今回は、私が現場代理人として従事した、新潟県の「(仮称)広域農道迂回路工事」の現場をご紹介したいと思います。
工事名 | (仮称)広域農道迂回路工事 |
工期 | 令和元年6月~令和2年5月 |
工事数量 | 掘削工V=2400㎥、路体盛土工V=150㎥、路床盛土工V=550㎥、法面整形工 A=1500㎡、高密度ポリエチレン管φ1200L=15m |
工事は、新潟県の越後平野の治水事業の一環で、現道(農道)の嵩上げ工事を行う前段として、迂回路を盛土施工するものでした。迂回路の施工場所は、越後平野に広がる広大な田園地上で、工事を計4回程度に分けて施工するものでした。
私が担当した工事はその内の3回目で、現場代理人として従事しました。田園地上での道路施工のため、計画段階から軟弱地盤対策が施されており、緩速盛土、サーチャージ盛土、バーチカルドレーン、プレロード工法など、様々な工法が取入れられていました。
また、現場周辺には温泉地も存在します。そのため、県内外からの観光客も多く、農道と言いながら大型バスなども通行するバイパス的な道路でもあり、迂回路の施工は必至でした。そういった状況での迂回路施工だったため、軟弱地盤対策に加えて、盛土後のすべり破壊などの安定管理も日々測定することになっていました。
施工箇所近辺の田園風景
安定管理は、「沈下量」と「変位量」を測定することになっていました。
沈下量については、測点ごとに沈下板が設置されており、残留沈下量を予測し、迂回路としての供用開始の合否判定に用います。変位量については、迂回路法尻部に変位測定杭が設置されており、水平変位及び鉛直変位を測定することになっていました。
測点は、ほぼ毎日約50点を測定。データを表作成し、合否判定の資料としましたが、測量作業から表作成まで半日近い時間を要したため、現場代理人としての他業務に充てる時間を作るのが容易ではありませんでした。
測量作業時間を低減するために、以下の事を試行しました。
■KBM、及び基準点の増設置
現場内で全体的に網羅する既知点は存在しましたが、更に倍増し、杭間移動を低減するように努めました。また、場合によっては測量会社に協力してもらい、他業務に充てる時間を作りました。
沈下板設置状況
測量結果表
上記の測量結果により、沈下が安定していない箇所が判明しました。軟弱地盤対策を施したとはいえ、田園地上のため沈下が止まらない箇所も存在しました。その現状を踏まえ、サーチャージ盛土工法が採用され、変更追加となりました。当初は、前回と同様に、盛土工法による余盛土は場外残土搬出でしたが、施工箇所内での場内移動による盛土となり、大幅な運土計画変更が生じました。また、運土計画変更の結果、現場内の土量では不足土が発生し、購入土も視野に入れた土量計画を変更することになりました。
土量運搬計画などを以下のように試行し、対策を講じました。
■運搬路の確保
施工箇所は大部分が盛土、または切土となっており、凹凸のあるダンプトラックなど、車運搬路にはやや難のある箇所でした。そのため、盛土の影響が最小限になる箇所に運搬路を設置し、敷鉄板(6m×1.5m)を敷設。場内で円滑な土量運搬ができるように対策を講じました。
■土砂資料の採取、土質試験の実施
不足土対策として、購入土の案も浮上しましたが、現場内発生土砂で不足土の解消が可能かどうか試行しました。現場内には概ね4種類の発生土が存在していました。そのうち2種類の発生土で盛土を施工していましたが、残り2種類の試料採取を行い、土質試験を行いました。試料は、現場発生土及び発生砂の2種類。盛土材定数、内部摩擦角φ=25度、粘着力C=30kN/㎡、単位体積重量γ=19kN/㎡を満足することが条件でした。結果、満足することが確認されたため、盛土材として使用可能となりました。
敷鉄板敷設状況
工事の盛土施工は夏季から開始しましたが、追加変更もあり、秋から冬季にかけての施工を余儀なくされました。新潟地域の秋と言えば日本海側特有の雨期で、冬になれば大雪になるのが必至です。盛土材として使用している土砂も、含水した状態では盛土だけでなく、施工不可となることが懸念材料でした。また、新潟県は農道をあまり除雪しないことから、施工箇所までの通勤路も除雪が必要となります。そのため、工期内で竣工が可能かどうかという懸念が発生しました。
雨雪対策として、以下の対策を講じました。
■シート養生の徹底
盛土材料にはシート養生を徹底し、含水対策を行いました。
シート養生による対策
■排水管の設置
盛土箇所の排水処理対策として、ドレーン管φ100を設置しました。既設排水路まで延長し、同様に含水対策を講じました。
ドレーン管による排水処理対策
現場付近の積雪状況
現場付近の積雪状況
現場までの通勤路
以上により、私なりに工夫・施行した結果、工期内の竣工はできました。ただ、新潟に住んでいる以上、雨及び雪対策を講じた施工は必至で、今回の工夫した点も当然のこととなります。
また、当迂回路はあくまで「迂回路」であり、現道の嵩上げ工事が完了すると、撤去しなければならない構造物です。そういった意味で、少し寂しい感じや虚しい感じがある中での工事でしたが、普段と同様に従事したつもりです。もし、新潟に来る機会があれば、施工箇所を確認してもらい、指摘などいただきたいところです。
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