今回は、コンクリート配合設計の手順を説明し、実際に使用したコンクリートの配合計画書を参考にして、配合設計の計算を行いたいと思います。
まず、コンクリートを製造するにあたって、使用する材料をどれくらいの割合で使用するのかが重要となります。このような材料の割合や、使用する数量を配合と呼んでいます。コンクリートは、「セメント」、「骨材」、「水」、「混和材」等より構成されています。これらの割合、使用数量を配合と呼び、配合の内容を決めることを「配合設計」と呼んでいます。
配合設計は、総じて上述の内容を基に、コンクリートの施工性や強度を考慮し、コンクリートの品質を決定する事といったら良いでしょうか。
配合設計は、同じ品質のコンクリートが製造できるような説明書のようなものでなければなりません。よって、その手順が決められています。
1.配合設計の手順
①粗骨材の最大寸法の設定
②スランプ、空気量の設定
③配合強度の設定
④水セメント比の設定
⑤単位水量の設定
⑥単位セメント量の設定
⑦細骨材、粗骨材量の設定
⑧試し練り
⑨試し練り結果の確認、配合設計の完了
粗骨材最大寸法は20㎜、25㎜または40㎜と定められています。粗骨材とは、5㎜ふるいに85%以上通過しない骨材をといいます。ちなみに、10㎜ふるいを100%通過し、5㎜ふるいを85%以上通過する骨材を細骨材と呼びます。構造物の種類、鉄筋の間隔やかぶり厚などを考慮し、最大寸法が大きいほど、所定のスランプを得るのに単位水量が少なくなります。
スランプは可能な限り、小さい値が良いかと思われます。空気量についても大きな値となると、材料分離、凍害の懸念が生じます。以前はスランプ8cmが設計段階で決められていることが多かったですが、国土交通省におけるスランプ規定の見直しの動きによって、土木構造物においてもスランプ12cmが用いられることが多くなってきました。私が使用するコンクリートは、大体スランプ8㎝または、12㎝、空気量A=4.5%あたりです。
配合強度と似た言葉に「呼び強度」と「設計基準強度」があります。土木においては以下のような認識となっています。
したがって、
配合強度=設計基準強度×割り増し係数 |
となります。
割増係数はプラントごとに異なります。
コンクリートの強度は一般的に圧縮強度を指します。現場における環境条件等の強度のばらつきを考慮して定めます。圧縮強度の試験値が設計基準強度を下回る確率が5%以下となるように設定します。
水密性を考慮するコンクリートでは、耐久性、水密性及び、圧縮強度に基づく水セメント比のうち、最小値を設定します。ただし、水セメント比を必要以上に小さくした場合、セメント量が多くなり、温度によるひび割れの懸念が生じます。水セメント比は一般的にW/C≦65%とします。
コンクリート標準示方書では、単位水量は175kg/㎥以下となっています。コンクリートは水量が少ないほど、密なコンクリートとなる為、所定のスランプが確保できる範囲で、可能な限り小さくなるように設定します。
単位セメント量は水セメント比と単位水量から計算し算出します。必要に応じて混和材を添加しコンクリートの品質改善を行います。土木構造物に用いられるコンクリートにおいて、単位セメント量C=280kg/㎥程度とされています。
単位水量、単位セメント量が設定されると、全骨材の絶対容積が算出できます。全骨材量と細骨材率(s/a)により、細骨材、粗骨材の絶対容積が求まります。細骨材率はワーカビリティと大きく関係しています。細骨材を少なくすると材料分離を起こし、多くすると乾燥収縮によるひび割れの発生などの、品質低下が懸念されます。よって、最適な細骨材率を設定しなければなりません。
配合設計の手順により、計算で求めたコンクリートが、必要な品質を確保しているかどうか、実際に試し練りを行い、品質目標との差を確かめます。
試し練りの結果、品質目標が確認された場合、配合設計は完了となります。所定の品質が得られなかった場合、配合の内容を補正することで所定の品質確保を得るようにします。
次に実際に使用したコンクリートの配合計画書を参考に、配合計算をしたいと思います。
実際使用したコンクリートの配合計画書
上記の手順に基づき、最終的に下記項目の値を求めて行きたいと思います。
計算方法として、2種類(細骨材率方式、単位粗骨材かさ容積方式)ありますので、各々計算したいと思います。
1-1 粗骨材の最大寸法=25㎜
1-2 セメントの種類=高炉セメント(BB)、設計スランプ=8㎝ 設計空気量A=4.5%
1-3 配合強度21N/㎟(割増係数により、m=21+2×2.5N/㎟=26.0N/㎟)
1-4 セメント比を、強度(m)と水セメント比(W/C)の関係式より算出します。
m=-9.6+20.1×(C/W)、配合強度m=26.0N/㎟より、(C/W)=1.771
よって、水セメント比(W/C)=1/1.771=56.0%≦60%
1-5 単位水量W=151kg/㎥
1-6 単位セメント量C=W/(W/C)☓100=151kg/㎥/56.0%☓100=270kg/㎥
1‐7 ここより計算方法が2種類に分かれます。
(1)細骨材率方式(細骨材率を基に算出します)。
まず、コンクリート1㎥の骨材全容量を算出します。
空気量A=4.5%、細骨材率(s/a)=38.5%、セメント密度=3.05g/㎤、
水密度=1.00g/㎤、細骨材表乾密度=2.58g/㎤、粗骨材表乾密度=2.62g/㎤より
・1㎥あたり骨材の全容積
V=1000L-(水の容積+セメントの容積+空気量の容積)
=1000L-(151kg/㎥/1.00+270kg/㎥/3.05+45(1000×4.5%))
=1000-(151+89+45)
=715L
・細骨材容積=全骨材容積×(細骨材率/100)
=715L☓38.5%=275L
・細骨材量=275L☓細骨材表乾密度2.58g/㎤
=710kg/㎥
・粗骨材容積=715L-275L=440L
・粗骨材量=440L☓粗骨材表乾密度2.62g/㎤
=1153kg/㎥
(2)単位粗骨材かさ容積方式(粗骨材のかさ容積を基に算出します)。
空気量A=4.5%、粗骨材かさ容積0.677㎥/㎥、セメント密度=3.05g/㎤、
水密度=1.00g/㎤、細骨材表乾密度=2.58g/㎤、粗骨材表乾密度=2.62g/㎤、
粗骨材単位容積質量1.70kg/Lより
・粗骨材量=1.70kg/L☓1000×0.677㎥/㎥=1151kg/㎥
・細骨材容積=1000-(水の容積+セメントの容積+空気量の容積+粗骨材の容積)
=1000L-(151kg/㎥/1.00+270kg/㎥/3.05+45(1000×4.5%)+1151kg/㎥/2.62g/㎤)
=1000-(151+89+45+439)
=276L
・細骨材量=276L☓細骨材表乾密度2.58g/㎤
=712kg/㎥
・細骨材率(s/a)=276L/(276+439)
=38.6%
上記手順1-7により、計算、算出された結果が試し練りによって、要求されるコンクリートの品質が確保されていれば、配合設計の完了となります。確保されていなければ、1-7により、配合の内容を補正します。ここで注意したい点は、コンクリートの配合は、1つの項目を満たすように補正を行うとほかの項目が条件を満たさなくなるというようなことが起こります。
例えば、水セメント比を大きくした場合、単位セメント量が小さくなり、単位水量が増えるため、コンクリートが柔らかくなりスランプが大きくなります。スランプ値を同値にするためには細骨材率を大きくしなければなりません。または、骨材において、自然の骨材(川砂など)より再生骨材(砕石など)は、骨材のすきまが大きくなり、必要な単位水量が大きくなります。
先に述べました様に、コンクリートの施工性や強度に合わせた配合としなければなりません。その他にもひび割れ抵抗性・耐凍害性・アルカリシリカ反応抑制対策・施工性の照査をして配合の決定に至ります。
私がコンクリート施工に従事している箇所は、住宅地や市街地での施工の他に、山間部や田んぼなどのほ場も多いです。特に山間部においてはミキサー車運搬距離が長い時もあり、またはほ場内では舗装されていない砂利道を走ることもあります。このような場合、コンクリートブリージング現象を起こしてしまい、スランプ値に影響を及ぼします。
対策として、コンクリートを製造する際に混和剤(AE減水剤など)を添加し、コンクリートの施工性を高め、強度や耐久性を改善する工夫を行います。このように、上記計算にて算出した、一般的な配合を「標準配合」と呼び、現場の状況に応じて補正した配合を「現場配合」と呼びます。標準配合と同等の品質のコンクリートになるように現場配合で補正をしています。
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