映画「バーニング オーシャン」~安全について~

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映画「バーニング オーシャン」は、2017年に公開されたアメリカ映画。2010年メキシコ湾原油流失事故が題材となった災害パニック映画になります。原油掘削工事の事故を扱った映画で、地味なのか人気がなく3週間ほどですぐに打ち切りになったため公開当時は、見逃してしまいました。このほどアマゾンプライムビデオで無料視聴が可能となったので、さっそく鑑賞しました。

映画は、事故が起きるまでの様子が丹念に描かれ、事故が起こり火災が起こって災害から逃れる様子を見事に描き切っていました。アクションとか恋愛の映画ではありませんが、さすがエンターテイメントの作品なので最後まで飽きることなく楽しめました。


メキシコ湾原油流失事故とは



映画の題材となったメキシコ湾原油流失事故は、2010年4月20日の夜10時頃に海底油田を掘削作業中に海底油田から逆流してきた天然ガスに引火爆発して災害が発生したのです。

場所は、メキシコ湾沖合80kmところに浮かぶ石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」で、水深1522mの海底油田。現場の作業員は、126名。11人が行方不明となり17人が負傷。爆発から3日後の4月22日には、ディープウォーター・ホライズンは沈没してしまう大惨事となったのでした。

事故後、折れたパイプから多量の原油が漏れ海洋汚染されましたが映画では、そこまで描かれてはいません。

海上に漂う漏れ出した原油の帯は、長さ200kmで幅120km。史上最悪の原油流出事故になりました。またアメリカのルイジアナ・アラバマ・フロリダ・ミシシッピーの広範囲の海岸に漂着し、漁業・観光・自然などに多大な悪影響をもたらしたのです。


BP社がこの事故処理にかかった金額は、沿岸清掃費に141億ドル、そして訴訟和解金など約460億ドルもの巨費がかかりました。BP社は、自社で賠償基金を設けていたため基金からすべて支払われその年の収益は赤字とはなりませんでした。さすが世界に名だたる巨大企業。リスクもしっかり考えて自社賠償基金も設けていたのは流石ですね。


バーニング オーシャン あらすじ



オープニング場面は、法廷での事故の様子を聞かれるところから始まります。

続いて、出張に出かける前の家族との団らんが描かれ、ヘリポートでディープウォーター・ホライズンに向かいます。ここから3週間、掘削施設に缶詰めになって仕事をするのです。工期はすでに43日の遅れになっていて、もはや余裕はありません。セメントテストはやったものの十分なテストではありません。それに代わる負圧テストを行います。

負圧テストの結果は、車が真っ二つになるほどの高い圧力。通常では安全性に疑問がある数値でしたが、BP社の元請け職員は都合の良い解釈をして掘削作業を開始してしまうのです。すべては、遅れていた工程を取り戻すために掘削作業が開始されました。

掘削作業開始からまもなくパイプから泥水があふれ、作業場は今までなかったほど泥水が噴出。そして、パイプから逆流したメタンガスが引火していまい大爆発!ディープウォーター・ホライズンは、火の海に。SOSの無線を入れるもBP社の元請け職員ヴィドリン(ジョン・マルコビッチ)から止めろと命令されました。しかし、施設の爆発炎上は止まりません。火災は広まり、乗組員すべて救命ボートで避難しなくてはいけなくなりました。

ようやく、艦内放送で避難を伝えSOS無線を入れたのです。沿岸警備隊などすぐに対応しましたが洋上に浮かぶディープウォーター・ホライズンに救助に向かうには時間がかかります。救命ボートに乗り込めなかった人たちは、海に飛び込むしか生き延びる方法はありません。ディープウォーター・ホライズンの周りは、漏れ出した原油が引火して火の海です。施設の一番高いところへ行き、遠くへ飛び込めば生き残れるかもしれません。無線で、SOSを伝えた女性職員アンドレア(ジーナ・ロドリゲス)と掘削技師マイク(マーク・ウォールバーグ)は、施設の一番高いところへ向かいます。二人の運命は、、。


事故はなぜ起こってしまったのか



すべては、工期の遅れです。安全第一の建設現場ではなによりも安全が優先されなければいけません。しかし、企業は利益優先です。利益を上げなければ、会社は存続してゆきません。

現場を管理する私たちは、利益も上げなければいけないし、安全も管理しなければいけません。まぁ、会社と現場の板挟みで常にモンモンとしている現場監督は多いでしょう。私もその一人であることは間違いありません。しかし、事故になるかもしれない悪天候での作業は、利益よりも安全性を優先して中止にすべきでしょう。まぁ、どの程度の悪天候で作業中止かは経験によるところが多いのですが。常に、過信は禁物であると心しておくべきでしょうね。

この記事のライター
元は測量士で、今は土木の現場監督。北海道南西沖地震をきっかけに施工の現場管理へ転向。現在は、市民生活に欠かせないインフラの下水道工事を主に行っています。
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