【失敗から学ぶ】700㎡の土間コンクリートに無数のクラックが入り再施工した事例

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私は、東北の巨大土木現場にて主に区画整理に伴う二次造成の施工管理に従事しています。盛土から始まり、地下埋設物、宅地造成、道路と生活インフラ全般を5年間整備してきました。

様々な工種の工事を行っていく中で、小さなミスから時には数百万円の追加費用を出す大きいミスなど、たくさん失敗をしました。工事を行っていく上で失敗はたくさんありますが、その失敗をどうリカバーするかは、施工管理者としての技量の見せ所でもあります。

とはいえ管理者であれば、誰しも再施工になるような重大な施工ミスは、工程の遅延だけではなく追加の補修費用も発生するので絶対避けたいものです。

この記事は恥ずかしながら実際に私が現場で失敗した経験談をご紹介します。


700㎡の土間コンクリートに無数のクラックが入った失敗談


震災復興現場では河川の整備が完全ではありません。整備が終わっていない状態で集中豪雨が発生すると、未整備の河川が決壊する可能性があります。こういった災害が発生しないよう、雨水を一時的に貯水する調整池の工事を実施しました。

今回ご紹介するのは、その調整池工事で、池底厚さ10cm、面積700㎡の土間コンクリートを打設した際の失敗談です。

 

施工時期は7月下旬で、気温は日平均30度を超える猛暑の状況下でした。面積700㎡の土間コンクリートなので、気象状況や人員的な問題を考慮して、半分の350㎡を2回に分けて打設する計画で日々施工を進めていました。

事前に施工業者とは、コンクリートを打設する際の「施工手順」「人員配置」「養生方法」「ポンプ車の打設計画」など、入念に打ち合わせをしていました。

施工当日の状況


当日は、ほぼ無風で手元の気温計では35度を超えていたので、職人さん達は作業する前から汗だくの状態でした。

また打設にあたり、コンクリートの受入試験を行いましたが、1台目はスランプが硬すぎて規格値オーバーにより返却。2台目からになったため、予定より1時間遅れての打設開始となりました。

そして人員です。予定人員が9人だったところ、急な自己都合により3人少ない6人となりました。人員は少なかったのですが打設作業は進み、午前中には予定の350㎡の打設が完了しました。しかし、猛暑の影響から思いのほかコンクリートの乾燥が早く、職人さんに仕上げを急ぐよう指示を出し、養生シートで覆って散水し、湿潤養生を施しました。そこから1週間養生期間を設けて、定期的に散水して湿潤養生を継続しました。

1週間後、養生シートをめくると不規則な方向に30箇所以上のクラックが生じていました。


クラックの幅は0.7mm~最大1.2mmで、全て補修対象の規格値オーバーのクラックです。これほど異常なクラックは見たことが無かったので、衝撃的で頭が真っ白になったのを覚えています。

打設した350㎡全体にクラックが生じていたので、発注者からの指示ですべて撤去再施工となり、数百万円の補修費用の損害に加えて、工程が2週間遅延するという、これまでない最悪の施工ミスの事例となりました。


クラックが入った原因とは



クラックが入った原因は、環境的要因と人的要因が重なったためだと考えられます。

環境的要因

外気温が35度と高温だったので、コンクリートが硬化する前に、表面が急速に乾燥収縮を引き起こしました。そのため、広い範囲に渡って無数のクラックが生じたと考えられます。

人的要因

打設開始の時間が遅くなったため、私も含めて現場全員の気が焦り、品質に対しての意識が薄れてしまっていました。そのため、急速なコンクリートの打ち込みによって締め固め不足となり、ブリーディングによるコンクリートの沈下で鉄筋上にクラックが生じたと考えられます。

コンクリートの表面の乾燥が想定以上に早く、散水を急がせたために、最後の仕上げの押さえが甘くなり、表面の強度が弱くなってしまいました。


コンクリートのクラック対策



再施工は、環境的要因と人的要因を踏まえて、以下のように対策を施しクラックを発生させること無く完了しました。

コンクリート配合の再検討

コンクリートの配合を24-18-25から24-12-25に変更してスランプを下げました。

乾燥収縮はコンクリートの水分が多いほど発生しやすいです。コンクリートの単位水量を減らすことで、セメント分と粗骨材が増えます。そうすると、骨材とセメント分が分離せず強く密着して、ヒビ割れが発生しにくくなります。

天候に考慮

猛暑の日はコンクリートの品質を確保するのが非常に難しく、作業する職人の体力もかなり消耗します。天候に合わせてプラントやポンプ車の予定を変更するのは難しいというのが本音ですが、打設日の天候や気温に対して予定を調整できるのであれば、クラックを発生させるリスクを避ける為にも検討する必要が十分あります。

作業手順、人員配置の再確認

初めに、品質に対する1人1人の意識を高めるため「スランプを下げることにより硬いコンクリートを打設すること」、「なぜ硬いコンクリートを打設するのか」を、作業に従事する全員に周知し認識してもらいます。

その上で作業手順の再確認として、350㎡の打設順序やバイブレータの挿入時間、養生方法など作業する全員に再周知しました。

欠員が出た際の補充人員の確保、負担が偏らないように1人1人の役割分担を確認して、適材適所で配置を決めます。


まとめ


以上、土間コンクリートにクラックが入って再施工になった実際の事例を紹介しました。

暑中コンクリートの打設は現場、材料、人など様々な所で不具合が発生しやすく、その不具合は大きく派生するので品質を確保するには管理が非常に難しいです。

とはいえ、暑中コンクリートに対しての認識、作業手順、適材適所の人員確保など、当たり前のことを馬鹿にせず、しっかり管理することで施工ミスは格段に減ると実感しています。

コンクリートの打設は常にクラックの問題が付きまとうので、同じような失敗をしないように、または同じ失敗をしてしまった際の参考になれば幸いです。

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この記事のライター
青森県出身です。現役の土木施工管理者として今年で6年目です。
現在は東北の震災復旧の現場に従事しており、
大規模な嵩上げ工事から様々な生活インフラの整備を行ってきました。
今年の3月に無事竣工したので、今年の4月からは世界的に有名な工場の造成現場に転勤になります。
まだまだ未熟者ながら、現役の若手土木管理者としてリアルな目線で執筆します。
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