【失敗から学ぶ】グラウンド造成工事における側溝布設順の失敗

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今回私がご紹介させていただくのは、私が発注者側の監督員として携わった事例です。野球グラウンドの造成工事の際、側溝布設順の間違いによって、流末処理に失敗し、追加工事が増えてしまったことがありました。


野球グラウンド造成工事の概要



この工事は、元々ごみの埋め立て処分場として利用され、埋め立て完了後に広場となっていた土地を野球の練習グラウンドにするというものでした。計画に合わせて、表面排水勾配の変更のための盛土や切土を行い、側溝の入れ替えや新設を行うことが主たる工事内容でした。

主な工事の内容としては以下の通りです。

  • 基盤整備工(掘削)約1200㎥
  • グラウンドコート舗装工 約9500㎡
  • 不陸整正工(敷き均し)約3500㎡
  • 側溝布設工(300×300 落蓋側溝、600×600~1100 自由勾配側溝など) 約420m

この工事は前述のとおり、1度盛土された土地に切り盛りや土壌改良を行い、野球グラウンドとして利用するように作り変えるものでした。現地には外周に300×300の蓋無しのU事溝が敷設されており、それらは排水量や、表面の計画高さの変更に伴い、一部は撤去再設置、一部はより大きな側溝へ入れ替えるといった工程がありました。また、クラブハウスなどの建築工事、防球ネット工事、その他電気工事や給排水工事などが同工区内に同時発注されており、工程調整が必要な工事でした。


法面の表土が流出してしまう事故が発生



複数の工事が入っていたことにより、初めの基盤づくりと最後の仕上げを行う土木工事に次第にしわ寄せが来るようになりました。全体としての工事費用の削減のために、土木工事で基盤面まで掘削を行った後、管工事が施工して埋め戻しを行い、最終舗装は全体的に土木工事が行うといった具合に進めていたからです。

そのように調整が行われながら施工が進んでおり、グラウンド内部の工事は順調でした。しかし工程調整が押したため、グラウンド外部では、側溝の布設より路盤の表面勾配の大まかな仕上げの方が早くなってしまった箇所がありました。

その区間は既設側溝を撤去し、高さを変えて再度側溝を据え直す箇所でしたが、工程が押していたため、その区間だけ側溝を一時撤去後、上流側から側溝を設置していました。表面勾配は流末側に向かってできていました。その結果、強めの雨が降った夜に、表面排水が側溝のまだ据わっていない区間へ集中し、側溝外の法面の表土が流出してしまう事故が起こりました。

事故が発生した翌日は、グラウンドの法下の駐車場へ流出した土の撤去や、法面の応急復旧作業に追われました。被害も小さな区間ではありましたが、土砂の撤去と植生土のうで流出区間を埋めるといった作業に3日ほどを費やしました。


原因は側溝を上流から施工したこと



本来、側溝の施工は流末から行っていくのが基本です。水は高いところから低いところにしか流れないため、流れ先から作っていきます。しかし、今回の現場では他工事との調整がうまくいかなかったために、通常とは逆の手順で施工を行い、かえって手間を増やす結果となりました。ほかで工程調整を行って、基本通りの手順で施工を進めていくべきでした。

私は、当時、発注者側の監督員であり、事故の起こった部分はいくつか流末があるうちの1番小さな箇所であり、1日で現場を進めていたため、そのような側溝布設の手順になっていたことは把握できておりませんでした。

あとで現場代理人の方と話したところ、班が1つ空いたため、ついでに施工を行ったが終わりきらず、中途半端な形になっていたとのことでした。

私自身、本工事においてのメインの部分ではなかったため、工程会議のときに輻輳していることに注意が向いていませんでした。他工事といっても同機関からの発注だったため、別の監督員と調整することが簡単だったこともあり、反省が残る結果となりました。


まとめ


今回ご紹介した失敗事例は、基本に忠実に施工していれば、防ぐことができた事例でした。しかしながら、現場で工期に追われたりするとどうしても手順を踏まずやってしまいがちなことは多々あります。

受発注者間で、密にコミュニケーションをとって、小さな相談からできる関係を作っていくことが重要だと感じました。

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この記事のライター
大学を卒業後、土木技術職公務員として勤務し、造成工事や道路工事等を経験。
己の技術力を磨くためもっと現場に出たいとの思いから現在は地元建設コンサルタントへ転職し日々勉強中。
自己研鑽も兼ねて発注者、受注者としての両方の経験を踏まえて執筆できればと思います。
アラサー1児の父。趣味はスポーツ、食べ歩き。
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