道路橋に作用する荷重といえば、一般に自重等の死荷重と通行車両による活荷重がメインとなりますが、風荷重、温度変化の影響、地震の影響や雪荷重等のほか、コンクリート橋の場合には、クリープおよび乾燥収縮やプレストレス力なども無視できない荷重です。
その中でも雪荷重は、主荷重に相当する特殊荷重として位置付けられ、冬期の積雪地域においては設計上の重要な荷重ファクターとなっています。
これから冬を迎えるにあたり、この雪荷重の発生源である「積雪」と「道路橋」のあれこれについて触れてみたいと思います。
我が国における冬の積雪は、東北地方や北陸地方では最大積雪深が約6~7mにも達する反面で、沖縄や九州地方、さらに静岡県においては降雪量が0cmに等しく、積雪は地域限定のいわば特殊荷重であると言えます。
また、荷重レベルでいえば、仮に1mの積雪の場合は歩道の群集荷重(3.5KN/㎡)と同等であり、3mの積雪では主桁の設計活荷重(最大等分布荷重10KN/㎡)にほぼ匹敵することから、除雪計画の有無は道路橋の作用荷重に大きく影響することになります。
橋や高架の道路等に関する技術基準である道路橋示方書(平成29年)によると、橋上の積雪に対しては除雪することを原則とするものの、完全に除雪できない場合には、以下の2通りの雪荷重を考慮するものとされています。
「十分に圧縮された雪の上を自由に車両が通行する場合には、活荷重に加えて橋の全面に1KN/㎡を考慮する。」
すなわち、積雪時に車両が通行する場合には、橋面全域に約15㎝程度の圧雪荷重(1KN/㎡)をカウントします。
「積雪が特に多くて自動車交通が不能となる場合には、雪だけの荷重を考慮する。」
すなわち、除雪を行わず車両の通行が困難な場合には、架橋地点の積雪深さに見合った積雪荷重を載荷します。
SW=P・Zs
ここに、SW :雪荷重(KN/㎡)
P :雪の平均単位体積重量(KN/㎥)
Zs:架橋地点における再現期間10年に相当する最大積雪深(m)
また、一般に雪の単位体積重量は3.5KN/㎥としていますが、積雪深が多くなると雪の密度は大きくなる傾向があるため、単位体積重量の設定には注意が必要となります。
冬期積雪が見込まれる路線においては、橋梁構造(主に付属物)において以下のような設計上の配慮が必要になろうかと思います。
①除雪車の橋上通過を踏まえ、伸縮装置の背面には耐グレーダー用の誘導板(スノープラウ)を設置して、橋梁端部における除雪障害(グレーダーの衝突)を回避する。
②橋上に融雪剤や凍結防止剤を散布する場合、それらには塩化物が含まれることを踏まえ、桁端部のコンクリート(床版、パラペット)に対しては、局部的にコンクリート塗装を行ったり、塗装鉄筋を用いたりするなど、いわば一種の塩害対策を図る。
③排水装置に用いる排水管は、凍結による破損が生じないものとする。
④橋上に歩道がある場合、歩車道境界の防護柵は除雪時に支障となる可能性があるため、設置に当っては検討を要する。
今回は道路橋と積雪の関係性について、積雪荷重ならびに橋梁構造の積雪対応について思いつくままに書き並べてみました。
積雪地域の橋梁計画に際しては、架橋地における積雪状況ならびに除雪管理状況を十分に把握し、除雪計画がある場合には、構造細部に関してきめの細かい設計配慮を行うことで、より一層の長寿命化に寄与していきたいところです。
以上、私の拙い経験に基づいた意見を述べさせていただきました。雪が降らない地域にとってはあまり縁のない話題かもしれませんが、なにかと参考になれば光栄です。
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