私は2015年にインフラ業界の大手企業に就職し、現在まで主に土木工事の発注業務に携わっています。私が働いている会社では、2~3年間、元請負人への出向制度があります。この制度を使って私はゼネコンへ出向し、請負者として施工管理に携わりました。また出向した先のゼネコンには、下請負人(作業員)から元請負人(ゼネコン)へ逆出向という形で働いている人もいました。
施工会社で働く際、キャリア形成に向けて取り組むべきこととして、“コミュニケーション能力の向上”や“資格取得”などが挙げられると思います。
私はこれらに加えて、出向経験で施工管理上の立場で工事に対する考え方の違いに気づき、“施工管理上の立場が異なる職種の経験”もキャリア形成の重要な要素の一つであることを実感しました。
建設業界における発注者と請負者は、共通で「品質」「価格」「工期」「安全面」に注力していますが、その優先順位は立場によって異なることが多いです。
例えば、発注者においては、品質を満たすものであれば、より安く、より早くできる施工会社と関係を結びたいと考えています。私が働いているインフラ業界では常時、公衆との接点があることから、発注者は特に、施工にあたって顧客となる第3者への影響について重要視しています。
一方、請負者は、施工のプロとして品質の良いものを造り上げることは勿論、作業の効率性を重視しています。請負者は利益をいかに出すことができるかで評価が分かれます。そのため、元請負人は発注者、下請負人は元請負人との契約の範囲内で、工事費を安価に抑え、利益を伸ばすための効率的な施工方法を考え、必要により新たな工法や技術を導入しています。また、現場の最前線で工事を行うため、請負者の施工時における安全性についても深く検討をしています。
私の場合、例えば、検測や写真管理などの工事における品質管理項目が多く「作業の効率性が落ちる」という声を請負者側から聞いた場面がありました。出向を経験した際、私自身も同様に、品質管理について「過剰でないか」と実感したことがありました。
そこで、契約の示方上、仕方ないで済ませるのでは無く、発注者が立会することにより管理項目の簡素化を図るなど、請負人からの声を、工事を進める上での課題認識として取り上げ、解決策を打ち出していきました。このように、施工上の課題や協議が発生した場合は、自己の主張を言い合うのではなく、相手の考えを把握したうえで最適な打開策を打ち出すことができます。また、実務を多角的に経験することで、必然的に専門知識が身に付くというメリットもあります。
実際、私の知人の多くが公務員で働いていますが、前職がゼネコンなど立場の異なる職種を経験している人ほど、業務に順応し着実にキャリアステップを踏んでいるという印象があります。
施工会社で働く際に、キャリア形成に向け取り組むべきことの一つとして、施工管理上の立場が異なる職種の経験について述べました。
私は発注者として、元請負人に出向をしましたが、そこでは、机上での設計通りいかない現場や厳しい施工環境を目の当たりにしました。これらを把握できたからこそ、今、多くの施工関係者と良好な関係を築くことができ、公的資格も順調に取得できていると感じています。
出向や転職でなくとも、立場の異なる職種の人たちは何を考えているのか、関心を持つだけでも、仕事の仕方や見え方は変わってくると考えます。
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