建設業において少子高齢化や就職者不足対策のため、ロボット(AI)を活用した業務効率化が進んでいます。そんな中、土木におけるトンネル内作業や掘削、墨出しや溶接といった現場作業の他、作業所内の書類整理など、コロナ禍によりその動きがさらに加速しています。
建設コンサルタントとして働いている私が大切だと思うのは、現場の業務でロボット化できそうな作業を認識し、開発を進めるだけでなく「いかに普及させていくか」という点です。作業者の負担が減れば仕事へのやりがい・定着率にもつながると考えますので、今回はそういった清水建設、鹿島建設、竹中工務店の3社の事例と、各社が協同で進めている取り組みについてご紹介します。
清水建設のロボット(AI)を活用した事例は以下が挙げられます。
トンネル覆工作業や土の掘削は職人やオペレータの力量を必要とするため、ロボットによる掘削面の可視化などが重宝します。他にもコンクリートのインフラ構造物をドローンで計測し、劣化状況を診断・予測できる解析技術も進んでいます。
ドローンの計測は、インフラの劣化状況の診断を人の手でやるより早く、正確に実施することで事故が減らせるのではないかという点から着目しました。橋の点検がしっかり実施できれば未然に崩落を防げると思いますし、人手不足により点検が進まなかったという事態も回避できるのではないかと思います。
上記の他に、清水建設は各作業所などの内勤業務の効率化も進めています。
日立ソリューションズと協力し、データ作成や集計といった事務作業15%削減を目指しています。具体的には運用スケジュール等の自動化や、各ロボットの利用用途や開発の管理に使われています。ロボットに指示を与えることで、繰り返し行う単純作業における人的ミスを防ぐというメリットがあるため、今後もテレワークの増加と伴にこうした効率化も進んでいくようです。
現場の作業所などで単純作業を減らして時間に余裕ができれば、ロボットではなく人にしかできない作業に注力できるようになったり、施工に関わる工法や重機について学んだりと時間を有効活用することが可能です。人材育成を考える上でも大切だと考えたため、引き続き建設業におけるRPAの活用についての動向を追っていきたいと思いました。
鹿島建設は以下のようなロボットの活用を進めています。
四足歩行型ロボット「Spot(スポット)」は遠隔操作で掘削箇所の撮影、設備計器の点検を行います。現場の巡回、進捗や安全を管理し、トンネル工事等の土木の現場で活用されています。他にも、溶接作業等をロボットに任せることで技能者不足を解決しようとする取り組みも進んでいます。
私が特に気になったのは、地質の可視化をリアルタイムに行い、切羽の崩落事故を防ぐという取り組みです。事務所や本社にいながら確認できれば作業者の負担が軽減するだけでなく、精度が高ければ災害を防ぐことも可能だと思いました。こうしたICTの活用が増えていけば危険な現場での安全性も高まるため、今後も活用が必須だと思いました。
鹿島建設は2024年度までに生産性を3割向上させることを目標として掲げているため、今後の動きにも注目です。
竹中工務店は以下のようなロボットの活用を進めています。
自走式墨出しロボットは墨出しの作業を4時間で約100平米を行える機械であり、生産性は従来の3倍です。ロボットの特徴は重さが17キロと軽量であり小型化で安価という点でしょう。床を清掃する自律走行吸引型ロボットは、四隅に配置したカラーコーンを検出して清掃するため、日々の清掃時間を減らすことが可能です。
墨出しは単純作業の繰り返しとなる箇所が少なくないため、ロボットで正確、かつ確実に作業が進められれば人手不足の解消にも役立ちます。ロボットに任せた箇所も確認が必要だと考えますが、ロボットでまかなえない箇所は人が行ったり、ロボットを上手く活用することで作業の効率化が図れるのではないかと思いました。
清水建設、鹿島建設、竹中工務店のロボットやシステムの導入例を紹介しましたが、この3社は協力体制を築き施工ロボット普及のために協業を始めています。
理由は、個々の会社でロボットを製作すると本体価格が高くなり、コストの回収が難しくなるためです。多くの作業所や現場にロボットを普及させ、建設業全体の業務効率化、少子高齢化や就職者不足の対策のためにも共同でロボットの開発を進めています。紹介した既存のロボットを相互利用するだけでなく、今後も新たなロボット開発が進むとのことで各社の動きに注目です。
全体を通して「こうした作業であればロボットに任せられるのではないか?」という現場の目線を大切にした例が多かったです。そのため、現場の声を大切にしつつ協業によってロボットやAIの普及が進んでいくことを期待します。作業者と開発者、そして各社が協力して建設業全体の利益になるのが理想だと思いました。
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