協力会社へ仕事を発注する時、どのような注意事項があるのでしょうか?
本業界の業務発注・受注の仕組みを正しく理解して、法令上遵守しなければならない事項に加えて、留意すべきポイント等を詳しく解説しています。これから、業務発注を考えている人や建設業の請負の仕組みを正しく理解したい人にとって有益な内容になっています。
建設業界は、作業効率化や業務量分散のために受注案件を全て自社で担当せず下請け業者に業務依頼をすることで成り立っています。それは、公共事業案件の多くが単年度工事であり、年次予算により案件規模が決められるため通例3~4月の年度末に工期が設定されるケースが多いことが大きな理由です。
業務量が平準化されていないため自社だけで業務をコントロールすることは企業経営のリスクを上げることに繋がります。加えて、実績の少ない企業が案件を受注するためには大手ゼネコンや大手建設コンサルタントから仕事をもらう必要があることも大きな理由です。
建設業界の発注・受注構造は、「多重下請け構造」と称され、発注者から直接案件を受注する大手建設コンサルタントを”元請け”と呼びます。元請けは、業務効率化のために工種や工区などの担当業務を細分化して”下請け”に業務を発注します。下請け企業は、受注工種を更に細分化して”孫請け”に業務を発注します。このような元請けを頂点にピラミッド型の多段階に仕事が発注される仕組みを「多重下請け構造」と呼びます。
特に注意が必要なポイントとして「一括下請け」を行わないことが重要です。下請け業者に受注した仕事を全て丸投げすることは建設業法22条(※1)で禁止されています。一括下請けの禁止は全ての工事に適用され、元請け業者から(一次)下請け業者、(一次)下請け業者から(二次)下請け業者(孫請け)、それ以下の下請けにも適用されます。
(※1)参考:建設業法 一括下請負の禁止について
一括下請けであるかの判断基準は、「元請け業者が実質的に主たる部分の施工に関与を行っているか否か」で判断されます。元請け業者が実質的に関与すべき項目は以下の5項目に分けられます。
具体的な作業を下請け業者に依頼することは問題ありませんが、管理・指導は元請けが介入していることが求められます。人員配置を行うだけや、上記5項目の一部を行うだけの場合、実質的な関与と認められません。元請けは施工全てに対して責任を負い、主体的にその役割を果たす必要があります。
下請け契約制限とは、建設業法15条、16条(※2)に規定されており、特定建設業の許可を受けていない建設業者は、下請契約における依頼金額に上限があることを認識する必要があります。制限を超過する条件は下記2項目です。
(※2)参考:建設業法 下請契約の締結の制限
①発注者から直接請負った建設工事であること
②下請けへ業務依頼する時、発注総額が4,000万円以上(建築一式では6,000万円)以上の下請け契約であること
建設業における許可区分には「一般建設業」と「特定建設業」があり、上記2条件を満たすときは「特定建設業」の許可が必要になります。また、この金額は税込であることに加えて、下請契約が複数となる場合には、全ての下請契約の総額で判断されることに留意が必要です。
つまり、①以外の建設工事であり、かつ②以下の金額で下請け契約を締結することが求められます。
上記の一括下請けと下請け契約制限は、必ず遵守すべき法令であり、ここでは追加で留意すべき知見を共有させていただきます。
①発注金額設定:元請けは、継続して作業依頼できるような金額で双方合意の元、下請け契約を結ぶことが重要になります。
②労働条件:契約前に労働条件を明確にして、契約後の追加作業はしないことが重要になります。(契約変更手続きを除く)
③作業要員の確保:依頼予定の作業に必要な要員を〆切(工期末)までに配置できることを確認した上で契約を結ぶことが重要になります。
建設業の発注・受注の仕組みを正しく理解できたでしょうか?建設業法上、請負契約を結ぶときに遵守すべき項目に加えて長期的に業務依頼できるようなポイントを補足しました。本記事を通して、建設業の受発注の仕組みを理解、下請け業者との長期的な発展を考える人が一人でも増えることを願っています。
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