構造物を設計するにあたって、部材仕様を決定する以外に実際に施工できるかどうか判断する必要があります。詳細な施工方法を理解する必要はありませんが、施工の可否を判断できる程度の知識が必要になります。その中の施工方法による制限については、設計モデルを決定する上で重要となります。
例えば、ボックスカルバートの接続部に設置する止水構造を設計する場合を考えます。止水構造によっては、下図に示す通り、切欠き構造が必要となります。それは、止水構造を設置する際にボルトを締め込む必要があったり、内空を確保したりする理由が挙げられます。設計の応答値に耐えうる止水材を選定して図面化しても、所定の切り欠き幅がないと施工不可となる可能性があります。
このように必要な仕様だけで製品を選定してしまうと、設計している構造では施工ができない場合があります。製品・技術を選定する際は専門業者に確認するようにしましょう。
次に、設計図に描かれている構造物がどのような機械で施工されるかを考えます。施工に必要な機械のサイズや重量を確認する必要があります。確認する目的としては、現場で確保できる施工ヤードに収まるかどうかと、施工機械の重量に耐えうる基礎が確保されているかを確認することになります。
難しい設計計算をして必要な仕様を決めて設計図を描いても、実際に設計図通りの場所に設置できなければ意味がありません。一つの設計条件としてよく確認するようにしましょう。
建設構造物を設計するにあたって、現地条件は重要な条件となります。一般的に設計で配慮される地盤条件や構造条件については改めて確認する必要はありません。設計では考慮していない現地条件を考えて調整する必要があります。
現地条件を考えるためには、どのように材料を搬入して材料を配置するかを具体的に考える必要があります。そこには、搬入車両の制限、空頭制限、重量制限などがあります。実際に施工する様子を想像して、確認するようにしましょう。
前回「1.3 QCDSEに基づく総合評価」にも記載している通り、Qは品質(Quality)、Cは費用(Cost)、Dは工程(Delivery)、Sは安全(Safety)、Eは環境(Environment)です。建設構造物を計画するにあたって、重要な要素になります。どのように総合評価していくかもう少し具体的にお伝えします。
製品・技術を総合評価するにあたって、以下のような一覧表の作成は重要になります。QCDSEのそれぞれの観点で、各製品・技術を比較していきます。その評価はどの建設構造物に適用するにしても大きくは変わりませんが、現地条件は一様なものではないため、プロジェクトごとに選定していく必要があります。
プロジェクトによっては工程を優先する場合もあれば、コストを優先する場合もあります。プロジェクトの関係者に各観点に対する見解を確認して、最適解を選定しましょう。
総合評価一覧表
技術A | 技術B | 技術C | |
品質(Quality) | |||
費用(Cost) | |||
工程(Delivery) | |||
安全(Safety) | |||
環境(Environment) | |||
総合評価 |
建設プロジェクトの関係者は多いです。発注者、受注者、協力会社、近隣企業、近隣住民などが挙げられます。誰かのメリットは誰かのデメリットであり、各関係者の落としどころについてリーダーシップを持って決定していくのは難しい仕事になります。その時に助けてくれるのは前項で示した一覧表になります。
協議毎に一覧表を更新しながら、関係者が納得する製品・技術を選定しましょう。
今回は施工方法、施工機械についてとQCDSEについてお伝えしました。製品・技術の選定は、多くの関係者との調整を行った末の意思決定を下す難しい仕事です。選定にあたって、助けになれば幸いです。
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