実際の業務の流れ(1)公園実施設計業務編

  • LINE

前の記事   次の記事


建設コンサルタントは、社会資本整備のための企画・調査・計画・設計・施工管理・維持管理などを行う役割を担っていますが、一口に社会資本といっても、河川や道路、上下水道から鉄道、橋梁、公園まで多くの分野があります。各分野でフェーズ(調査・計画・設計など)ごとに業務が発注されるため、建設コンサルタントが担う業務の種類は非常に多く、実務でも幅広い作業を必要とします。

そのため、建設コンサルタントに入社して数年間経つまでは、担当する業務のほとんどが初めて経験する業務になり、業務の流れや内容を理解するだけで精いっぱいになってしまいがちです。

そこで今回は、筆者の実体験をもとに、公園実施設計業務について、実務に即した業務の流れを紹介します。造園部門にあたる業務ですが、道路や鋼構造及びコンクリートなどの他部門にも通じる部分があるため、建設コンサルタントで働く若手技術者の方の参考になれば幸いです。


公園実施設計業務



公園や公共建築物の設計が完了するまでには、①基本構想、②基本計画、③基本設計、④実施設計の4段階があり、実施設計は設計の最終段階にあたります。実施設計を終えた段階で着工できる状態にする必要があるため、実施設計の主なゴールは、「詳細な図面の作成」と「数量計算書の作成」、「工事費の算出」です。

以下より実施設計の流れを解説していきます。


 ①現地調査

まずは、現地がどのような状態であるかを確認するための現地調査を行います。上下水道や大きい構造物、水路など、設計をするにあたって詳細な検討が必要なものを重点的にチェックします。また、撤去構造物の図面と数量計算書の作成に向けて、撤去構造物の寸法や数量を計測します。


 ②設計検討

現地調査を終え、現地の様子を把握した後は、設計検討に入ります。設計検討は、実施設計業務の中で最も重要な工程で、数か月以上の時間をかけて、関係各所と協議をしながら進めていきます。デザインの決定から構造物の構造計算まで、図面・数量を作成するために必要な項目を検討していきます。

検討項目は挙げれば長くなるため省略しますが、以下に代表的なものを挙げておきます。

  • ゾーニング・動線
  • 造成
  • 園路の構造・舗装種別
  • 雨水排水設備の計算・構造検討
  • 上下水道・電気設備の計算・構造検討
  • 設置する構造物の選定・構造計算
  • 植栽の配置・種類


 ③図面作成

設計検討と並行して、図面を作成していきます。業務の内容によって求められる図面の種類や枚数は異なりますが、工事工程ごとに大体20~30枚以上の図面を作成します。図面は、基準書などを見ながら設計ソフトを使って描きますが、ミリ単位の緻密な作業が必要となるため、高度な技術が必要です。元請けの場合は協力会社に依頼することが多いため、一から図面を描く機会は少ないです。


 ④数量計算書作成

図面が完成したら、数量計算書を作成していきます。数量計算書は、工事に必要な資材などの数量をまとめたもので、発注者が指定する様式や算出方法に沿ってまとめる必要があります。設計対象となる公園の規模が大きいと、数量計算書だけで数百枚に及ぶこともあります。


 ⑤工事費算出

数量計算が完了したら、工事費の算出をします。数量計算書をもとに、各資材や人件費の市場単価を調べ、工事全体で必要な金額を算出します。市場単価が設定されていないものについては、メーカーなどから見積もりを徴収します。工事費は、発注者が一番注目する部分であるため、間違いは厳禁です。


まとめ



実施設計業務は、多くの人が設計と聞いてイメージする業務そのものであり、建設コンサルタントでは花形の仕事と思われがちですが、地道な検討作業や計算をコツコツと進めていかなければなりません。建設コンサルタントが受注する様々な業務の中でも作業工程が多く、タイトなスケジュールになりがちですが、調査・計画業務とは違い、設計した図面がそのまま形になり、「地図に残る」ため、大きなやりがいを感じる業務です。対象地の現場条件によっても作業内容が大幅に変わるため、実施設計業務を主担当としてこなせるようになれば技術者としてのレベルが格段にアップした証でもあります。実施設計業務にチャレンジできる機会があれば積極的に手を挙げてみてください。

この記事のライター
大学では造園・都市計画を専攻。新卒で建設コンサルタントに入社し、5年ほど都市計画・公園設計の業務を担当。情報発信を通じて建設業界で働く方々の力になりたいと考えています。
趣味は公園の芝生でのんびりしながら読書すること。
『サガシバ』に会員登録して、匠の野帳をもっと便利に!
会員登録すると、最新記事の情報が受け取れる他、便利な使い方がたくさん!

どぼこさんの匠の野帳をもっと見る

2023年12月06日 10:09 どぼこさん
3 0
「Park-PFI」という言葉をご存じでしょうか?Park-PFIは、にぎわい創出を目的として都市公園に民間活力を導入するための制度のひとつで、別名「公募設置管理制度」とも呼ばれます。近年、都市公園に限らず、公共施設...
3 0
2023年11月22日 09:33 どぼこさん
3 1
「グリーンインフラ」という言葉をご存じでしょうか?自然が持つ機能を活用して様々な社会課題を解決する考え方のことで、建設業界では少し前から話題となっている用語です。今回は、グリーンインフラの意味や具体的...
3 1
2023年09月06日 00:23 どぼこさん
2 0
インクルーシブ(inclusive)は、英語で「包括的な」、「~を含めた」などの意味があります。近年では、主に教育や福祉などの分野で利用されていますが、設計分野でもインクルーシブの考え方を取り入れることが増え...
2 0
2023年05月10日 00:28 どぼこさん
1 0
前回、公園実施設計業務の流れについて解説しましたが、今回は公園施設長寿命化計画策定業務について解説します。基本的には、国土交通省の「公園施設長寿命化計画策定指針(案)」に従って進めていくため、高度な知...
1 0
2022年10月12日 00:28 どぼこさん
6 2
建設コンサルタントの主な仕事は、行政が橋や道路、上下水道、公園などのインフラを整備するにあたって、調査や計画、設計を行うことです。また、行政のサポート役としての役割もあり、近年よく行われている民間活力...
6 2
2022年08月10日 00:30 どぼこさん
9 0
建設業に関わりがない人は、建設コンサルタントと言われてもピンと来ないと思います。建設コンサルタントは主に社会資本の整備に関する調査・計画・設計を行い、国や地方公共団体などを支援する役割を担っています。...
9 0
会員登録(無料)