建設コンサルタントが施工監理経験で得るもの

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一般的に工事を管理する業務は「施工管理」と呼ばれ、それは工事を完成させるために、職人さんや重機や資材、品質、工程、安全等を管理・調整していく施工業者(ゼネコン)の業務を指します。

一方、建設コンサルタントの工事の管理業務は「施工理」と表記されます。これは施工業者が建設したものが契約図書通りにできているかどうかを発注者(クライアント)の代理人として検査するもの(検収/検測ともいう)で、工種毎や工区毎に区切って行われ、その都度出来高や品質を確認します。今回は、建設コンサルタントが施工監理を経験することによって、設計する立場になった時に、どういったことが実際に役に立つのかを記述していきたいと思います。


図面をより深く見ることができるようになる



建設コンサルタントに入社していきなり図面を作成することになった時、それがどういうもので何のための図面かということは、先輩や上司が教えてくれたり、自分で調べたりして学んでいきます。しかし、現実には納期がありますので、どうやって合理的に作成していくかに目を向けざるを得ないのが実情で、詳細の理解についてはちょっとモヤモヤした部分を持ちながらも納期までダッシュせざるを得ないなんていう状況が結構あるかと思います。しかし、施工監理の経験を経ると、以下のような経験を通して図面に対する理解が深まり、こういったモヤモヤがかなり解消されていくと思います。

  • 立会検査によって、現場で作っているものと設計図面の照合を行う経験を頻繁にするので、逆に、図面を見て工事で作るものが瞬時にイメージできるようになる。
  • 図面通りに施工するのが難しい事例に何度か遭遇し、「設計する立場になった時は気を付けよう」と、心に刻まれる。
  • 日当たりの施工量を目の当たりにするので、それが配慮された図面になっているのかを無意識に気にするようになる(コンクリート打設など)。

現場仕事の流れと仮設構造物の大切さが肌感覚でわかる



施工監理では、施工業者が作成する施工計画書のチェックを行い、それに基づいて施工が実施されているかを見ます。構造物や工種毎に施工計画書が提出されるケースも多々ありますので、ものづくりの流れが肌感覚でわかっていきます。また、設計とは工事で建設するものを図面化するのが直接的な業務ですが、実際には仮設構造物が必要であり、施工監理経験はその役割を見られる貴重な機会で、以下のようなことがわかるようになっていきます。

  • 現場を日々見つつ、定期的に定点写真を撮ったりする経験を通じて、現場全体の施工展開がイメージできるようになる。
  • どの程度の規模の工事用道路をどこに設けるか、工事段階に合わせてどこにそれを移していくかという思考を設計時に持てるようになる。
  • 掘削の際に仮設構造物(矢板やウェルポイントなど)が必要かどうかを当たり前のように気にするようになる。トンネル工事は仮設構造物だらけの現場になるというイメージが持てる。
  • 構造物の施工に必要な足場の大切さ、日々昇降することの大変さを体で覚える。


まとめ



 「コンサルタントの書く図面は使えない。」なんて、施工側に従事する友人等から聞かされたことはありませんか?

これは、施工監理の立場にいると、よく理解できる話であり、設計側の立場にいると「限られた時間と人員でやっているため限度がある。」という面も理解できます。

こういった施工側と設計側の齟齬が生まれるのは業務ベクトルの方向が異なるから仕方ない面もあるのですが、「いいものを作る」という点では目標を共有しているので、そういった齟齬を極小化していく努力が必要であり、建設コンサルタントであれば施工監理経験が非常に有効であると思います。

また、施工監理に出たら出たで、現場の立会検査以外の仕事の量が、実は多かったりもします。そのため、忙しくても「この工種が始まったら絶対現場に行く」と、いつも考えながら自分のタイムマネジメントを日常的に行うことが重要になります。同じ現場の経験をすることは、その先の人生ではもう二度とありませんので。


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この記事のライター
建設コンサルタントの道路専門家として設計・施工監理に従事し(15年)、その後はステージを発展途上国に移し、気づけば10年以上。日本の仕事で四苦八苦した経験が、実はかなり貴重なものであったと感じる今日この頃です。海外主体となってからは、日本の普通の道路が当たり前に平坦性を確保されていることに帰国する度に感動し、街中でちょっとした工事現場に出くわした時は、その手際の良さや品質のすごさに見惚れて立ち止まることが多くなりました。
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