大半の化石エネルギーを海外からの輸入に依存する我が国においては、資源の有効活用を推進することが不可欠です。また、世界は地球温暖化という共通の課題に直面しております。そうした中で注目されるのが、2050 年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするといったカーボンニュートラルを目指す動きです。2050年脱炭素化が世界のスタンダートとなった時代に、日本も「2050年温室効果ガス実質ゼロ」、そしてこれまでの目標を7割以上引き上げる目標として「2030年温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みを目指す」ことを宣言しました。これらを確実に、さらに効率よく実現していくことは決して容易なものではありません。国民一人一人の理解と行動変容を促進するとともに、各産業・各分野において化石エネルギーの消費効率の向上をこれまで以上に徹底的に突き進めていく必要があります。
政府の省エネルギー・省資源対策推進会議省庁連絡会議では、従来からエネルギーの需要が増大する夏季と冬季に、各方面に省エネルギーの取り組みを呼びかけてきましたが、特に冬季には暖房等でエネルギー消費が増大するため、毎年2月を省エネルギー月間と定め、呼びかけを強化しています。
この記事では、省エネルギー月間に併せ、土木工事において使用されるエネルギーとCO2の排出量、および省エネルギーの取り組みについてご紹介します。
まず、建設業で使用されるエネルギーに着目してみましょう。世界で使用されるエネルギーの大部分が化石燃料ですが、建設業で使用されるエネルギーも、そのほとんどが化石燃料で、そのうち軽油が約70%を占めています。そして、その軽油の使用割合のうち、建設機械が約40%(油圧ショベルが約30%、クレーンが約10%)、トラック、ダンプなどの建設車両が約25%となっています。この化石燃料を使用することで温室効果ガスであるCO2を排出しています。
中でも土木工事は、建設機械・車両の稼働が主体的な原動力となっているため、土木工事におけるCO2排出量は、なんと建築工事の排出量の4倍にも!このため、アイドリングストップをはじめ、建設機械・車両による化石燃料の使用量をいかに削減するかという取り組みが土木工事における省エネルギーとして重要となっています。
※データ元:2008年度建設施工分野CO2排出量調査
建設業では、各建設施工段階におけるCO2削減目標を掲げております。2020年を目標年次とした「低炭素社会実行計画」では、施工高あたりの原単位で1990年度比20%削減を目標に掲げ、2017年には20.5%削減を達成しました。そして、2030年を目標年次とする「低炭素社会実行計画(フェーズII)」では、建設機械等の省燃費運転指導強化・普及の拡大、燃費改善などを目標設定の根拠として掲げ、施工高あたりの原単位で1990年度比25%削減を目標としています。
土木工事現場では、建築工事現場の4倍ものCO2が排出されます。そのため、建設機械・車両を主体に様々なCO2削減対策を行っております。下記にその一例をご紹介いたします。
冬季の暖機運転は目安として5分。水温計の針が動き出す程度でOKです。また、停車時間が20秒以上の場合はエンジンをストップさせましょう。
掘削する土砂の反力が大きい場合、操作レバーを引き続けても油圧がリリーフするのみです。速やかにブームを操作して油圧リリーフを回避してください。
アームシリンダーと連結ピン部分が直角になる位置が最大掘削力となる位置です。無理に1段階で掘削するより、2段階で掘削する方が動きに無駄なく燃料消費を抑えることができます。
建設機械の旋回角度をできるだけ小さくするなど、ほんの少しの工夫で燃費向上につながります。
省エネ型・ハイブリッド型の建設機械を使用し、燃料利用量を削減します。また、バックホウの約7割に装着されている「省エネモード」は、エンジン回転速度を下げ、燃費の良い運転頻度を高めることができますのでぜひ活用してください。現場の実証実験では、作業量当たりの燃料使用量が15%削減されたという結果がその有効性を示しています。
以上、土木工事において使用されるエネルギーとCO2の排出量、および省エネルギーの取り組みについてご紹介いたしました。土木工事におけるCO2排出量は建築工事の排出量の4倍にも相当しますので、建設業界の中でも土木工事におけるCO2排出量削減の取り組みがいかに重要であるかがお解りいただけたと思います。省エネルギー月間を迎えるにあたり、土木工事におけるCO2排出量削減の取り組みについて、今一度考えていただく機会としていただき、是非とも2030年のCO2削減目標も達成していただきたいものです。
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