建設コンサルタントに必要な要素

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今回は、入社9年目となり、社内でも新人から中堅の立場となった私が、建設コンサルタントとして一番必要だと考える要素について記述しました。

あくまで私個人の考えを記載しただけですので、そんな意見もあるんだなという程度に読んでいただければ幸いです。


建設コンサルタントとは


  建設コンサルタントの業務


我々建設コンサルタントの業務というのは、発注者(主に地方自治体など)から設計委託として業務を発注してもらい、設計を行う仕事です。世間一般では設計士と認識されている方も多いと思います。

しかし、実際は受注量が多いため、業務では自分で手を動かすことは少なく、協力会社に作業を外注します。協力会社へ指示しながら作業を監修した上で、上がってきた成果を基に発注者と打ち合わせを行い、最後に成果品として設計成果を収めることが実状です(少なくとも私の会社をはじめとした水コンと呼ばれる上下水道コンサルタントは、どこの会社様もそのようなやり方だと思っています)。


 時代の流れと仕事のやり方の変化

中には全て自分で手を動かして設計を完遂する人もいなくはないですが、今はオーバーワークに対する監視が厳しく、残業が減少傾向にある中で、仕事量が永遠に減ることはありません。社員皆、膨大な業務量を抱えている中、そんなことができている人は、主に一握のスペシャリスト的な人で、業務量もそこまで与えられていないケースが多いと思います。昔、残業代が青天井だった時代には、時間も無限にあったらしく(今では考えられませんが…)、私の上司(60歳手前)も、自分で計算して図面を手書きし、積算まで完遂していたこともあったようです。会社として一定の品質は確保した上での話ですが、やはり売り上げ最重視の傾向にあり、業務を如何に効率良く数多くこなしていくかという観点での要求しかありません。私の上司が新入社員の時代は、どちらかというと品質重視だったようです(当時はバブルもあり、設計の金額が今よりも数倍高かったことも大きいです)。


建設コンサルタントは技術業orサービス業?



建設コンサルタントで仕事を行う上で必要な要素としては、前述したように、大きく2パターンに区別されると私は考えています。一つは時代に逆行するかもしれませんが、スペシャリスト的な方向を目指す前提で、品質重視の技術者として、自分の知識・技術向上にこだわって高めていくことです。

もう一つは今の主流である、効率化を求める方向で、マネジメント力や顧客とのコミュニケーション力を高めていくことです。

前者は技術職、後者はサービス業に区別されると思います。建設コンサルタントとしてどちら側を目指すべきか、その人の特性にもよりますが、私の会社内でも未だに意見が別れる話です。


 出世したいならコミュニケーションを重視すべき

私の意見ですが、建設コンサルタントとして上を目指したいというのであれば、コミュニケーション力を高めることが一番の近道だと思います。建設コンサルタントは打ち合わせだけでなく、日常業務においてメールのやり取りや電話対応が多くを占めています。今は多くの顧客が、設計の成果品の質よりも、どちらかというと業務での対応力(レスポンスの速さや質問対応の丁寧さなど)を求めている傾向にあります。一つの業務が完了するまで、根気強く最後まで丁寧な対応を継続することができれば顧客の評価や継続業務を受注できるといったことに繋がり、結果、社内での評価を得ることができるのではないかと思います。


 技術力はなかなか伝わりにくい

コミュニケーション力やマネジメント力だけを高めたとしても、知識や技術力がなければ説得力はありません。必要最低限の技術力はコンサルタントして必須です。勉強を疎かにしてはいけません。深い知識や高い技術力を取得できたとして、それを成果品に反映したとしても、なかなか見た目にはっきりと現れることは少なく、相手のレベルによっては、説明しても理解してもらえないこともあります。私はある程度同じ業界で経験があるため、資料などを見て「深い知識が詰まっているな」とか、「シンプルな資料でも技術力が凝縮されているな」などと感じた際に尊敬の念を抱きます。特に我々が相手にする自治体は異動が多いこともあり、経験の浅い方が多く、業務内容を如何に分かりやすく伝えるかの方が大事になるケースが多々あります。

だから私は、顧客が何を求めているかを汲み取る力や、どうしたら設計の思想が相手に伝わりやすいかを考える時間を多く作り、それを言語化するという能力を鍛えた方が、成果につながりやすいと考えます。


おわりに


  コミュニケーション重視のスタンスが報われた


技術力を疎かにするのは絶対に違います。技術力は土台であり、建設コンサルタントには必須です。技術力に重きを置いてコミュニケーションを疎かにすると、相手に伝わらず、せっかく磨いた技術が評価されないというケースが多く見受けられました。理想はやはり50:50のバランス型なのではないでしょうか。しかし、そのようなスーパーな建設コンサルタントはそうそういません。普通に仕事をしていく中で技術を磨きながら、少しコミュニケーションを意識して仕事をするくらいがちょうどいいのではないかと私は思います。


 昇格がすべてではないけれど…

このテーマについて記述するきっかけとなった出来事がありました。私は9年目にして初めて顧客から表彰されたことにより、管理職に推薦して頂きました(社内では初の功績だったようです)。自慢のように聞こえてしまい恐縮ですが、実現すれば比較的早い段階の昇格になります。今までの自分を振り返ると、私はコツコツ勉強することが苦手で、コミュニケーションにやや重きを置いて仕事をしてきたことが管理職の推薦につながったのだと思っています。

昇給など全く興味ない、人とコミュニケーションは苦手という人も多いと思います。私も上昇志向はそこまでありませんし、上司を見ていてうらやましいと思ったことはあまりありません。

ただ、結局仕事は経験に応じて増えていくことは間違いなく、それならずっと同じことを続けるよりも、責任は生じますが、管理職になり権限やお金をもらえた方いいなと慢性的に思いつつ、こういう生き方を選んだ感じです。お祝いされたり、小遣いが上がったり、些細なことですが人生がいい方向には進んでいると実感しています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事のライター
上下水道コンサルタント会社で入社9年になる33歳です。現在は主に下水道施設(処理場やポンプ場など)の土木設計を担当しています。
趣味はサッカーで、見ることも自分でやることも大好きで、Jリーグや海外サッカーなどをよく見ます。最近はコロナの影響もありご無沙汰していますが、会社メンバーでフットサルをして楽しんでいます。プライベートでは3人の子供がおりワイワイにぎやかに毎日楽しく過ごしています。よろしくお願いいたします。
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