今回は、私が発注者支援監督員として従事した、滋賀県の「(仮称)樹木移植工事」の現場をご紹介したいと思います。
工事名 | (仮称)樹木移植工事 |
工期 | 平成12年3月~平成12年8月 |
工事数量 | 樹木移植工(コナラ、クヌギ、アカマツ、ヤマザクラ N=20本)、マルチング工 一式 |
本工事は、滋賀県の約100haからなる工業団地造成事業の一環として行われました。里山を造成した後、計画道路の景観形成として、大型重機を使って既存樹木(大径樹木)を根鉢ごと計画道路沿線に移植するという工事でした。既存樹木をマルチング材として現地破砕し、移植箇所の表面を敷き均すことにより、地域の里山景観を残しつつ、環境共生の開発を行いました。
施工箇所は、関西圏-中部圏の中間点に位置しています。そのため、両都市圏の経済、流通を担うという意味でも、緑化景観を重視した今回の工業団地造成事業は必至でした。
選定された移植樹木までの運搬経路の設置は、造成施工業者が並行して実施することになっていました。選定樹木は造成地内に点在していたため、造成工事の進捗を確認しつつ、移植が可能な日を調整しながら施工を進めました。造成工事の進捗に左右されるため、作業が断続的になり、なかなか進捗しない工事だったと記憶しています。
また、運搬経路を利用した樹木移植の際は、大型重機を使用するため、造成面(特に法面部)を損傷することが多々ありました。損傷箇所を何度も何度も補修しましたが、補修後にさらなる損傷箇所を生じるという状態でした。
工程調整を行う上で、以下のことを試行しました。
■工事連絡協議会の開催
近接する施工業者間で工事連絡協議会(以下:協議会)を週に1回の頻度で開催しました。樹木移植工事、造成工事の施工業者だけでなく、近接する業者間でも打合せ及び、工程調整を行い、双方の工事進捗に影響を及ぼさないように調整を行いました。
また、造成工事により、樹木移植工事が不可能な日については、現場内に樹木破砕機を搬入して、樹木破砕、マルチング工を行うことで、断続的作業を低減することに努めました。
施工箇所は、信楽焼に代表する陶土を形成する箇所でもあったため、粘土層が確認されました。そのため、根鉢部の排水性、通気性を考慮した樹木移植が求められました。
根鉢部の排水性、通気性を確保するため、以下の対策を講じました。
1.暗渠排水管の設置
根鉢部に暗渠有孔管を設置しました。付近の側溝まで布設し、根鉢内に滞水しないよう、対策を講じました。
2.土壌改良材、通気管の設置
根鉢内の排水性の向上及び、根腐れ防止として、黒曜石パーライトを敷設しました。また、根腐れ防止による通気性確保として、酸素管を設置しました。
現場付近の信楽焼
以上により、私なりに工夫・施工した結果、地域の里山景観を残しつつ、環境共生の開発をするという観点から、納得できる樹木移植ができたと考えます。私がこの工事に携わった平成10年頃、大型重機による樹木移植は、まだ駆け始めの施工方法だったと思います。本来の樹木移植における、根回し、根巻きなどの作業を省略でき、尚且つ、「高木移植が可能」、「移植時期を問わない」、「活着率が高い」といった観点などから、優れた樹木移植工事でした。
令和時代になった現在、施工箇所は枯損木もなく、工業団地内でありながら、里山景観を残した計画道路の役割をしっかりと担ってくれています。
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