電線共同溝とは、電柱や電線を地下に収容するための地下管路のことで、その目的は災害時の電柱倒壊による交通遮断防止や景観向上などです。「電線共同溝の整備等に関する特別措置法」(平成7年3月)に基づき実施され、道路管理者と電線管理者が費用負担を行います。電線共同溝は、いくつかある無電柱化手法のうちのひとつで、最も多く採用されている手法です。
電線共同溝事業を進める上でネックとなる点に着目し3つのポイントを挙げます。
①低コスト手法の検討
②電線管理者との調整
③地上機器の配置検討
低コスト手法は、平成31年3月に「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案)-ver.2-」が発行され、設計段階において必ず低コスト化の検討を行うことが求められています。
低コスト手法の代表的なものとして、
が挙げられます。これらは、現時点では適用条件がかなり限定されているため、適用除外となることが多いです。その場合でも、活用に向けた比較検討を行っておくことがポイントです。
全国的にみても、まだ低コスト手法の採用実績は少なく、普及促進のためには実績の積み重ねが重要になってきます。そのためには、設計業務を担当するコンサルタント技術者が各路線で低コスト化の検討を行い、電線管理者に対し意識付けを行うことが必要であり、行政担当者は低コスト手法導入に向けた電線管理者との合意形成に努めていく必要があると思います。
もし、適用条件を満たす場合は、その工法の採用に向けて取り組むべきでしょう。最初の内は部分的な適用でも構わないと思います。低コスト手法と呼ばれる工法を少しずつ取り込んでいくことで実績が積み上がり、標準化されていくものと考えます。業務を適正な方向に導くことがコンサルタント技術者の責務であり、発注者からの評価にも繋がると思います。
電線共同溝事業において、最も厄介とされているのが電線管理者との調整だと思います。マニュアルや他事例に合わせて設計しようとしても、電線管理者の合意が得られなければ思うように進まないことがあると思います。設計者は、電線管理者との調整をまめに行い、計画案が出た時点で早期に調整を図ることがポイントです。
内容によっては、電線管理者側も社内審議に諮る必要がありますので、答えを出すのに時間がかかることもあると思います。設計を固めてから調整するのではなく、案の段階で早期に意見照会を行うことが大切です。
地上機器の配置は、電線共同溝設計において最もネックとなる部分です。配置場所は、電力会社が候補地を探しますが、土地所有者との協議には行政担当者の同行も求められます。地上機器の配置が決まらなければ設計は前に進みませんので、発注者側は設計業者が確定する前であっても、積極的に電力会社と調整し、地上機器配置の検討を進めるべきだと思います。
また配線計画図などは、地上機器の配置が確定しないと完成出来ません。配線計画は、設計業務の初期段階で必要になるものですので、地上機器の配置検討は早期に進めておくことが大切です。
電線共同溝設計のポイントは、電線管理者との調整を早期に行うことや、低コスト工法を取り入れるための検討を行うことと考えます。これは、コンサルタント技術者だけの課題ではなく、行政担当者の責務とも言えると思います。
電線管理者との調整が思うように進まないといわれるなか、新工法の採用は更なる困難かも知れません。しかし、電線管理者側も事業を効率的に進めることや低コスト化の意識は持っているものです。行政担当者や設計コンサルタントが、早めの行動を取ることで、解決される問題も多いのではないでしょうか。
無電柱化は、防災と景観向上を同時に実現する事業で、社会から求められる事業です。上述の課題を克服することで事業が促進されることと思います。そのためにはコンサルタント技術者や現場技術者、行政担当者、電線管理者が協力し合うことが大切と考えます。
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