私たちが生業としている土木工事や建築工事では実際の工事を施工する前に、図面を起こして計画を立てなければなりません。発注先が役所なら、役所の担当職員が立案して測量と設計を発注します。まぁ、設計から積算を行って金額を出し、さらに工事を発注するわけですね。
日本の企業の99%は中小企業なので、測量から設計、そして工事まで行える企業は大企業しかありえません。小さな会社は、測量・設計・施工管理を分業制で行っています。
私の勤めている会社も、従業員30人以下の土木建設会社なので現場施工のみの土木会社です。前田建設工業のように、自社で企画から完成まで行えるのはなんと素晴らしい会社ではないかと思います。
私が行う積算は、
と考えるような仕事です。
まぁ、ワクワクした楽しさはありません。だから前田建設ファンタジー営業部のような、空想的な仕事にすごく憧れてしまいます。
映画「前田建設ファンタジー営業部」に登場する前田建設工業は準大手ゼネコンで、年間の売上高は3742億円にも上ります。大正8年に飛島組「前田事務所」として創業したときは、たった5人。5人は、たった一班の人数です。そのころからダム建設に関わって、やがてダムの前田と呼ばれる今日に成長しています。参考に読んだ前田建設工業のウィキペディアを読むだけで、とてもためになります。営業課のほかに広報課もあるのがさすがの大企業と思ってしまいます。
この映画は、2000年代の初めごろ実際に前田建設であったことが元ネタになっています。広報課で企画された「マジンガーZの格納庫」を
など、実際に工事を手掛けることを前提として70年代に大ヒットしたスパロボ・マジンガーZで検証してゆきます。
映画のHPには積算エンターテイメントと書かれています。無味乾燥の味気ないイメージしかない積算がエンターテイメントになるって、いったいどこの誰が想像したのでしょうか?この映画は、建設業に関わるすべての人々に鑑賞してほしい映画です。
監督は、英勉。映画監督デビュー作は、「ハンサム★スーツ」。最近の作品では、「賭ケグルイ」です。脚本家は、「ペンギン・ハイウェイ」を手掛けた上田誠。
今どきのさめた若者 ドイ | 高杉真宙 |
元設計のエース ベッショ | 上地雄輔 |
紅一点 エモト | 岸井ゆきの |
アニオタ チカダ | 本多力 |
トンネルマン ヤマダ | 町田啓太 |
ガードマンでマジンガーZマニア | 鈴木拓 |
ダム設計 フワ | 六角精児 |
熱い室長 アサガワ | 小木博明 |
前田建設の広報室メンバーのドイ達は、室長のアサガワから
といった荒唐無稽に思われる無理難題を投げられる。でも現在の技術なら、なんとなく実現可能かもしれない、、。
そんな思いの下、空想世界から受注して「マジンガーZの格納庫」の設計・積算を実際に施工するかのように大真面目に取り組み、その経過と結果を広報のWEBに発表する企画運営の様子が描かれています。
マジンガーZのオープニングシーンを検証のため何度も繰り返し見る広報室のメンバー。しかし、ある時いつもとは違うパターンを発見して戸惑うメンバーたち。企画がかなり進んだところで、横にスライドするのを発見して驚くメンバー。見なかった事にしたいところですが、一から設計し直すベッショの熱意は、感動ものです。
トンネルマンのヤマダの専門は掘削。格納庫の掘削について熱い語りを繰り広げます。まぁ、身近によくいる土木の技術馬鹿です。仕事以外の時は、ボソボソと小さな声でよく聞こえないぐらいだったのが専門分野になると3オクターブくらい声が上ずり、立て板に水のように滑らかに次から次へと言葉が出てきます。
前田建設が実際にやっているトンネル現場に乗込み撮影。写真でしか見たことがない掘削マシンが実際に稼働しているところをみるのは感動ものです。さらに実際のダム設備は、驚くほどの迫力で圧倒されます。
映画最後のエンドロールは、凝りまくっていてこれだけで一つの作品です。動画サイトで視聴可能なので、観賞をお勧めします。主題歌は、氣志團の「今日から俺たちは!!」。とてもいかしてます。
(https://www.youtube.com/watch?v=B5ovXPiKAIc)
映画化される前の2004年11月に、『前田建設ファンタジー営業部1 「マジンガーZ」地下格納庫編 』(幻冬舎文庫)として、発売されています。さらに第2弾企画の「銀河鉄道999」高架橋編 も、文庫本で登場しています。
一読の価値ありです。