土木業界におけるVRやARの活用が広まる中、どのような機能があるのか知らない方も多いと思います。VRは専用のヘッドセットをつけて見回すことでオフィスや離れた場所からも現場の様子が確認でき、ARはタブレットやスマートフォン越しに対象物を映すことで色々な情報が表示されます。
今回はそういった機能を持つVRやARが、具体的にどのように活用されているのか、道路やその他の事例、体験談で紹介したいと思います。
道路計画において「どうすれば事故を減らせるか?」という検証では、VRを使った走行シミュレーションが役に立ちます。
走行シミュレーションではまず、3Dモデルで道路や周辺地形、周囲を走る車を作成します。その後、VRを使って車と同じ速度で運転手の目線を再現します。実際の車と同じように走行することで、並走する車や周りにどのような危険があるか検証できます。VRをつけると、「スピードがどれくらい出しやすい道なのか」「左右が見渡しづらい曲がり角か」など、首を振って周囲を見回して確認ができます。また、昼と夜を切り替えたモデルを作成することで、見通しの良さや周辺の明るさの違いなどが比較でき、事故を減らすためには何が必要なのかを検証できます。そうして標識や道路の区画線、照明などを増やした後、再び走行のしやすさをVRで確かめることで、設計時の信ぴょう性につながるというメリットもあります。
設計時には、図面に標識等の情報を加えるだけでは「本当に事故が減るのか?」と疑問に思われることがありますが、VRで実際の情報に近い映像を確認することで信ぴょう性が出てきます。特に拡幅工事など大掛かりな工事に発展する場合は、周辺住民への説明が大切。VRを使用した説明会も活用されつつあります。
ARは、道路標識などを設置する際の配置の検討に役立ちます。スマートフォンやタブレットで配置する位置をカメラで映し、ARで標識の見え方をチェックすることで「木の葉で見えづらくならないか」「標識を立てる場所の近くに構造物などがないか」など、図面には無い情報を確認します。そうしてARを使うことで現場施工から設計への出戻りが減るというメリットがあります。
また、ARの標識などの情報も一度登録すると他の現場でも使えたりするため、道路周りだけでなく重機の配置の確認等にも重宝します。
VRを頭につけると、目の前に現場や施工後の映像が見えるため、住民説明会の他に上長や国交省の方との擦り合わせにも活用されています。3Dモデルをモニターで説明するだけだと、実際の距離感や大きさが分かりづらいですが、映像で見てもらうことでかなり伝わりやすくなります。
私がVRを使用して思ったのは、説明を受ける相手が3Dの映像に酔わないようにVRの使い方や動きについて分かりやすく伝えるのが大切だと感じました。また、リモコンで歩く操作は難しいと感じる場合もあるため、説明側で行う方が良い場合もあるようです。
ARは測量でも活用されています。簡単な距離や面積を測るソフトから土量の確認ができるソフトまで色々と機能が増えていますが、特に土量の確認は現場でも重宝します。例えば、盛土に専用のポールを配置することでタブレットには自動的に土の数量が表示されるため、測量時に人数を必要とせず、ほぼ正確に測れるというメリットがあります。ARの画面上で可視化されると分かりやすいことから、最近では配筋の組み立ての確認にも使われています。
ARはソフトを各社で開発していることが多く、使用する際には無料のアプリや有料のものまで様々です。
VRの実機は機能や互換性がソフトによって様々です。例えば福井コンピュータ株式会社の「TREND−CORE VR」が建設や土木業界で使用されていますが、点群データがあればVRをセットするだけでモデルを確認できます。私が「TREND−CORE VR」を使用した際には両手にリモコンを持ち、行き先を指定して動くタイプでしたが感覚的に動けたのが印象的です。周りを見渡す時にはゆっくり動く方が見やすく、実物の橋梁の大きさ等を把握するのに便利でした。
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