建設コンサルタントは、社会資本整備のための企画・調査・計画・設計・施工管理・維持管理などを行う役割を担っていますが、一口に社会資本といっても、河川や道路、上下水道から鉄道、橋梁、公園まで多くの分野があります。各分野でフェーズ(調査・計画・設計など)ごとに業務が発注されるため、建設コンサルタントが担う業務の種類は非常に多く、実務でも幅広い作業を必要とします。
そのため、建設コンサルタントに入社して数年間経つまでは、担当する業務のほとんどが初めて経験する業務になり、業務の流れや内容を理解するだけで精いっぱいになってしまいがちです。
そこで今回は、筆者の実体験をもとに、公園実施設計業務について、実務に即した業務の流れを紹介します。造園部門にあたる業務ですが、道路や鋼構造及びコンクリートなどの他部門にも通じる部分があるため、建設コンサルタントで働く若手技術者の方の参考になれば幸いです。
公園や公共建築物の設計が完了するまでには、①基本構想、②基本計画、③基本設計、④実施設計の4段階があり、実施設計は設計の最終段階にあたります。実施設計を終えた段階で着工できる状態にする必要があるため、実施設計の主なゴールは、「詳細な図面の作成」と「数量計算書の作成」、「工事費の算出」です。
以下より実施設計の流れを解説していきます。
まずは、現地がどのような状態であるかを確認するための現地調査を行います。上下水道や大きい構造物、水路など、設計をするにあたって詳細な検討が必要なものを重点的にチェックします。また、撤去構造物の図面と数量計算書の作成に向けて、撤去構造物の寸法や数量を計測します。
現地調査を終え、現地の様子を把握した後は、設計検討に入ります。設計検討は、実施設計業務の中で最も重要な工程で、数か月以上の時間をかけて、関係各所と協議をしながら進めていきます。デザインの決定から構造物の構造計算まで、図面・数量を作成するために必要な項目を検討していきます。
検討項目は挙げれば長くなるため省略しますが、以下に代表的なものを挙げておきます。
設計検討と並行して、図面を作成していきます。業務の内容によって求められる図面の種類や枚数は異なりますが、工事工程ごとに大体20~30枚以上の図面を作成します。図面は、基準書などを見ながら設計ソフトを使って描きますが、ミリ単位の緻密な作業が必要となるため、高度な技術が必要です。元請けの場合は協力会社に依頼することが多いため、一から図面を描く機会は少ないです。
図面が完成したら、数量計算書を作成していきます。数量計算書は、工事に必要な資材などの数量をまとめたもので、発注者が指定する様式や算出方法に沿ってまとめる必要があります。設計対象となる公園の規模が大きいと、数量計算書だけで数百枚に及ぶこともあります。
数量計算が完了したら、工事費の算出をします。数量計算書をもとに、各資材や人件費の市場単価を調べ、工事全体で必要な金額を算出します。市場単価が設定されていないものについては、メーカーなどから見積もりを徴収します。工事費は、発注者が一番注目する部分であるため、間違いは厳禁です。
実施設計業務は、多くの人が設計と聞いてイメージする業務そのものであり、建設コンサルタントでは花形の仕事と思われがちですが、地道な検討作業や計算をコツコツと進めていかなければなりません。建設コンサルタントが受注する様々な業務の中でも作業工程が多く、タイトなスケジュールになりがちですが、調査・計画業務とは違い、設計した図面がそのまま形になり、「地図に残る」ため、大きなやりがいを感じる業務です。対象地の現場条件によっても作業内容が大幅に変わるため、実施設計業務を主担当としてこなせるようになれば技術者としてのレベルが格段にアップした証でもあります。実施設計業務にチャレンジできる機会があれば積極的に手を挙げてみてください。