橋梁補修設計業務に関する一考

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土木・建設分野においては「造る時代」から「管理する時代」にシフトされて久しい昨今ですが、当該分野で維持補修業務に携わる者の一人として、橋梁の補修設計、その中でも比較的補修頻度が高い橋梁付属物の補修設計について、経験を踏まえて私見を述べさせていただきたいと思います。


1.橋梁付属物の現状



橋梁付属物は、伸縮装置高欄・防護柵排水装置など橋梁本体に取り付く附帯構造(ここでは支承を除く)であり、各部とも過酷な条件下で機能しているため損傷や変状がしばしば生じ、いわば構造寿命が比較的短い部位と言えます。

また、付属物の補修に当たっては、一般に構造の信頼性が高く、耐久性、経済性に優れるメーカーの二次製品が主に用いられており、設計に当たっては、対象橋梁に最適な形式を選定した上で、橋梁本体との取り合いを十分に配慮することが重要なポイントとなります。


2.付属物補修設計の流れ



橋梁付属物の設計は、一般に以下の手順で行われていようかと思います。

 ①現況部材の損傷状況を確認把握し、補修の必要性について検討を行う。

 ②損傷度が高く、補修の必要性があると判断される場合には、対策方法(補修or取替)について検討を行う。

 ③部材の取替が必要と判断された場合には、適用可能な二次製品をピックアップする。

 ④製品メーカー(数社)に設計条件を提示し、適用製品の概要、適用上の留意点・問題点、製品コストおよび工事費についてヒアリングを行う。

 ⑤メーカー各社のヒアリング資料を参考にして、中立・公正な立場から付属物に関する形式比較表を作成する。

 ⑥採用型式について発注者側と打合せを行い、当該橋梁に最適な付属物を選定する。

 ⑦改めて製品の詳細資料を入手し、補修工事用の成果としてとりまとめる。


3.補修設計のポイント



橋梁付属物を代表して、伸縮装置、高欄・防護柵、排水装置について、補修設計における留意点について列挙してみたいと思います。

 3-1.伸縮装置

 ①型式の選定(ゴムor鋼製or埋設タイプ)は、架橋地の環境や橋梁構造を踏まえて適切な比較選定がなされているか?

 ②選定した形式(製品)は、対象橋梁の伸縮量を満足するか?

 ③装置内および地覆端部の排水処理は確実に施されているか?

 ④床版・主桁および下部工との取り合いに問題はないか?


 3-2.高欄・防護柵

 ①車両用防護柵の使用種別は、道路区分(設計速度)のほか、橋梁区分(跨線橋、跨道橋等)を踏まえて設定されているか?

 ②材質、表面処理の選定は、架橋地の環境条件に基づいてなされているか?

 ③地覆との取り合い、張出し床版への荷重影響は問題ないか?

 ④架橋地における一連の防護柵として設置を検討しているか?(橋台ウィングおよび堤防管理道路の転落防止、親柱との兼ね合いは十分か?)


 3-3.排水装置

 ①装置の設置位置、間隔は適切か?(現況位置に合わせて問題はないか?)

 ②流末処理を考えた排水構造となっているか?(現況構造に支障はないか?)

 ③橋面舗装下(防水層上)の排水処理が可能な構造となっているか?

 ④そもそも必要な排水構造なのか?(小橋梁等で排水面積が小さい場合には、装置の省略が有効となる場合もあるのでは?)


4.まとめ



橋梁の付属物に関しては、橋梁本体に取り付く二次製品というポジションからか、メーカー任せの設計になりがちなイメージを持たれていませんか?

これについては、(前述したとおりであり)まったくそんなことはありません。

設計サイドとしては、新技術・新工法の情報を常に入手し、対象橋梁に見合った最適な構造や形式について的確なアドバイスを行い、橋梁本体との取り合いを加味したきめの細かい設計を行うことで、より有効な橋梁のメンテナンスを目指したいところです。

以上、橋梁付属物の補修設計に関して、私の拙い経験に基づいた意見を述べさせていただきました。少しでも皆様の参考になれば光栄です。


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この記事のライター
ゼネコンを経由して、地方の建設コンサルタントに勤務して早や30余年。
途中、鉄鋼メーカーに出向した後、技術士(建設部門)を取得。
時代の流れにより、橋梁の新設から点検・維持補修分野にシフトして従事しつつ、自身の定期検診(?)も年1回は欠かさず現在に至る。
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