一方ロシアは鉛筆を使った。

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『一方ロシアは鉛筆を使った。』
というタイトルに「???」となったまま読みすすめる。
本日、3月13日の『寿建設社長ブログ』だ。
タイトルの元となったのは『仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方』という本らしい。
その本の文中、「マズローのハンマーの法則」の一例として以下のアメリカンジョークを紹介しているという。
・・・・・・・・・・・
アメリカのNASAは、宇宙飛行士を最初に宇宙に送り込んだとき、無重力状態ではボールペンが書けないことを発見した。これではボールペンを持って行っても役に立たない。NASAの科学者たちはこの問題に立ち向かうべく、10年の歳月と120億ドルの開発費をかけて研究を重ねた。
その結果ついに、無重力でも上下逆にしても水の中でも氷点下でも摂氏300度でも、どんな状況下でもどんな表面にでも書けるボールペンを開発した。
一方ロシアは鉛筆を使った。
・・・・・・・・・・・
「マズローのハンマーの法則」、当方、浅学にして初耳だ。
いつものようにさっそく調べてみる。
「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」
「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える」
「金槌しか持っていなければ、すべての問題は釘に見えてくる」
さまざまな邦訳がヒットした。
原文は
if the only tool you have is a hammer, to treat everything as if it were a nail.
らしい。
『寿建設社長ブログ』に戻る。
森崎さんが読んだ本ではこう解説していたという。

問題に直面したとき、技術に詳しい人ほど自分の技術にとらわれてしまい、使う必要のない技術をわざわざ使って簡単な問題を難しく解決しようとする。

この話を読むと同時に思い浮かんだことがある。
バックホウオペレーターが陥りやすい、あることについてだ。
バックホウ(特にミニ)を運転して、たとえば擁壁の床掘りなどをしていると、ごくごく事細かな、人の手でやったほうが早いんじゃないか?というところまでバックホウで作業をしてしまう人をたまに見かける。
もちろんわたしもバックホウを運転するが、まったく上手ではないため、最後のところは人力にゆだねてしまう。
「あとはやっちょってね」
てな具合である。
それに反し、上手になればなるほど、「そこまでしなくても」という部分まで機械でやってしまおうとしがちなのだ。そんな例はいくらでも見てきた。ことは、バックホウオペレーターに限らない。トータルな意味で優れた土木技能者は、そこのところまで考えて総合的かつシンプルに自分の技術を活かすすべを知っている人だ。
もちろん、技能者だけのことではない。技術者にもそれは当てはまる。
むしろ「ロシアは鉛筆を使った」という噺は、技術者の世界においてこそ、「痛い」ジョークあるいは戒めとして、より効果的だ。
まずは、「”鉛筆”的技術の引き出し」があるか否か。
次に、それはどの場どの時に”鉛筆”を使えば効果的なのかという判断力。
そして、「”鉛筆”でもいいじゃないか」と切り替えられる柔軟なアタマ。
「ロシアの鉛筆」の噺は初見だが、わたしは土木技術者となってこの方、「オレも一人前かな?」と思いはじめたころからは特に、つねにそういう心持ちで現場にのぞんできた。
まさに「わが意を得たり」。
とともに、いつまでもたいせつにしたい姿勢だなとあらためて思う、辺境の土木屋61歳なのだった。

この記事のライター
高知県北川村に住み奈半利町の建設会社で働く土木技術者兼太鼓打ちのオジさん。「三方良し」の旗を立て、CCPMを武器に、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々。会社を代表する意見ではないので悪しからず。
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