1. 設計者として理解すべき事項
設計者は、予測解析で出てきた応答値と許容値の比較で、製品の性能を決定します。最終的に現場で施工するためには、製品とその施工方法を選定する必要があります。その選定には現地条件の理解を含めて、専門的知識を要します。以下の3つのポイントで説明していきます。
製品の性能を決定する設計モデルは、入力と出力の相関などが分析しやすいように実際の製品と比べて簡易的なモデルを用いることが多いです。例えば、ボックスカルバートの躯体だと、躯体は鉄筋とコンクリート(水+セメント+細骨材+粗骨材)で構成されていますが、設計モデルでは1本のビーム要素でモデル化することが一般的です。
製品の性能は、複数の部材・材料の性能が重なって、その性能を担保しています。製品の図面には、性能が表に記載されて、複雑な構造が断面図・縦断図・平面図で描かれています。この時、性能が示されている表のみを見て製品を選択してはいけません。その性能がどのように担保されているか必ず確認しましょう。
設計図に必要な部材を描くことは実作業に比べると簡単なことです。CADで線を描いてしまえば、設計図に表現することができます。しかし、実際は設計図と同じ位置に設計図と同じものを設置する必要があります。設置する過程は、施工方法と施工機械を理解していなければ想像することができません。
性能が十分な製品・技術を選定しても、実際に設置できなければ意味がありません。誰かが考えてくれるだろうという考え方はやめて、専門業者にヒアリングしながら十分な検討を心掛けましょう。
製品・技術を検討する上で、「QCDSE」の5つの観点があります。Qは品質(Quality)、Cは費用(Cost)、Dは工程(Delivery)、Sは安全(Safety)、Eは環境(Environment)です。1つの観点に絞って検討をしてしまうと、総合的に評価した際に最適な製品・技術を選定できていない場合があります。
例えば、よくある例として費用(Cost)が最も低いものを選定し、環境(Environment)に配慮できていない場合、周辺に影響を与えてしまいます。その結果、必要な補修・対策工事を実施して、費用がかさんでしまうケースがあります。
紹介した5つの観点で十分に検討し、現地条件に合わせた最適な製品・技術を選びましょう。
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まず初めに要求されている性能をしっかりと理解しましょう。例えば、鉄筋コンクリートの仕様を決定する例で話をします。許容応力が160N/mm2だから、必要な鉄筋仕様で配置するという理解だけでは足りません。
なぜ160N/mm2なのかという部分をしっかりと理解する必要があります。鉄筋の許容応力は構造物が地下水位以下かどうかで変わります。このことを理解していれば、現地条件である地下水位がどの高さにあるのか、実際に設置する構造物の高さはどの高さかなどの確認が必要になります。
まずはこのように許容値や許容応力などの要求性能の本質を理解して、設計者として本当に必要なものを深く理解しておきましょう。この理解度が、製品・技術を選ぶ上での閃きにつながります。
製品・技術には類似商品がたくさんあります。同じような形で同じ性能のものがあります。その中で製品・技術を選定するには、各々の本質を理解する必要があります。以下の3点を確認しましょう。
どの製品も必ず行っています。実験はデータ数やその実験方法等を見て、性能の信憑性を確認しましょう。設計計算は設計モデルや安全率等を見て、その性能の決め方を確認しましょう。ものによっては安全率を下げて許容値を上げているものもあります。その根拠などよく確認しましょう。
主部材の長期耐久性が確保されていることや性能が高いことの説明をカタログで見ることができます。主部材のみで構成されている製品は少なく、ボルトや鋼板など副部材があります。その仕様も必ず確認しましょう。
材料の性能を確保するために重要なのは、最終的な施工になります。どのような施工管理で性能を確保しているか確認しましょう。またそれが十分かどうかも確認しましょう。
設計モデルは実物を忠実に表現していないため、設計モデルと実物の比較を行い、挙動の差が起きないか考えましょう。その比較を通して、支持機構の剛性が過大になっているかもしれないなどの考察が生まれた場合、対処方法は2つになります。1つ目が実際の支持機構の補強等の配慮ができるかの確認、2つ目は設計モデルのパラメーターを変更して確認する方法です。
このように、設計モデルと実物の比較を行うことにより製品の安全性・品質を確認するようにしましょう。この作業を怠ってしまうと、思わぬ箇所で構造物の崩壊が起きてしまう可能性があります。
設計者として理解すべき事項とその中の性能を担保している部材・材料についてお伝えしました。製品・技術の選定は最終的な構造物の性能を決める重要な行為になります。設計者として、安全性と品質が確保されたものを選びましょう。実物の理解は設計モデルの理解より難しい部分もありますが、専門業者さんに質問しながら正しく理解しましょう。その際に、お伝えしたポイントを参考にしていただければと思います。
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