「新3K」を考える

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毎朝、そのオジさんはポスターのなかからわたしに訴える。

国土を強くしなやかに!

建設産業を新3Kの職場に!

(給与、休日、希望)

そのたびに、訴えられたこのオジさんは「なんだかなあ」と思う。

給与が良い

休日が取れる

希望が持てる

それぞれの頭文字をとって新3Kという。

それを実現しようという提唱は、すなわちその新3Kとやらがこの業界には存在しないか、在ったとしてもごくごくわずかであることの証左であることは、誰でもが容易に理解できる。3つめの「希望が持てる」は少なからず抽象的で、ひとそれぞれの感じ方次第のような気がするので置いておくとして、「給与」と「休日」はいたって具体的だ。

すなわち現実は、「給与が低く休日が少ない」であり、それに対して「給与が高く休日が多い」職業にしようという目論見であり提唱だ。

うん、悪くない。

だが、よくもない。

目指すところは悪くないが戦略としてはよろしくないという意味で、よくもない。

そのような、一挙両得一石二鳥、一つを放って二つを得るがごときが実現できるかどうか。アブも取らずハチも取らずになってしまう可能性が高いのではないだろうか。戦力の逐次投入あるいは兵力の分散は悪手だ。少なくとも弱者が採用する戦術ではない。そしてわたしたちは、世間一般でイメージされている像とは裏腹に強者ではない。優先順位をつけ集中突破する。これが基本原則だろう。

ではこの場合、どちらを優先させるのか。

「給与」か「休日」か。

わたしは「給与」だと思う。

とにもかくにも、まずは給与水準を上げる。

なぜか。

ためしに、次のうちどちらかが現実のものとなったときのことを考えてみる。

「給与は少ないが休日が多い」職業と「給与は高いが休日が少ない」職業。

前者から二段階的に高給与の実現は難しそうだが、後者を達成したあとに、「給与が高く休日も多い」職業へと転換するのは実現可能性がありそうな気がする。「給与」と「休日」の両方を満足させようとしたら、まずは「給与は高いが休日が少ない」職業を実現させたあとに休日を多くさせるという二段階作戦しかないのではないか。近い将来わが業界で現実のものとなりそうなのは「給与は少ないが休日が多い」だ。その一方が「働き方改革」という錦旗のもとにあることを考えると、今のうちに「給与」面の改善がなされなければ、その確率はきわめて高い。そうであればと、なおさらのことそう思うのだ。

「働き方改革」にも秋波を送りつつ高水準の給与を実現し希望が持てる職場とする、いわゆる「新3K」は、虻蜂取らずの悪手だという気がしてならない。 

この記事のライター
高知県北川村に住み奈半利町の建設会社で働く土木技術者兼太鼓打ちのオジさん。「三方良し」の旗を立て、CCPMを武器に、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々。会社を代表する意見ではないので悪しからず。
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