電線共同溝事業(無電柱化)を効率的に進めるための5つの方法

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電線共同溝事業は、予備設計、詳細設計、事前支障移転工事、本体工事、民地内引込設備工事、台帳整備、ケーブル切替え・抜柱工事、舗装復旧工事と、事業期間が長期に渡ります。順調にいったとしておよそ5年~7年程度かかっていると思います。歯車がひとつでも狂うと、一年、二年と抜柱の時期が遅れていきます。

これらをスムーズに進めていくには、設計業務や工事が手待ちにならないよう行政側のコントロールが必要になります。

そのためにどのような方法があるのか、私の経験を通して5つ挙げたいと思います。

  1. 配線計画依頼の時期
  2. 既設埋設物の状況把握
  3. 電線管理者への工事委託
  4. 既存ストック活用
  5. 同時整備の実施


1.配線計画依頼の時期



配線計画図は、設計業務において初期段階で必要になります。配線計画は電線管理者に依頼するものですが、電線管理者は依頼を受けてから作成に1~2ヶ月の期間を要します。そのためコンサルタント会社との契約工期が半年程しかない場合などは、配線計画が完成するころに工期末を迎えてしまったり、コンサルタント業者が繁忙期に入り始めることもあります。そうなると設計業務の工期を延伸することになったり、電線管理者との十分な協議が行えないまま業務を終えてしまったりと、不都合が生じることが考えられます。

配線計画依頼は、行政担当者が設計業務を発注する前に進めておくことがポイントになりますので、そのためには電線管理者との連携が必要です。


2.既設埋設物の状況把握


既設埋設物の位置を明確にしておくことは、電線共同溝工事を実施するうえで重要です。そのために工事の前に試験掘りを行うことが多いですが、試験掘りは「①詳細設計段階で行う場合」と、「②工事直前に行う場合」があります。

それぞれ目的に違いがあり、詳細設計段階で行う試験掘りは、既設埋設物の移設工事が必要かどうかの確認を目的としています。これに対し、工事直前に行う試験掘りは埋設物の状況に応じて特殊部や管路の位置調整を行うことを目的とするものです。既設埋設物の移設が生じる場合などは、設計段階で実施しておかないと事業進捗に影響を与えます。

 試験掘り

時期目的
①詳細設計段階
既設埋設物の移設工事が必要かどうかの確認
②工事直前
埋設物の状況に応じて特殊部や管路の位置調整を行うこと

既設埋設物の移設工事は、費用や期間が必要になりますので、設計段階でしっかりと把握しておくことが大切です。既設埋設物の状況は、予備設計の机上調査の段階で支障移転を行うか否かを検討し、支障移転の可能性がある場合は詳細設計において試験掘りを行って確認する必要があります。そして、本体工事を発注する前に支障移転工事は完了しておくことがポイントとなります。


3.電線管理者への工事委託


引込管の施工を電線管理者に工事委託している例があります。(電線共同溝では家屋への引き込みにおいて、道路区域内を“引込管”、民地内を“引込設備”と呼びます。)

電線管理者は、民地内の引込設備を自己負担で実施しますが、道路区域内の引込管と同時に施工する方が施工性もよく、手戻りが少なくなります。その結果、沿道住民への影響が少なくなるなど、道路管理者と電線管理者の双方にとってメリットがあることから、引込管の工事を電線管理者に委託しています。

引込管は予定していた位置から変更になることが多く、行政側の本体工事業者にとってわずらわしい工事とも言えることから、これを電線管理者に委託することで、スムーズに本体工事を進めることが出来ます。


4.既存ストック活用



既存ストックとはNTTや電力会社が所有する管路のことで、これらを行政に譲渡し電線共同溝の一部として活用するものです。

第7期の無電柱化推進計画において、効率的な無電柱化推進の観点から、既存の電線管路については、電線管理者と協議し活用を検討することとしています。事前支障移転を回避または最小限にすることができ、事業期間、事業費ともに縮小することができます。

また、既存ストックを活用する場合、共用中ケーブルの近接施工となり、安全確保のために電線共同溝本体工事を当該設備の電線管理者に工事委託される場合が多いです。これにより、一連の工事を電線管理者がまとめて実施するため、事業を効率的に進めることができます。一般の電線共同溝事業に比べると、コストや事業期間が大幅に短縮されると言われています。


5.同時整備の実施


同時整備とは、道路の拡幅工事などと合わせて電線共同溝を整備していくことをいいます。拡幅部分は既設埋設物が少ないこと、また舗装復旧がまとめて実施できるなど、工事費の削減と工期の短縮に繋がります。しかし、地方自治体の道路においては、拡幅工事が実施されても電線共同溝の同時整備が実施されていない路線が多く存在します。理由は道路整備事業に遅れが生じることを懸念してのことだと思います。道路拡幅などの整備が完了しても、電柱が残っていては景観、防災面で課題が残ることになります。電線管理者との綿密な調整を行い、同時整備を実現していくことが必要と考えます。


まとめ


電線共同溝事業を効率的に進めていくには、行政側の業務コントロールや、電線管理者との連携がポイントとなってきます。電線管理者への工事委託や、既存ストックの活用など、電線管理者を巻き込んで進めていくことも有効な手段と言えます。

電線共同溝工事は、道路工事の一部と位置付けされているようですが、実際のところ、ガス、水道、下水道などと同様に、専門的な知識を要する工事だと思います。管路を曲げすぎてケーブルが通らないということも多々あるようです。

事業長期化の原因や不具合の要因を追求することは大切なことです。本来行政側が把握すべきことかもしれませんが、行政担当者は異動によりうまく引き継がれないことも考えられます。

そうなるとコンサルタント技術者の出番です。行政担当者への的確なアドバイスを行えるよう、知識を蓄えていく役割があると考えます。


 出所・参考WEBサイト

国土交通省「無電柱化推進計画」

https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_21.html

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この記事のライター
建設コンサルタント業務に従事して25年になります。最初は下水道設計から始まりましたが、現在は電線共同溝(無電柱化)を専門としています。釣りが趣味で、一人で出かけることが多く、海を眺めながら記事の構成を考えたりしています。最近は在宅勤務の導入もあり、プライベートの時間が増えました。自己啓発を兼ねて投稿していきたいと考えています。
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