現場紹介「側溝整備工事」

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今回は、私が現場代理人として従事した、新潟市の「側溝整備工事」の現場をご紹介したいと思います。


工事の概要


工事名
(仮称)側溝整備工事
工期
平成24年4月~平成25年3月
工事数量

自由勾配側溝 L=400.0m L型側溝 L=100.0m 雨水排水管(HP管φ700、鋼管φ600)L=70.0m 集水桝N=15基 舗装工A=500㎡

当工事は、新潟市内の道路拡幅工事に伴い、既存道路歩道部に雨水排水を整備する工事でした。施工延長はL=300.0mで、上流部に自由勾配側溝、下流部にL型側溝及び雨水排水管を設置し、既存排水路に雨水排水を接続する工事でした。

施工箇所は新潟市中心部にあり、商業施設、住宅地などが存在し、道路状況も一般車両、歩行者、保育園送迎バス等、交通量の多い道路だったため、沿線住民及び一般車両への安全対策が求められました。


施工箇所付近のバイパス。

アクセス面においても利便性向上を担っていました。


苦労した点①


 隣接工事との工程調整

前述の通り、施工箇所は車道部整備工事との並行作業でした。車道部施工においては、交通規制がやむを得ない状況でしたが、交通量の多い道路で渋滞が予想されましたが、夜間工事は沿線住民への騒音等を配慮して行わず、昼間による施工にしたとの事でした。

このような状況下だったため、当工事と車道部整備工事と打合せを密に行うのは必至だったのです。また、同様に水道、ガス等による埋設管布設工事も同箇所に存在した訳です。

工程調整を行う上で、近接する施工業者間で工事連絡協議会(以下:協議会)を開催しました。協議会は週1回の頻度で開催。近接する業者間で打合せ及び、工程調整を行い、全体的な工事進捗に影響を及ぼさないように調整を行いました。前回記事の樹木移植工事においても協議会の明記をさせてもらいましたが、工程調整における協議会開催は、当然ですね。

協議会開催の結果、以下の内容に基づき調整を行いました。

  1. 双方の工事において、近接にならない様、調整、施工する。
  2. 本線より少し離れた枝線部施工があれば、その間を利用し、まとめて本線施工する。
  3. 車道の規制(片側交互通行など)を可能な限り低減する。
  4. 沿線住民に配慮した(お車の出入りを可能にする等)施工を行う。

特に、車道部整備工事との工程調整については、ほぼ毎日打合せを行いました。その結果、当工事歩道部を「車道」として迂回通行することになったのです。



工事平面図


工事断面図


苦労した点②


 沿線住民、一般車両への安全対策

前述の迂回路設置に際し、安全対策が最優先に求められました。歩道に車両が通行する訳ですから、沿線住民、一般車両はもちろん、関係機関(警察署、保育園)とも打合せをして、周知徹底する必要がありました。

実施した各所への対応は以下の通りです。

沿線住民
工事PRあいさつ文を作成。工事内容、工事期間、通行規制を明記した紙面作成を行い、各ご自宅へ説明を実施。
一般車両
周辺主要道路に規制迂回予告看板を設置。施工箇所道路をなるべく通行しないよう看板に明示。
警察署
打合せを踏まえた道路使用許可証を作成。
保育園
送迎バスの送迎時間の確認を実施。

車道から歩道への乗り入れは、仮舗装による段差処理をしました。住民への取付道路には、カラーコーン、単管バリケードで歩行者通行道路を確保しました。交通誘導員は歩行者誘導の他に、乗り入れ部、住民出入り口、徐行誘導箇所に配置する等、可能な限り対策を取りました。


苦労した点③


 工事への安全対策

当施工箇所は多くの埋設管が存在しました。水道、ガス、電気埋設管は協議会により確認済みでしたが、NTT電話線については別途確認する必要がありました。確認した結果、新潟県庁につながっているNTT埋設管ケーブルがあることがわかりました。万が一、ケーブルを切断損傷した場合、県庁の電話がストップして大変な事になると、いつも以上に気を付けて施工するように強い口調で注意喚起されたことを覚えています。

 まず、歩道部迂回路を設けて試掘施工しました。試掘の結果、ケーブルに巻きコンクリート設置を確認。ケーブルと施工する排水管との離隔は300㎜あり、離隔の確保については問題ありませんでしたが、コンクリートと排水管が接触することがわかりました。そこで、排水管設置位置を500㎜コンクリート面と反対側に移動設置することを検討し、NTT及び発注者からの了解を得ました。また、GL-1.0mにおいて湧水が確認されました。試掘によって、排水管設置時に簡易ウェルポンプ等、水替え工の準備ができるなど、あらかじめ対策できたのは良かったです。


苦労した点④


 沿線住民からのクレーム

以上のように、工程調整、安全対策を講じましたが、それでも沿線住民からの苦情、クレームを沢山受けました。クレームについて数多くいただいた内容は、

  1. 歩行の際、通行車両が近くて危ない。
  2. 歩道への迂回路がわかりにくい。
  3. 工事が邪魔して車が車庫に入れない。
  4. 境界杭が動いた様に思える。

番号1~3については、各ご自宅に再度工事内容と期日等の確認を了解いただく為にわかりやすい説明を行いました。迂回路についても、わかりやすい様に、矢印板や電光掲示板の設置、交通誘導員の増員により改善を行ったところです。4については、境界杭の確認を測量会社に依頼し、施工完了時に境界杭の復旧、現地立会を行いました。施工時においては、自由勾配側溝を官民境界より100㎜道路側に移動する事で境界杭損傷防止を行いました。

 

自由勾配側溝断面図(官民境界より100㎜道路側に移動する)


最後に


以上により、当工事においては、協議会を開催した施工業者の皆さんはじめ、発注者及び埋設管管理者と一体となって全力で取り組んだつもりです。それでも、数多くのクレームを受け、その度にご自宅まで謝りに行きましたが、その都度丁寧な対応を心掛けました。また、今回の結果を踏まえ、近接施工の際にはどのような対応を取るべきなのか、準備工において考えるきっかけとなりました。ここの現場を車で通る度に、当時の辛い事が思い出されますが、その経験を教訓にして、工事を進めています。

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この記事のライター
愛媛生まれ、大阪育ち。
瀬戸大橋の無かった1980年代小学生時、「おばあちゃん家まで車で帰れたらいいのにナァ」の気持ちから、橋とか道路を作りたい気持ちが芽生え、土木の学校を卒業し、現在は新潟の小さな会社で現場監督をやっています。
ちょっとした側溝工事や下水工事、新潟では重要な農業土木など、地元の皆さんに喜んでもらえるような工事を日々進めております。
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