先日、「設計成果物の品質確認について(前編)」では設計成果物の品質確保の確認方法についてお伝えしました。
長い年月(数年程度)におよぶ詳細設計業務では、確認方法のノウハウがわかっていても集中力を切らしてしまうことがあります。本稿では集中力を保つ方法をお伝えします。
第1稿の設計成果物の品質では、設計成果物に入れるべき内容とその品質の定義について記述しました。設計成果物の品質は大きく以下の2つです。
説明性の高い設計とは、設計計算結果の理由が一つずつ整理されており、第三者が納得できる現地条件に合わせた結果の説明がなされている設計をいいます。
設計成果物の品質の確認方法は、大きく分けて「入力の確認」、「出力の確認」、「図面の確認」になります。それぞれの重要性については第1稿に示しました。
特に出力の確認は前述した設計性の高い設計につながる確認事項であり、重要になります。ただ、ある程度の業務経験を積まないと十分な確認ができないため、業務経験の浅い方は経験者に指示を仰ぎ指導を受けるようにしてください。
設計成果物の品質を確保するためには、確認項目として挙げた3つの項目をムラなく確認する必要があります。長い年月その集中力を続けることは困難なことです。次の項目から、設計成果物の品質を確認する心得を記述します。
設計者は構造物の用途・重要性を知ることで、設計対象に対する気持ち・責任感が高められます。そうすることで集中力を切らさず退屈な「入力の確認」を実施できます。
用途とは物の使い道で、道路や鉄道が挙げられます。さらに現地条件を把握し、設計対象がこれからどのように利用されていくかを深く知った方が、利用者を想像できるので設計対象に対する気持ちが高まります。
重要性とは設計対象の規模、利用者の数などから決定されます。定量的に設計対象の重要性を知ることで、設計成果物の品質を確保しなければならないという設計対象に対する責任感が高まります。
例えば、設計対象を道路構造物と認識するより○○~○○をつなぐ10万台/日の交通量の高速道路と認識する方が設計対象に対する気持ち・責任感が高くなります。○○~○○を通行する人たちを想像して、10万台/日の車内にいる人たちを守る気持ちを持てば、長い年月をかけることに納得して集中力を切らさず設計することができます。
解析のオペレーターは設計者ではありません。これを認識することで「出力の確認」のレベルが上がります。
解析のオペレーターは与えられた条件の数値を元に計算ソフトで設計計算を実施する人を指します。設計者とは構造物の要求性能を理解し、必要な部材仕様を決定する人を指します。両者の大きな違いは構造物の仕様に対して意思決定を行うことになります。
私は1、2年目の頃は両者を混同しておりました。構造解析ソフトを自分で操作できるなり、設計者になれたと勘違いしていました。設計者の仕事は構造計算だけではありません。
計算結果の傾向と地盤の不確かさなどから、経験に基づいて部材仕様の適用範囲を決定します。部材仕様の意思決定に対して意識を持てば、「出力の確認」のレベルが上がります。
設計者はエンドユーザーが実際にどのように利用するかを考えれば、「図面の確認」のレベルが上がります。正しく説明性の高い設計を実施しても、実際にエンドユーザーの求めるものが構築されなければなりません。
エンドユーザーが利用する姿を想像して、図面を確認しましょう。その時に気づいた施工者に伝えるべきことを必ず図面に記載するようにしましょう。
今回は、品質を確認する上での心得をお伝えしました。紹介した設計成果物の品質を確保する方法に加えて、上記のことに留意していただければ、設計成果物の品質はさらに上がります。
私は詳細設計に限らず、上記のことを留意して設計作業を実施しております。是非、長い年月をかける設計作業を退屈な作業ととらえずに楽しい作業として実施してもらいたいと思っています。
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