全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるにあたり、火災予防意識の一層の普及を図り、火災の発生を防止することを目的とする啓発活動です。消防庁が制定する全国火災予防運動実施要綱に基づいて実施されます。春季は毎年3月1日から3月7日まで、秋季は毎年11月9日から11月15日までとなっており、それぞれ「春の全国火災予防運動」、「秋の全国火災予防運動」と呼ばれています。
さて、工事現場では溶接・溶断作業やアスファルト舗装工事におけるガスバーナーなど、火器を扱うことが多くありますよね。また、有機溶剤など燃えやすい薬剤を使うこともあり、多くの火災要因が潜んでいます。作業員の皆さんは作業に集中しているため、一度火災が発生すると蔓延し、重大な火災事故になってしまうことも少なくありません。東京消防庁管内だけでも、約2日に1件の割合で工事現場からの火災事故が発生していることから、決して他人事ではないとお解りいただけるかと思います。火災事故が発生すると、最悪の場合死亡災害となってしまいますし、現場検証が終わるまで工事は中断、工期延長や焼けてしまった築造物への補償など、火災事故による損害は甚大なものになってしまいます。
そこでこの記事では、秋の全国火災予防運動に併せ、土木工事現場における防火管理についてご紹介します。
工事現場での出火原因トップ3は、下記内容です。
土木工事の出火原因は、溶接・溶断作業や素地調整作業における動力工具による火の粉の飛散に起因するものが大半です。溶接機は機械本体に火気を使用するものではありませんが、溶接作業に伴うアーク、スパッタ、ガウジングなどにより火気が生じます。また、動力工具を用いたグラインダ作業では、砥石の回転に伴って火花が飛散します。
土木工事で使用する可燃性ガスの代表的なものとしては、アセチレンガスやプロパンガスがあります。ガス器具を使用する場合は、ガスの炎そのものの危険性、およびガス器具の切断によって生じる火花や高温の溶融金属なども火災の原因となります。
材料自体が出火原因となる事例はほとんどありません。しかし、「塗料やシンナーに引火してしまう」、「現場に溶解釜を用意して、アスファルト溶解中にアスファルトが発火点に達してしまう」など、材料に引火すると大規模な火災になってしまうことがあるので注意が必要です。
溶接・溶断作業箇所、動力工具による素地調整作業箇所の周囲は防火シートで遮蔽し、可燃物を除去しましょう。また、消火器の設置も必ず行いましょう。
引火の危険性がある塗料やシンナー、エポキシ樹脂系の接着剤やプライマー、コンクリートの型枠剥離剤などは、消防法により危険物とみなされ、その保管数量が指定されているので、保管や取り扱いに充分注意しましょう。
アスファルトを現場で溶解する場合は、240℃以上にならないように火力を調節しましょう。温度が240℃よりも上昇すると焦げ臭いにおいがするため、臭いにも注意してください。
ガス器具を使用する場合は、適切な位置に消火器を設置するなど、直ちに消火できるように準備しておくことが大切です。また、作業開始前にガスパージを行うことが防火対策として一番効果的です。高圧ガスは内圧の温度が40℃以下で保管できるよう、直射日光回避、空調管理などの措置を行ってください。
そして、指定場所での喫煙を徹底すること、延焼拡大防止のための整理整頓、定期巡回や夜間の施錠管理の徹底などによる放火対策など、当然のこととして厳正に行いましょう。
防火管理者とは、一定規模以上の防火対象物の火災を防止するために必要な安全対策を定め、防火管理上必要な業務を行う責任者です。防火管理者を選任する必要がある工事中の築造物は、ある一定以上の規模の「建築物」に限られており、「土木構造物」に対して防火管理者を選任する必要はありません。ただし、工事現場の事務所や寄宿舎等の収容人員が50人以上の場合は、資格を有する者の中から防火管理者を選任し、また防火管理者により作成した消防計画を所轄消防署へ届け出てください。
以上、土木工事現場における防火管理についてご紹介しました。建築工事に劣らず、土木工事においてもトンネル内の工事や鋼橋工事など、火災の危険性が高い現場は少なくありません。秋の全国火災予防運動を迎えるにあたり、土木工事現場の防火管理、消防計画について、今一度振り返る機会とし、火災予防対策を万全に行っていただけたら幸いです。
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