンクリート管で施工していましたが、現在は1mのコンクリート管が製造されていないため、2mのコンクリート管で施工します。そのため、1m管1本の交換であっても2m管に変える必要があります。コンクリート製品などは、ある程度の数がないと配達してもらえないこともあるので確認が必要です。配達してもらえない場合は、資材搬送を自前でしなくてはいけません。

保護コンクリ―ト打設のために、生コンクリートの手配も行います。打設量を型枠から計算し、生コンの種類を指定して発注します。土木ならC-1かC-4のどちらかです。工事する7~5日くらい前までに注文しておくのがよいでしょう。生コンミキサー車(アジテーター車)は、生コン量が少ない場合、空積量を取られるので1m3以下なら4tダンプで取りに行くのが良いでしょう。

また、防護コンクリートは捨てコンなどと同じ扱いなのでスランプ試験や圧縮強度試験は必要ありません。特に監督から各試験の指示があった場合のみ行えばよいでしょう。

防護コンクリートの型枠は事前に作成しておきます。型枠は2組必要です。慣れた作業員でも0.5~1日かかるので、現場での型枠制作では間に合わないので注意しましょう。


8.本施行



施工の流れは下記の通りです。

  1. 舗装切断
  2. 舗装撤去
  3. 掘削・土留設置
  4. 既設下水本管確認・上流側の止水
  5. 既設下水本管撤去
  6. 管床が、ぬかるんで悪い場合はバキュームで吸引
  7. 管床を均し、管基礎(砕石)敷均し転圧
  8. 用意したコンクリ―管を敷設
  9. 保護コンクリート型枠を設置・生コンクリートを打設
  10. 管側まで砕石で埋め戻す(上流側止水を解除)
  11. 新設した下水本管を埋め戻す(埋砂)
  12. 路床敷均し・転圧
  13. 路盤敷均し・転圧
  14. 舗装復旧
  15. 後片付け
  16. 完了

当日に舗装復旧まで出来ない場合は仮舗装とし、後日に舗装本復旧します。土留材など事前に必要な枚数を計算し、自社所有分で賄えるのかなど、事前に概算で数量を把握しておきます。特に、掘削する機械と運搬車両は、考慮しないと掘削に時間が取られて作業が遅れてしまいます。掘削から埋め戻し復旧までは当日で行わなければならないので、とにかく時間との勝負です。

事前に疑問点があれば監督員と打ち合わせをしておきます。掘削する前に、地下埋設物の位置確認を機械オペレーターと確認します。


9.後片付け



施工当日に、片付けられなかった産業廃棄物を処理します。撤去したコンクリ―ト管や切断汚泥、ASガラ、残土などです。産廃(産業廃棄物)の処理は、どうなっているか書類上で分かるようにしなくてはいけません。


10.書類作成



写真帳・日報・出来形図・資材一覧表・数量調書など必要書類をまとめて工期までに提出します。業務の指示書で発注されることが多いと思われます。金額が多い長期の工事では、省略されている伝票添付やガードマンの数など、写真で判断するものがあるのも違っているところでしょう。

以上、下水道の維持管理(下水道本管修繕工事の流れ)についてご紹介しました。

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この記事のライター
元は測量士で、今は土木の現場監督。北海道南西沖地震をきっかけに施工の現場管理へ転向。現在は、市民生活に欠かせないインフラの下水道工事を主に行っています。
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