温度応力解析とは?コンクリートのひび割れ防止

  • LINE

前の記事   次の記事

連載第3回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「インフラ維持管理の未来に。点群データで構造物を3D化!データ共有の新時代」を掲載いたしました。

■前回の記事はこちら



温度応力解析の目的を教えてください




温度応力解析の目的はコンクリートの劣化原因であるひび割れを事前に抑制するためです。

コンクリートというのは、セメントや土、水、砂利など様々な材料を混ぜて固めていきますが、その過程で化学反応が起きると熱が発生します。この熱は60度や70度まで上がり、化学反応が収まったら外気温ぐらいまで冷めていきます。このように温度が上下すると、コンクリートが膨張したり収縮したりするということが起こり、ひび割れが発生してしまいます。ひび割れは構造物を劣化させる原因であると言われているので、事前にシミュレーション、解析を行い、ひび割れを予測します。

解析結果をもとに対策を提案し、元請企業様と相談しながら方向性を決め、報告書を提出します。


 

対象の構造物はどのようなものになりますか?


部材厚さが50cmを超えるような、下部工や上部工、重力式擁壁、逆T擁壁、樋門、函渠工などマスコンクリートと呼ばれるような大型の構造物が対象です。


 マスコンクリートとは

マスコンクリートとして扱うべき構造物の部材寸法は、構造形式、コンクリートの使用材料、配合および施工の諸条件によりそれぞれ異なるが、広がりのあるスラブについてはおおよそ厚さ80~100cm以上、下端が拘束された壁では厚さ50cm以上と考えてよい。

(公益社団法人土木学会発行 コンクリート標準示方書より引用)


温度応力解析のシミュレーションとは何でしょうか?


二次元のCAD図面を頂き、それをもとに専用ソフトで3Dモデルを作成します。

  1. 日程や施工条件を入れてどのように温度が変化していくのか?
  2. 温度変化によってどこにひび割れが入るのか?

という2つの照査を行います。


こちらの画像は高速道路の柱の断面図の解析結果になります。赤くなっている部分は非常にひび割れが入りやすい部分で、何か対策を取らなければいけないというところです。対策を取っておかないとひび割れが入ってボロボロになってしまいます。


解析結果からどのような対策を取るのでしょうか?


ひび割れ誘発目地や膨張材の使用、配合の変更、他にも選定頻度の高いものから最新のものまで様々あります。それぞれにメリットもあればデメリットもあるので、構造物や解析結果、現場状況に応じて選定します。


評価について


評価方法はひび割れ指数により行い、ひび割れ指数が大きければ発生する温度応力よりも引張強度が大きく、ひび割れが発生しにくいということになります。



国交省に向けた勉強会を行った経緯について


各整備局や事務所によって温度ひび割れ照査の解釈や考え方に違いがあるので、温度応力解析の解釈に国交省の方も困っているようでした。そこで受け取った報告書について理解を深めたいとのことで勉強会のご依頼を頂き、オンライン会議にて実施しました。

温度応力解析を行った場合、ゼネコンに報告書を提出し、その報告書が役所へ行くという流れになります。解釈が難しいため報告書について質問が来ることも珍しくありません。


勉強会はどのような内容で行いましたか?


勉強会では、ひび割れのメカニズムについて、温度応力解析の概要、温度ひび割れ対策、解析の事例をお話しました。特に温度ひび割れの対策工に関しては一般的なものから最新のものまでいろいろあるので、対策工によってどの程度効果があるのかを中心にご説明しました。また、それぞれの対策工にはメリットもあればデメリットもあるので、そのあたりは注意してお伝えしています。

事前に解析を行い可能な限りひび割れを抑制することで、作業工程の遵守や補修費用の最小化にも繋がります。是非一度ご相談いただきたいと思います。


  技術者へのご相談・お問合せはこちらまで


 業務案内ページ「DKnote」まで▶ https://service.dksiken.co.jp/

この記事のライター
サガシバ編集部です!
時期に応じた特集や製品に関する記事、イベントの案内や対談形式のインタビューなどを
掲載しています。お知らせやお得な情報も発信していきますので、ぜひ記事のチェック&
フォローをお願いします。
『サガシバ』に会員登録して、匠の野帳をもっと便利に!
会員登録すると、最新記事の情報が受け取れる他、便利な使い方がたくさん!

サガシバ編集部さんの匠の野帳をもっと見る

2023年01月27日 00:45 サガシバ編集部さん
1 0
建コンマッチングは、建設コンサルタント業務の協力業者を見つけられるマッチングサービスです。設計・測量・解析・点検といった建設コンサルタントに関連する業務の協力業者を簡単に探せるほか、案件ごとの受発注も...
1 0
2023年01月18日 00:50 サガシバ編集部さん
3 1
連載第7回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「特許技術!砂防ソイルセメント工法の土砂利用可否判定が微生物量で可能に!」を掲載いたしました。■前回の記事はこちらクレーン転倒防止の地耐力...
3 1
2022年12月21日 00:45 サガシバ編集部さん
1 1
連載第6回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「試験調査会社が開発した自動試料分取装置とは?」を掲載いたしました。■前回の記事はこちら砂防事業では、砂防工事の現場発生土砂を使用する砂防...
1 1
2022年12月07日 00:50 サガシバ編集部さん
1 0
今月から3ヶ月間、匠の野帳でWEB写真展「山崎エリナ×建設業の魅力」を開催します。これに先立ち、今回は写真家山崎エリナさんのプロフィールやWEB写真展の概要などをお伝えしたいと思います。山崎エリナさんプロフ...
1 0
2022年11月16日 00:45 サガシバ編集部さん
3 1
連載第5回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「堤防開削調査とは?」を掲載いたしました。■前回の記事はこちら「機械にやらせればいいじゃん!」と言われたのがキッカケ!人に代わり土質試験の...
3 1
2022年10月19日 00:50 サガシバ編集部さん
4 1
連載第4回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「温度応力解析とは?コンクリートのひび割れ防止」を掲載いたしました。■前回の記事はこちら河川堤防は治水に際して様々な改修がなされ、複雑な歴...
4 1
2022年08月24日 00:30 サガシバ編集部さん
5 2
連載第2回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「騒音振動測定をクラウド管理!DKの常時遠隔監視装置とは?」を掲載いたしました。■前回の記事はこちら今回ご紹介するのは、図面の無い既設構造物...
5 2
2022年07月27日 01:00 サガシバ編集部さん
4 3
連載第1回目は、株式会社土木管理総合試験所の「DK note」記事より「IoTでコンクリートのひび割れ幅を遠隔監視!既設構造物における実績紹介」を掲載いたしました。■前回の記事はこちら点検に行ったらデータが取れて...
4 3
2022年07月15日 02:44 サガシバ編集部さん
1 0
こんにちは。サガシバ編集部です。今回は弊社、株式会社ビーイングが5月下旬に発売したクラウド型工事情報総合マネジメントシステム『INSHARE』についてご紹介します。概要『INSHARE』は建設業の現場代理人及び本社...
1 0
2022年07月13日 00:30 サガシバ編集部さん
2 0
2022年7月より連載開始!株式会社土木管理総合試験所が運営されている「DK note」の記事をご紹介します。クラックスケールもって何度も現場に行くのは大変!コンクリートのひび割れを経過観察するとき、皆様はどんな...
2 0
2ページ / 4ページ中
会員登録(無料)