下水道の維持管理(下水道本管修繕工事の流れ)~その1~

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都市には、生活する上で欠かせないインフラ(インフラストラクチャー)があります。インフラは、道路、上下水道、電気、電話、鉄道など生活や産業など営む上で必要不可欠な社会的基盤になっています。

私は、道路・上下水道に大きく関わっています。中でも現在、主に下水道の維持工事に携わっているので、今回は下水道本管の修繕工事についてご紹介します。


下水道の普及率



昭和から平成の中頃までは、下水道が完備されていなかったので新設工事が盛んに行われていました。日本下水道協会によると、令和元年現在の下水道の普及率は、東京で99.6%、私の住んでいる北海道で91.4%です。下水道が普及しているので下水の新設工事は最近あまり見かけていません。


下水道の普及と実施状況(一部抜粋)

都道府県名都道府県名 下水道普及率 (%)
北海道
91.4
東京都
99.6
神奈川県
96.9
愛知県
79.3
京都府
94.9
大阪府
96.2
兵庫県
93.3
福岡県
82.6

https://www.jswa.jp/sewage/qa/rate/

東北地方と九州地方で普及率は約60%、四国地方は約40%と、地方によってかなり違いがあります。日本の大都市はほぼ90%の普及率となっています。

90%も普及してしまうと「下水道工事などもはや必要ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、工事してから長い年数が経つと頑丈なコンクリート管も寄る年波に勝てず疲弊して破損してしまいます。


下水道の維持管理



コンクリート管が破損すると、管の破損したところから汚水が濾水し、道路が陥没する原因ともなります。そのため、下水道の修繕が必要な個所は、下水道にカメラを入れて定期的に調査するなどして、道路の陥没から下水道の破損を予測して工事個所を決めます。最近では、下水道の内面から補修できる工法があるようです。しかし、内面からの補修は条件が良くないと施工できません。内側から補修できない場合は、開削工事で本管を掘削して管を交換するしかありません。

工事は、少額工事なので指示書が監督する役所から出されます。依頼を受けた業者は、指示書と資料から工事の予定を立てます。

まぁ、工事前に行う所謂、段取りと呼ばれるものです。


下水道修繕工事の流れ


  1. 発注者と打ち合わせ
  2. 現場踏査
  3. 各種手続き(道路使用許可、地下埋設物調査)
  4. 工程作成
  5. 下請業者の手配(カッター屋、ガードマン、運搬業者)
  6. 住民PR
  7. 事前準備
  8. 本施行
  9. 後片付け
  10. 書類作成


ではそれぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

1.発注者と打ち合わせ


監督から工事の概要や注意点、疑問点があれば聞きます。

施工は急ぐ必要があるか。近くに小学校や店舗があるか。小学校が近くにある場合は、児童の安全を考えて土曜日や祝日に施工することもあります。店舗がすぐ近くにある場合は、店の営業時間を考慮して夜間や店舗の休みの日に施工することもあります。


2.現場踏査

現地に赴き、工事現場の確認をします。通行止めか、片側交互通行かなど、交通規制の仕方によって工事日程も変わってきます。

道路の大きさによっては、大型の掘削機や大型ダンプでの施工が難しい場合もあります。行き止まりの道路や袋小路になっている道路では、作業車両などの配置や進行方向など考えます。


3.各種手続き(道路使用許可、地下埋設物調査)


道路使用届は、提出から、中1日で認可された書類が受け取れます。(都道府県によって異なります。)

地下埋設物調査では、ガス・上水道・NTT・電力などの埋設管を調べます。都市には、インフラの管が多数埋設されているので、図面なしでは掘削できません。

工事を行う朝のミーティングで、機械のOPと現地で図面を見ながら埋設物の位置と深さを確認します。さらに、立ち合いが必要な重要な埋設物は、事前に協議して立ち合いに来てもらいます。たいていの場合は、埋設調査時に協議を済ませます。施工日が、埋設調査時に決まっていない場合は、工事日が決まり次第連絡します。


4.工程作成

工程は、本管の大きさ(管径)と本数で決まります。生活道路に埋まっているような下水本管はφ250~300、1本が2mのコンクリート管が多いです。最近の下水道本管は、コンクリート管から塩ビ製のリブ管が多く施工されるようです。

φ300で1~4本ほどの布設替え、深さ2mの下水道本管の場合、1日で施工できます。ただし、掘削機械や運搬車両を思い切って大型にしないと、1日では施工できません。掘削機械は、0.4m3のバックホウで、運搬車両には10tダンプトラックが2台ほど必要になるでしょう。掘削量をあらかじめ計算して必要な掘削機械と運搬車両を出さなくてはいけません。

5以降の詳細については、次回お伝えしたいと思います。

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この記事のライター
元は測量士で、今は土木の現場監督。北海道南西沖地震をきっかけに施工の現場管理へ転向。現在は、市民生活に欠かせないインフラの下水道工事を主に行っています。
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