設計成果物の品質確保は、各業務の大前提で重要です。品質を確保する一般的な方法は確立されておらず、各設計者がそれぞれ考えながら確認するのが実情です。3件の地下構造物の詳細設計を担当した経験者として、設計成果物の品質を確保する上でのポイントを伝えます。
設計成果物とは、設計概要書、設計計算書、設計図、数量計算書などになります。長きに渡る設計協議の集大成で、完成した時の達成感は忘れられないものです。
設計協議で協議した相手は、主に発注者ですが、その他に現場、埋設企業、近隣住民などが挙げられます。そのすべてを調整した設計者は、設計成果物を介して関係者の思いを伝達し、間違いのない検討結果を残すことが求められます。
設計成果物は設計計算をとりまとめたものではなく、検討結果の経緯を残した図書になります。
品質とは、顧客からの品物やサービスに対する要求事項や、ニーズに合っているかを決める特性です。ただ設計検討に間違いのない設計成果物では、品質としては不十分となる場合があります。設計成果物を読めば、検討するに至った経緯、構造物の仕様を決定するに至った経緯など、設計者と同様の理解度が求められます。
設計成果物の品質とは、以下の2つになります。
説明性の高い設計を目指せば、設計成果物の品質を確保することができます。RC断面照査を実施して鉄筋の仕様を決定する検討を例として挙げます。
例えば、どの荷重の組合せのケースで、なぜその照査位置で構造物の仕様が決定しているのか説明できるようにすることが重要です。もう少し具体的に説明すると、「ボックスカルバート右側壁の基部に発生する曲げモーメントが最大になる荷重の組合せは、右からの偏圧が最大になる組合せ〇〇で、その時の応力照査の結果で、鉄筋径○○@○○が必要になります。」といった説明が、すべての部材に対してできることが重要です。
第三者が納得できる現地条件に合わせた結果の説明をなされている設計が、説明性の高い設計になります。
設計計算に入力している値に間違いがないか確認する作業は、「設計検討に間違いのない成果物」としての品質を確保することに対して重要な作業になります。
以下の2つを遵守すれば、間違いはほぼ0にすることができます。間違いによる手戻りの作業が上流側であればあるほど、修正に必要な時間と労力は大きくなります。上流側の作業確認は、時間を惜しまずしっかりと確認しましょう。
設計計算の出力値を確認する作業は、「説明性の高い設計」としての品質を確保することに対して重要な作業になります。
入力の確認は業務経験が浅くても、やるべきことがわかりやすく対応できます。それに対して出力の確認は、ある程度実務経験がないと、どのように確認すればいいのかわからないものです。以下にポイントを3つ示します。
私は1、2年目の時に、指導を受けましたが、出力の確認の重要性に気づくことができませんでした。自分自身が、説明者となったときにこの作業の重要性に気づくことができます。
設計図は設計成果物の中で、最も重要な成果物になります。その理由は、設計図は工事の契約書となるからです。設計計算書と設計図に不整合があった場合は、設計図が優先されて工事が進められます。設計計算結果との整合を確認するのはもちろんですが、加えて以下の3つのポイントを抑えると品質が向上します。
今回は設計成果物の品質とその確認方法を伝えました。私は実務経験を通して、上記の事柄の重要性を徐々に理解しました。上司や発注者に成果物の報告をするときに、上手くいかない時は上記のどれかが抜けていることが多いです。
抽象的な内容ではありますが、皆様の助けになることを祈っております。
\バナーをクリック!/ 登録無料で今すぐ使えます。ぜひご利用ください。
【この記事を読んでいるあなたへ】 ※本文内にある一部のキーワードをクリックすると、該当する製品・技術情報にアクセスできます。
月2回の配信を行っています。 匠の野帳の更新情報以外にも、人気の製品や相談など情報満載! ご登録はこちら |